第19話みなほのケガ その1
みなほは部活で桜琳と一緒に走るが、教室でのことが気になってしまう。
桜琳はとくに何も言わないが、あれこれ考えて上の空になり、段差で転んでしまう。
放課後、わたしと桜琳はいつも同じように部活で走っている。
桜琳は朝、わたしがクラスの皆に囲まれたことを、特に聞いては来なかったけど
桜琳って嫉妬とかするのかな?
クラスでは、桜琳だけでなく、仲のいい子がいてその子たちとも話をする。
いや、桜琳よりもその子たちの方が良く話してる。
時々、桜琳も混ざりなよと誘ってはみるが、はにかむだけで
「私は……みなほが楽しんでるのを……見るだけでいいから……」
と言って、他の子と話すことはない。
(桜琳のことだから、わたし以外と話したくないだけかな……)
わたしはこう思い、無理に混ざらなくてもいいかなと思っている。
でも、わたしとしては、桜琳がわたし以外の子とも仲良くなって欲しいと思っている。
だから、今日も誘ったけど、やっぱり同じ答えだった。
「下月さん、鹿野谷さんをほっといていいの?」
今日は3人の子がわたしの席を囲っているけど、1人の子がこう言った。
「誘っても、今みたいな答えだからね」
とわたしは苦笑いをして答える。
「そうじゃなくて、わたしたちよりも彼女なんだから、鹿野谷さんの所に行ってあげなよ」
ともう1人の子がこう言ってからかう。
「だから、わたしたちは……」
以前なら、付き合ってないとはっきり言えたけど、今は言えない。
桜琳からの告白を、わたしは今保留しているから。
「もう、告白したんでしょ。わたしたちよりも、鹿野谷さんの方に行ってあげなよ」
と3人目の子もこう言ってからかう。
「でも、桜琳と話すことってあまりないから……」
桜琳とは部活のことと、わたしがまだ痩せる事が出来ない愚痴を言うぐらい。
桜琳もわたしも、流行はあまり知らないし、SNSのバズった話は一応見てはいる。
かと言って、それを話題にするほどじゃない。
それに、桜琳は元々話すタイプではないし。
「話さなくても通じるんだ」
1人の子がこう言って茶化す。
「考えてみたら、部活で一緒に走ってるから、お互いの考えがわかってるのかな」
「もう、付き合っちゃえよ」
「てか、付き合ってるでしょ」
3人はこう言って茶化して笑い合うけど、わたしは苦笑いをして困っている。
(やっぱり、わたしと桜琳は付き合っているという認識なんだ……)
周りはわたしと桜琳は恋人同士という認識で、このまま付き合わない訳にはいかないと痛感した。
そして、部活の前に、教室でのことを再び桜琳に聞いたけど
『私は……口下手だから……みなほは話せる子たちと……楽しんだ方がいい……』
とやはり同じことを言ってるけど、桜琳だって本当はわたしと話したいと思う。
だって、わたしがクラスの子たちと話している時、ちらっと桜琳を見ると
なんか羨ましそうな表情をしてるから。
(でも、桜琳はみんなと話題が合わないかな……)
わたしもそこまで話題が合う訳ではないけど、それでも共通の話題はある。
しかし、桜琳はみんなと共通の話題があるかどうか以前に、どんな話題があるのかわからない。
(そういえば、わたしと桜琳ってどんな会話をしてたっけ……)
わたしは桜琳と話すようになったけど、どんな会話をしていたかわからなくなった。
部活の時は部活の話だし、わたしのダイエットが上手くいかない愚痴。
他にはわたしが一方的に、親にしかられたとか、こんなことがあったと一方的に話していると気づく。
(考えたら、部活のこと以外はわたしがしゃべっているだけかも……)
桜琳は元々しゃべらないから、どうしてもわたし1人が話すだけになる。
あと、わたしと桜琳が付き合うかどうかだけど……。
わたしは桜琳と付き合うことを考えた瞬間、道路にある凸凹でタイヤが跳ねる。
そして、わたしはそのままバランスを崩すと、身体に衝撃が走り、同時に自転車の金属が
地面にたたきつけられる音がしたのだった。
(ああ……やっちゃった……)
わたしは桜琳の事を考えて、上の空になっていて、普段はなんてことない凸凹で転んでしまった。
(いたたた……自転車が足にぶつかってる……)
ペダルにはペダルストラップをしてるから、転んでも足が抜けなくて、そのままペダルに固定されている。
そして、足に痛みが走るけど、学園の指導でロングパンツを穿いてるけど、擦り傷になってるかも。
(多分、大したことはないと思うけど……)
痛みがあるけど、そこまで速度が出てないから、ちょっとした擦り傷程度だと思う。
ただ、血が出てるかもしれないから、早くペダルストラップを外して確かめないと。
わたしは身体を起こして、ペダルストラップを外そうとしたら
「みなほ!」
と言う声がして、桜琳がわたしに駆け寄ってきたけど、転んで数秒程度しか経ってなかったみたい。
「ははは、やっちゃった」
わたしは笑うけど
「足は大丈夫!動く?動くよね?」
と普段の桜琳から想像できない、大きな声を出す。
(桜琳がこんな声を出すなんて……)
わたしが驚くけど、ここまでの声を出す理由はわかっている。
「大丈夫だよ、ちょっとやっちゃっただけだよ」
と言うと
「万が一があるから!」
と言って、わたしの上にある自転車をどかそうとする。
「桜琳待って、ペダルに足が固定されてるから動かさないで」
と言うと
「早くはずさないと!」
と言って、ペダルに手を掛けるけど、やり方がわからないのかおろおろする。
「桜琳、落ち着いて、自分ではずせるから」
わたしはそっと身体を起こすと、自分でペダルストラップをはずす。
「こ、これで……動かせる?」
「うん、動かせるよ。でも、そっとね」
「わ、わかった……」
桜琳の口調がいつもの口調に戻ったけど、落ち着いたみたい。
そして、足の上にあった自転車を桜琳がどかしてくれた。
「下月さん、大丈夫!?」
桜琳が自転車をどかすと、別の陸上部の部員がわたしに気づく。
「大丈夫、ちょっと転んだだけ」
とわたしが言うと
「大きな声が聞こえたから、急いで来てみたけど、もしかして、さっきの大きな声は……鹿野谷さん!?」
とその部員は驚くけど、わたしも桜琳が大きな声を出して驚いたから、みんな驚くよね。
「みなほが……転んで驚いたから……」
桜琳はそう言って、恥ずかしそうにしてる。
それを見た陸上部員の子は
「彼女が転んだら驚くのは仕方ないよ。わたし、先生呼んで来るから」
と言って、その陸上部員の子は顧問の先生を呼びに行ってくれた。
お読みいただきありがとうございます。
ケガと言って、自転車で転んだ時によくあるケガです。
でも、桜琳は過去のことがあり、大袈裟じゃなく本気で慌てています。
しかし、ペダルがストラップで固定されていて、外すことが出来ず、むしろ桜琳の方が慌てています。
なので、転んだみなほの方が落ち着います。
そして、桜琳が大きな声を出したので、それに他の陸上部員が気づいて、陸上部顧問の先生を呼んできます。
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