表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
渇夢を星夜に  作者: つなまぐろ
夢の死骸
29/47

航路

 そんな心を示すかのように僕は口を閉じてしまっていた。

 そんな僕に奏さんは優しく言葉を紡ぐ。 

「そうだな。君の一番の敵は、君自身だ。夢を殺すのも、夢を生かすのも、自分だけだよ」


 「でも……僕は、あの頃の自分に恥じないように生きたいです。怖いけど、絶対に逃げたくないんです」


 夜空を見上げると、無数の星が瞬いていた。

 その一つひとつが、まるで過去の自分が残した希望の粒のように思えた。


 「少年、君の心にある『傷』は消えない。消す必要もない。それは、これまで戦ってきた証拠だからな」


 奏さんの言葉が、胸に優しく沈んでいく。

 気づけば、僕は泣きながら笑っていた。


 「僕……ずっと走り続けます。何度でも、怖くなっても、立ち止まっても、また星を見上げて……進みます」


 「それでいい。それが夢を生きるということだ」


 冬の星座たちが、一層強く瞬いていた。

 その光は、僕の中の消えない傷を、確かに温めてくれている気がした。


 (夢は、怖くて、痛くて、それでも優しい。僕は、それを抱えて生きる――)


 深呼吸をして、夜空を見上げる。

 小さな星の光が、遠い未来のように揺れていた。


 (これからも、僕は星と一緒に、生きていく)


 公園の静寂の中、夜風が優しく吹き抜けた。

 僕は、再び歩き始める決意を胸に、星を見つめ続けた。



「少年、未来は船出だ。進むか止まるか、それを決めるのは君自身だ。だが、一つ約束しよう」

 「……約束?」

 「これから何があっても、私は君の夢を笑わない。君が立ち止まったとき、また星を見においで」

 その言葉に、涙が込み上げる。


 

 「……はい。必ず、見に来ます」

 奏さんが差し出した手を、僕はしっかりと握りしめた。


 夜空に広がる無数の星たちが、まるで未来への小さな灯台のように瞬いていた。

 その光は、誰かが決めた道ではなく、僕自身が選んだ新しい航路を示している気がした。


 (怖いけど、大丈夫だ。これから何度でも立ち上がれる)

 胸に、そう強く刻む。


 未来への船出は、今、ここから始まる。

 静かな夜空の下で、小さな一歩を踏み出した僕の中に、確かな光が生まれていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ