表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
渇夢を星夜に  作者: つなまぐろ
夢の死骸
16/47

行き先

 星を見終わり、望遠鏡から目を離してしばらくすると、奏さんがゆっくりと立ち上がる。

 「少年、私にはもう一つ夢があるんだ」

 「……夢?」

 「宇宙に、自分の研究した機材を乗せること。それが叶えば、私は自分の存在を空に刻める」

 そう言って、夜空を指さす。

 「いつか、この手で新しい星を見つける。そして、その光を誰かに届ける。それが、私の未来の欠片だ」


 彼女の言葉に、胸の奥の小さな灯火が少しだけ大きくなるのを感じた。

 (……僕にも、そんな未来があるんだろうか)

 「少年、君には君の未来がある。私のように無謀でもいい、ちっぽけでもいい。でも、その未来を、君自身の手で選んでほしい」

 奏さんは、夜空に浮かぶ星をじっと見つめた。


 僕も同じ方向を見上げる。

 小さな光が、冷たい夜空に散りばめられていた。

 (僕も、いつか……)

 胸の奥で、微かな声がまた生まれた。

 (まだ怖い。でも、それでも――)


 奏さんが、そっと僕の肩に手を置いた。

 その手はあたたかく、そして少し震えていた。

 「約束しよう、少年。君がもう一度夢を見たいと思ったとき、私は必ずそばにいる。必ずだ」

 「……はい」

 声は小さかったが、その一言に込めた想いは、今までで一番大きかった。


 夜空の星たちは、静かに瞬いている。

 遠いようで、少しだけ近い。

 その光が、未来の欠片のように見えた。

 でも、もう怖くはなかった。


 夜が更け、星の数が増えるにつれて、僕の中の迷いも少しずつ澄んでいく気がした。


 「ありがとう、奏さん」

 「礼なんていらないさ。君自身が、自分で進んだだけだよ」


 公園を後にするとき、足取りは少し軽くなっていた。

 空を見上げると、オリオン座がまだそこにあった。


 (これから、きっと何度も立ち止まるだろう。でも、今度はそのたびに、また星を見上げればいい)

 家の灯りが見えたとき、心の中で小さく呟いた。

 (もう一度、あの頃の自分に会える気がする――)





第三章終了です!

ここらへんで評価していない人がいたら、評価お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ