第11話 鹿野谷さんはみなほなら大丈夫
みなほは鹿野谷さんと一緒に走るため、先に走り出した鹿野谷さんを追いかけ追いつきます。
そして、スタート地点に戻ると昼の休憩をします。
わたしは鹿野谷さんを追いかけるように、鹿野谷さんを追いかける。
普段はわたしがペーサーで鹿野谷さんを追うけど、今日はわたしが鹿野谷の後を追う。
鹿野谷さんとが走り去ってから、わたしが走り出すまでは数分だから1㎞も差はないはず。
速度差を考えると、5分もあれば追いつけるはずなので、わたしは多分今まで一番速い速度出す。
見通しの良い堤防道路なので、すぐに鹿野谷さんの後ろ姿うっすらと見えて来た。
そして、段々とその差は縮まり声が届く距離になった。
「鹿野谷さん!」
わたしが声を出すと、鹿野谷さんが振り向いて速度を落とすとわたしは鹿野谷さんの横で並走をする。
「どうしたの?」
鹿野谷さんは不思議そうな顔をしているが、わたしは気にせず
「鹿野谷さん、2往復目は一緒に走ろうよ!」
というと、鹿野谷さんの口元が緩んで
「うん」
と答えた。
「それじゃ……スタート地点に戻ったら、少し休んで一緒に走ろうね」
「うん……私も1人よりは、下月さんと走る方がいい……」
「わたしもだよ」
「……よかった」
鹿野谷さんはこう言うけど、鹿野谷さんもわたしと一緒に走る方がいいみたい。
それに……口元が上がって、なんか嬉しそうに感じる。
鹿野谷さんはあまり表情が変わないけど、最近はわたしと会うと表情が緩む事が多くなったけど
今日の約束をした時は少しだけど微笑んでいた。
鹿野谷さんが笑った所を見た事はないので、微笑んだ顔を見れただけでもうれしいかも。
そして、今も微笑みを浮かべてる……様に見えるかも。
わたしは鹿野谷さんといつものペースで走る。
鹿野谷さんに追い付くため、速度を出してから息が切れているけど、鹿野谷さんとのいつものペースなら
全く問題ないし、むしろこのペースの方が楽でいい。
「このペースは走りやすくていい」
「鹿野谷さんも?」
「下月さんも?」
鹿野谷さんは質問を質問で買えすけどわたしもだよと答えた。
「下月さんのペースを身体が覚えていて、これが一番走りやすいペース」
「そうなんだ」
「走りやすいが、大会に出るためにはもっと早くないと駄目」
「そうだけど、この前はペースを上げたらきつかったよね?」
「あれは急に速くしたから。だから、徐々に速くすればいい」
「確かに、そうだね」
いきなり30秒も早くしたら、きつくなるよね。
というか、何で気付かなかったかな。
「それじゃ、1㎞6分55秒から始める?」
「まずはそれでいい」
「わかった、次の部活からそうする」
「次の部活でなく、今日からでいい」
鹿野谷さんは今日からと言うけど、つまり次の1往復は1㎞6分55秒のペースで走るって事だよね?
「今日からって事は、次の1往復からって事?」
「そう」
「わたしは別にいいけど、2往復目だし大丈夫?」
「試すだけ試す」
「わかった、そうする」
鹿野谷さんがこう言うので、わたしもそのペースで走る事にする。
ただ、今は何時ものペースでスタート地点まで戻るけどかなり楽に感じる。
これはわたしだけでなく鹿野谷さんもらしく、わたしと同じペースであまり息が切れずに走っていた。
スタート地点に着くと、松の木陰で一休みをする。
時間的にお腹が空くけど、栄養バーしかない持って来てないからこれを食べる。
鹿野谷さんも何か食べるのかと思ったけど、水分だけ摂って何も食べていない。
「鹿野谷さん、食べなくても大丈夫?」
「スポーツドリンクを飲んでるから、今はいらない」
「でも、少しは栄養を補給したほうがいいともうけどな。栄養バーがあるから食べる?」
「下月さんがそういうなら、貰ってもいい」
鹿野谷さんがそう言うと、わたしが食べかけの栄養バーを取ろうとする。
「これはわたしの食べかけだよ」
「それをくれるのではないの?」
「わたしの食べかけだよ?」
「別に構わない。何か問題がある?」
鹿野谷さんはこう言うけど、問題と言うか未開封の物があるから、それを渡すよ。
でも、さっきのボトルといい、わたしが口をつけた物でも平気になのはちょっと意外。
鹿野谷さんって神経質そうだから、人が口にした物はダメだと思ってた。
「鹿野谷さんはわたしが口にした物は平気?」
「下月さんだから、平気……だった」
鹿野谷さんはこう答えるけど、実は人が口にした物はだめなの?
「鹿野谷さんは人が口にした物のはダメなの?」
「家族ならいいが、他人は駄目。でも......下月さん大丈夫……みたい」
鹿野谷さんはそう言って顔を横に向けたけど、その頬は赤く染まっていた。
休憩してもう数分経って息も整ってるから、これは走って来たからでないと思う
つまり……照れているというか、恥ずかしがっているみたい。
「つまり、それって家族と一緒って事かな?」
「私もわからない。でも、下月さんなら平気」
「そう言われるとちょっと嬉しいけど、ちゃんと未開封の栄養バーを食べてね」
わたしは未開封の栄養バーを鹿野谷さんに渡すけど、鹿野谷さんは何となく残念そう表情で
わたしが渡した栄誉バーを口にしたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
鹿野谷さんはみなほがあげるというので、言葉を素直に受け取りすぎて
みなほの食べ駆けを取ろうとしますが、鹿野谷さん自体は食べかけと言う事を気にしていません。
みなほが口をつけた物なら平気と言ってますし、鹿野谷さんの方がみなほの事を……ということですかね。
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