第9話 みなほのボトル
ほなみは2往復目を走りますが、時間的に暑くなる時間なので
鹿野谷さんがちゃんと水分補給をしているか心配になります。
わたしは再び走りだすけど、太陽が一番高い位置にあり日差しは1往復目よりかなりきつい。
正直、この時間は休んだ方がいいと思うけど、鹿野谷さんもまだ走ってるからわたしも走る。
何時もの1㎞7分のペースだと、11kmは77分以上かかるから多分、今頃折り返し地点に着いた頃かな。
ただ、気になるのは鹿野谷さんは水分補給をしっかりしてるかということ。
片道11㎞、往復22㎞を走り、秋とは思えない気温の高さだから水分を補給しないと危ないんじゃないかな。
でも、常に走っている鹿野谷さんだから、ちゃんと準備してるかな。
わたしは少し心配になるけど、人の心配もいいけど自分の事も考える。
1往復22㎞を走ったけど、思ったよりは行ける感じ。
ペースは自転車としては遅いと思うけど、やはり部活で走っている効果はあるみたいで
わたし自身が考えるよりは、持久力と速度はあるみたい。
なのに、痩せないのは……やっぱり単に食べ過ぎなせいか。
部活だけなく、家と学園の往復もしてこれだからそれしかないよね……。
それに比べて、鹿野谷さんは痩せてていいな。
単に細いだけでなく、運動して痩せてるから健康的だしね。
わたしもある意味健康的だけど、身長を考えるともう少し痩せたい。
クラスの子に胸が大きくていいなとは言われるけど、その分横もあるからね。
わたしの理想としては、もっと引き締まって胸が大きい事。
そのために、がばって走る事にしたんだから!
わたしは少しペースを上げてみるけど、思ったより進みがいい。
風があるけど強くないのでむしろ心地がいい。
速度は大体20㎞/hと1往復目よりもハイペースとなっている。
なれない速度だから足も段々と重くなってきてるが、鹿野谷さんに会いたい思いもあり
頑張ってペダルを漕ぐけど……思ったより早く息も上がって来て、このペースを保つのもきついくなった。
「はぁ……はぁ……このペースだと速すぎるか……」
息も上がって来たので、いったん自転車を止める。
距離は5㎞と半分ほどまで来ているが、そろそろ鹿野谷さんが折り返してきてもいい頃かな。
わたしは水分補給をしながら少し止まっているけど、お昼の時間帯と言う事もあって
人の姿は全くなくなったけど鹿野谷さんの姿もない。
障害物が全くなく、遠くまで見渡せる堤防道路なので遠くからも人の姿はなんとなく判別できる。
でも、人の姿はまったくみえない。
ただ、遠くから見えると言っても流石に数㎞も先まではわからないか。
なので、わたしは再び自転車を走り出したが……数分経っても鹿野谷さんの姿が見えないので不安になった。
(もしかして、熱中症とかになってるとか!?)
鹿野谷さんの姿が見えないので万が一な事を思ったが、折り返し地点の松の木陰で休んでるかもしれない。
いくら常に走っている鹿野谷さんでも、ある程度は休憩するはず。
折り返して点は事前に決めてた場所だから、そこにいるはず。
なので、わたしはペースを上げて折り返し地点に向かったけど……わたしの前から人影が近づいてくるのが見えたけど
その人が影は鹿野谷さんだったので、わたしは安心したのだった。
(良かった、何事もなくて)
わたしは安心して、自転車を止めたて鹿野谷さんを待つ。
すると、鹿野谷さんもわたしに気付いたのか、速度を上げて近づいて来たけど鹿野谷さんも何か嬉し気だった。
「鹿野谷さん、調子はどう?」
声が聞こえるぐらいまで近づいたので、ちょっと大きな声で鹿野谷さんに話かけたけど
鹿野谷さんが大きな声を出す事はないから返事はもちろんない。
ただ、わたしの近くまで見ると、鹿野谷さんは走るのやめて歩き出して
「暑いけど、大丈夫。下月さんこそ休んでてていいの?」
とさっきの答えを言うとわたしの横で足を止めたけど、わたしはそれが意外に思った。
だって、あの鹿野谷さんがわたしと話すために止まったからね。
でも、折角止まってくれからたら、わたしも鹿野谷さんと話をする。
「ペースを上げたけど持たなくて一度止まったけど、大丈夫。鹿野谷さんは水分補給はしてる?」
「もちろんしてる」
鹿野谷さんは腰につけているランニング用のボトルを指さす。
「なら良かったけど。でも、足りる?」
「残りは少ない」
鹿野谷さんはボトルを手に取り振るけど、音はほとんどしない。
「ほとんどないよ?」
「想定より暑く多く飲んだから、仕方がない」
「仕方がないけど、予備はある?」
「スタート地点に戻れば予備はある」
「ならいいかな。でも、それじゃ足りないから、わたしのを分けてあげるよ」
わたしはそういって自転車につけているボトルを手に取ると、鹿野谷さんはそのボトルを手に取る。
そして、そのまま口にした。
「あ、あの、鹿野谷さん!?」
わたしは思わず声が上ずったが、飲みかけの物でなくバックパックに入っている予備を渡すつもりだった。
ボトルを手に取ったのは自分で飲むためだったけど、紛らわしかったか。
「どしたの?何か問題があった?」
「問題と言うか……わたしの飲みかけだったから……」
「それが問題?」
「問題って言うか……鹿野谷さんはわたしの飲みかけでも平気なの?」
「……下月さんのなら大丈夫。下津さんは……私飲んだのは嫌?」
鹿野谷さんはそう言って頬を染めているけど……この反応はなに!?
もしかして、間接キスを意識してるか?
いや、鹿野谷さんがそんな事……考えないよね?
そんな事考えるタイプじゃないと思うし。
そして、わたしも鹿野谷さんなら……別にいいというか……むしろいいというか……
ってわたしも何を考えてるんだ。
でも、嫌でないかな。
「もちろん、嫌じゃないよ」
「……よかった。水分補給もできたから、私はいく」
そういって、鹿野谷さんは走り出したけど、鹿野谷さんの頬は赤く染まっていた。
お読みいただきありがとうございます。
鹿野谷さんは間接キスを意識しなそうなタイプだと思いますが
ほなみより鹿野谷さんが間接キスを意識しています。
鹿野谷さんも性格的にデレても表に出さないので、ほなみは逆に戸惑っています。
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@shiizu17