邂逅2
「痛ってぇ!」
俺は咄嗟の痛みに耐えきれず患部を抑えその場に蹲った。
大声を挙げたからか、確認していないが多くの視線を頭上に感じる。
なんだ、一体何が起こった?
「ご、ごめん。
強く踏みすぎたみたい。」
頭の上から声が聞こえる。
顔を上げると、心配そうに俺の方に手を置く女性がいた。
気後れするほど整った顔立ちだ。
しかし同時に親近感と言えばいいのか、関わりやすそうな雰囲気を放っている。
キッと吊り上がった目、後頭部で一房に纏められた濃紫がかった黒髪は腰まで届くくらいのポニーテールにしている
歳はいくつぐらいだろう、俺と同い年ぐらいに思えるが少し年上かもしれない。
「ねぇ、本当に大丈夫?」
彼女が肩に置いてあった手を離して俺の前で手を振る。
整った顔立ちに見惚れていた俺だが、素直に理由を告げるわけにはいかない。
恥ずかしすぎる。
「あぁ、大丈夫だよ。
もうなんともない。」
「そう?それなら良いんだけどね。
ほんと、悪かったわね。」
どうやら本当に悪気があって俺の足を踏んだわけではないらしい。
記憶が正しければ、彼女は何度も俺に話しかけていた。
彼女からしたら俺は、話しかけているのに反応せず無視しているように映っただろう。
そもそもの原因は俺にあるように思える。
「こっちこそごめん。
俺に話しかけられているとは思わなかったんだ。
ちょっと考え事をしててさ。」
「ちょっと、貴方が謝らないでよ。
こっちが一方的に暴力を振るったようなもん何だからさ。」
彼女は俺と違う意見のようだ。
まるで自分が全ての原因のように話す。
「わかったよ。
でも俺からしたら君が話しかけてくれたのを無視したようなものなんだ。
俺にも原因があったんだよ。」
「.....わかったわ。」
今度は自分の中で納得する答えを得られたのか素直に頷いた。
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「・・・オホン。
それで、私にどのような要件で話しかけてきたのですか?」
俺は一息置いて彼女に何故話しかけて来たのか尋ねる。
しかし、彼女は一歩身を引き警戒した目線を寄こした。
ナンデ⁉︎
「なに、その話し方。
すごい胡散臭いんですけど。」
俺がせっかく準備した他人に話しかける為のセリフは、良い印象を与えることができなかったみたいだ。
俺的には良いと思っていたが何処がダメなのだろうか?
「わるい。
この話し方の方が話しやすいかなと思ったんだがダメだったかな?」
「やめた方がいいよ、さっきの話し方。
なんか気持ち悪いから。」
彼女はズバズバ俺にツッコむ。
話し方が気持ち悪いと言われた。。。カナシイ...
もしかしたら俺に女友達ができないのは話し方が気持ち悪かったからだろうか?
「わかったよ、今までの話し方に直すよ。」
「了解、私もその方がいいと思うわ。」
ポジティブに考えよう。
会話の流れ的には良いはずだ。
互いに気楽に話せる環境ができたと思う。
そう、元からこの流れを作るためにワザと変な話し方をしたのだ。
そう考えよう。
、、、やっぱ悲しくなるから心の中まで言い訳するのはやめよう。
改めて彼女の方を確認する。
やはり美人だ。
今までの俺なら間違いないくらい緊張して会話が成り立たなくなる。
例えば、クラスのマドンナ白雪氷雨のように。
言葉では表しずらいが、姐御肌ともいうべきものか。
彼女の話し方、接し方、雰囲気。
どれをとっても俺に緊張を与えさせない。
まるで運命の出逢、、、
「?なに、そんなにジロジロ見て。」
勝ちげの目線が俺の目線と重なる。
それと同時に足を踏まれた時の痛さも蘇る。
、、、、、やっぱり少し怖いかも。
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「それでさっきの質問だけど。」
「ん?」
「さっきどうして私があなたに話しかけたか聞いたでしょ?」
「ああ。」
そう言えばそんな質問をして話しかけたんだっけ?
気持ち悪い話し方と言われたので記憶から質問の内容を消すところだった。
「いきなりここに召喚されて訳が分からなかったから、近くにいた人に話しかけたのよ。」
「でもどうして俺に?
周りにもいっぱい人いるでしょ、それこそ同姓の人とか。」
「.....あなたの制服に見覚えがあるのよ。」
「なるほどね、俺と同じ高校ってこと?」
「まぁそんな感じよ。」
何か隠していそうだ。
先程までハキハキと喋っていた口調が、突然歯切れが悪くなった。
ここまで分かりやすいことがあるなんて、
「何笑ってんのよ。」
「別に、何でもありませんよ。」
彼女は何か聞きたそうにしているが話しかけられないのだろう。
ここで突っかかったら隠していることについて追求されると思っているのではないだろうか。
「ふん!」
やがて俺が察している事を確信したのか、彼女は頬を赤らめながらそっぽを向いてしまった。
とても可愛らしいため、揶揄いたいが虎の尾を踏みそうなためやめておくととにする。
俺にそのような度胸はないのだ。
どうやら俺とほぼ変わらない体験をしたようだし、他人に話せない隠し事も一つや二つあるだろう。
疑問は解けたし話題を変えるか。
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「そう言えば自己紹介がまだだったね。
俺は輪宝廻、高校一年、これからよろしく。」
いつもは自然に自己紹介をしようとしても緊張で上手く行かないが、スッと言葉が出てきた。
「私は華燐よ、東堂華燐。
高校一年、これからよろしく頼むわ。廻。」
彼女はそう自己紹介をした。
年上にも見える顔立ちだが、俺と同い年らしい。
こちらとしては同学年の方が接しやすいので助かる話だ。
しかしいきなり名前呼びとは、雰囲気通りにコミニケーション能力も高そうだ。
「東堂華燐ね、了解。」
東堂華燐か。彼女によく似合う良い名前だ。
「オーケー、それじゃあ自己紹介も済んだし互いにここに召喚されるまでに何があったか話したいんだがいいだろうか?」
「いいわよ、情報交換しようってことでしょ。
私も他の人がどうしてここにいるのか気になるし、ね。」
やっと俺が話したかった会話ができそうだ。
得てして作れたパートナーではないがこれはこれで誰を話し相手にするか迷う時間が減った。
彼女に起きた出来事、俺に起きた出来事の差異。
質問したいことが山程あるが、まだ東堂さんとは出会ってから1時間もたっていない。
できるだけ相手に不快な気持ちを与えずに会話できるよう心がけよう。
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ストーリの進むペースは遅いですがこれからも投稿頑張るので、ぜひ読んで見てください。