episode 06
書き方を少し変えてみました。(行間を空けるようにしてみました。)
前話については!改めて修正します。
手探りなので、まだスタイルとか出来ていなくて、読みづらいかもしれないですが、ごめんなさい!
少しでも面白いと思って貰えるようなものが書きたいです。
翌朝、明け方まで眠れなかった海が、少し寝坊をして目を覚ますと、先に起きていたカイと目が合いました。
海は寝ぼけたまま、目を何回も瞬いていると、カイの顔が近付いてきました。
寝ぼけていて頭の働いていない海は、そのまま受け入れてしまい、夢心地のままカイと繰り返し口づけを交わしていました。
すると居間と寝室の境目辺りからラルフの声が聞こえてきて、海は慌ててカイを押し退け、飛び起きました。
「お二人ともまだお休み中ですか?」
「「?!」」
「おや!主様、お食事中でしたか…。」
「お前…入ってくるときはノックをしろ!そして良いというまで入って来るな!」
海は慌ててワンピースを頭から被った。
「あぁ~もう私、昨日から何やってんだろう…。
相手は見た目、12、3歳だよ?!しかも赤ちゃんの時から私が育てたんじゃん!私、バカなの?!」
少しだけ落ち込みつつ、ブツブツ言いながら、裏口から出て、井戸で水を汲み、顔を洗った。
いつものルーティンで、鶏小屋へ卵を拾いに行き、畑で野菜を採り、羊を牧草のある囲いの中へ放し、小屋へ戻った。
カイは基本的には人間の食べ物を食べようとしないので、ラルフも食べないだろうと思いつつも念のため、確認した。
「ラルフさんは、何か食べます?」
「ん?!それは僕も海の胸を吸って良いということですか?!」
「ち!が!い!ま!す!!!何言ってるんですか!卵とかそういったものを食べるか聞いただけです!」
「何だ、残念…。」
「…聞いた私がバカでした!聞いた私が悪うございました!」
海は顔を赤くして言い返した後、独り言を呟いた。
「全く何なの?!どいつもこいつも!この世界の魔族は性欲で出来ているのかしら?!」
海は独り言のつもりだったのですが…ラルフは伊達に、高位魔族なわけではなく、どうやら聴力がかなり良いようで、しっかり返事を返してきた。
「いや、違いますよ…。
食べて良いのでしたら、魔力が強いものの血肉を食べればご馳走なのですが…。
貴方を食べると主様の逆鱗に触れるので、せめて魔力の籠った体液をというだけです。
だいたい魔族には性欲なんて大してありませんよ、下賤な人間じゃあるまいし!
よく考えてみてください。
ウェアウルフにしても、ヴァンパイアにしても、孤高の者が多いじゃないですか。
いや、ヴァンパイアは時々、ハーレムを作っている馬鹿者も居ますが、それでも独り身の者が多い。
余程じゃないと、番なんて必要ないし、作らないんですよ。」
「…私を食べるとご馳走…何か私、肉屋へ連行される動物の気持ちが分かった気がします…。」
「え?!それは食べて良いということですか?!」
「違うわっ!ラルフさんも何も食べないという事で、私の分だけ食事の用意をさせてもらいます!」
「何なら主様に内緒で少しだけ舐めさせて頂いても…ぎゃっ!」
《あ、ラルフさんが飛んでいった…。》
思わず海が見ていると、華麗に回し蹴りを決めたカイが立っていました。
「あれ?カイ、更に何か大きくなってない???」
「ん~何か、キスの方が魔力、強いみたい…。」
「…はぁ~。」
「何でため息付くんだよ…。」
「…。」
海は黙って家へ入っていった。
「お~い、無視すんなよ~。」
カイも後を付いてきた。
今朝はマッシュポテトとふわとろオムレツに、トマトジュースを絞った。
テーブルへ運んでいると、何故かカイが座ってそれらを見ていて、しかもフォークを取り上げ、勝手に突いて食べている?!
「ちょっと!それ、私の朝ご飯なんですけど!」
「この黄色いのは旨いな…俺にも作ってくれ!」
「あなた…人間の食べ物は食べないんじゃなかったの?!」
「何か旨そうに見えたから、味見したら、旨かったから、俺も食べる!」
仕方が無いので、もう一つ作って出すと、勝手に食べかけた先に作った方を海の方へ押しやり、新しく作ったのを自分の方へ引き寄せた。
「何で突然、食べようなんて思ったの…?」
「ん〜…おっぱいを飲んでいた時は別に腹は減らなかったんだよね…。
でもキスだけだと魔力はキスの方が圧倒的に入って来るんだけどさ、肉体的な腹は減るんだよね…。」
「…他に方法無いの?私から魔力を受け取る方法…。」
「あるけど…海は無理だと思うよ…お前、男の経験無いだろ?」
海がその意味を理解するまで、何秒かかったか…。
カイが海を真顔で見つめた。
海は瞬きし。
数秒固まり。
目を見開き。
そしてお湯に入れたエビかカニのように真っ赤になった…。
「なっ!なっ!…」
「な?無理だろ?それとも試すか?」
カイはニヤリと笑って言った。
「他に魔力を渡せる人は居ないの?!」
「魔族の女を当たれば良いんだけど…旨くないんだよね…しかも後が色々面倒くさいし…。」
「魔力枯渇で落ちていた魔王が、我儘言ってんじゃないわよ!
何が色々面倒くさいよ!あなたの方が余程面倒くさいわっ!」
海は叫んで肩で息をした。
「それはそうとカイ…さっきも言ったけど、一晩で随分、背が伸びていない???」
「あぁ~昨夜お前の唇を吸った時、感じたんだよなぁ~魔力が更に強いって。
だから成長が更に加速しているかも?!
まあでもそんな一日やそこらで、元の魔力量まで戻るわけじゃないから!そんな慌てるなって!」
前日はどう見ても12、3歳くらいだったカイが、一晩で15歳くらいに見えた。
《まあね…魔王だし…》
食事を終えた海は、皿を洗い、畑の草取りに裏庭へ出た。
しゃがみこんで、黙々と草を取っていると、人が通りかかる気配がし、名を呼ばれた。
「お~い!海ちゃん!」
「あ、お肉屋さんのアルフレッドさん!こんにちは!お出掛けですか?」
「先日、街でお祭りがあったんだけど、その時に日頃のお礼に皆にハムを配ったんだよ。
でも海ちゃん、街には滅多に来ないだろ?だから良かったらと思って持ってきた。
あまりもんで悪いけど、貰ってやってくれないかな?」
「良いんですか?!ありがとうございます!」
「あのさ…海ちゃん、髪の色を気にして、あんまり街へは来ないのかもしれないけどさ、そんなに気にしなくて良いと思うよ…。
最初は俺ら皆、驚いたけどさ、でも流石にもう海ちゃんが悪い奴じゃないって皆も分かっているよ…。
何なら俺、案内するからさ、今度、街を散策でもしない?」
「あ…ありがとうございます…でもまだ今はやっぱり人の目が怖いので…。
でも気にかけてくださって嬉しいです…。」
「そうか…ではまた誘うね!またね!」
そう言ってアルフレッドは去っていった。
その姿が見えなくなると、カイが物陰から出てきた。
「男に誘われて、随分、嬉しそうだったじゃないか?」
「?何言ってるの?単に親切心で、街に馴染めるように声を掛けてくれただけでしょ…。」
「お前、バカか?!男が下心も無しに、女に声なんて掛けるわけないだろ?!」
「あのね…誰もがあなたと同じだとか思わない事ね。
世の中には“親切心”というものを持ち合わせいる人たちも居るの!
私だって単なる親切心から魔力が枯渇して赤子になっていたあなたを拾ってきたじゃないの。
挙句の果てに嫁入り前だって言うのに…はぁ…。」
「何だよ…だったら俺が責任を持って、嫁に貰ってやるぞ?」
「…貰ってやるって何よ…貰われてなんかやんないわよ…。」
「っていうかお前、その辺の男にホイホイついて行くんじゃねえぞ!」
「何であなたにそんな事を言われなくちゃいけないのよ…。」
「当り前じゃねえか!お前が変な男に引っかかって、何かあったら、俺の餌が無くなるだろうが!
第一!前の事をもう忘れたのか?!」
「あ~餌ね、ハイハイ…。それに忘れていませんよ…だから今だって断ったじゃない…。」
海はそれ以上はカイの暴言に我慢出来ず、その場を離れようと、森の方へ行ってしまった。
前にレシピを盗まれた時の心の傷は、案外深かったらしい…。