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渇夢を星夜に  作者: つなまぐろ
夢の死骸
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話し合いは……

 その瞬間、父の視線が僕に突き刺さった。

 無言のまま、ずっと見つめられる。

 怖かった。でも、逃げなかった。


 「……お前は、弱い奴だと思ってた」


 父の声はかすれていた。

 「夢にすがるだけの、現実から目を逸らす弱い奴だと、そう思ってた。……でも、違ったんだな」


 父の目が、わずかに潤んで見えた。

 大きな手で額を覆い、震える声で続ける。


 「夢を選ぶのは……強い人間だ。現実を見据えた上で、それでも進む奴だけが、夢を掴める」


 僕は息を飲んだ。

 父の声が、重くて、痛くて、でも優しかった。


 「お前が……そういう男になってくれて、よかった」


 震える声に、思わず涙が溢れた。

 父も、ゆっくりと目元を拭う。


 「……ありがとう、父さん」


 言葉が詰まり、嗚咽が混じる。

 そのまま、父と向き合って座り続けた。


 長い沈黙のあと、父はふっと笑った。


 「俺にはよくわからない世界だが……お前の信じる星を見つけろ。誰よりも高いところにある星をな」


 「……うん」


 それは、短いけれど、確かに届いた。

 父と初めて同じ高さで言葉を交わせた気がした。


 夜、再び公園へ足を運んだ。

 この冬の冷たい空気さえも、今は心地よく感じる。


 公園には、すでに奏さんの姿があった。

 僕を見ると、にやりと笑う。


 「お、なんだか今日はいい顔してるじゃないか、少年!」


 「……父さんと話しました。ちゃんと、気持ちを伝えられた」


 「ほう、それはすごいじゃないか!」


 奏さんは望遠鏡を覗きながら、さらに言った。


 「大人ってのは、簡単そうに見えて一番不器用だ。言葉を飲み込み、顔を作り、守るものを背負って生きる。だからこそ、子供が夢を叫ぶと、あいつらの胸に刺さるんだよ」


 僕は微笑んだ。

 そして、星空を見上げた。


 (これが、僕の選んだ空)


 冬の星座たちは、何千年も昔から変わらずそこにある。

 ただ静かに、でも確かに輝き続ける。


 「これからも、きっと迷います。泣くかもしれない。逃げたくなるかもしれない」


 「いいじゃないか。それでも、またここへ来て星を見ればいい。私がいるし、星もいる。君は一人じゃない」


 夜風が吹き抜ける。

 奏さんの笑顔は、夜空よりも温かかった。


 「……ありがとうございます。奏さん」


 「礼なんていらないさ。君が進む限り、私も一緒にいる」


 大きな空の下、心の奥が静かに震えた。

 その震えは、恐怖ではなく、未来への高鳴りだった。


 (これからも、僕は星を見続ける。誰よりも遠く、誰よりも高い場所へ――)


 夜空の星たちは、静かに瞬きながら、僕の誓いを見守っていた。



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― 新着の感想 ―
俺にはよくわからない世界だが……お前の信じる星を見つけろ。誰よりも高いところにある星をな」 お父さん素敵すぎます。 ブクマさせていただいてます!
一気に最新話まで読み進めました 父親の「お前が……そういう男になってくれて、よかった」 この一言がすごく刺さりました…… そして、自ら夢を追うと決めた主人公を心から応援したい! ブクマも☆も入れさせ…
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