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第三十四話 緊迫の話し合い②


 ブライトの耳が、ビクンビクンと跳ねる。どうやら彼にとって、ユルー先輩は相当重要な存在と見ていいだろう。


「今回の昇格クエストで昇格するのが全てユルー派の隊だったとしても、ユルー派は四軍で過半数を取れない。つまり、ユルー先輩が指揮官になるとしたら、他の派閥の者から投票されないといけない。そんなことが起こりえないから、四軍の指揮官はカイセドになったわけだ」

「……お前が、ユルー先輩を知ったような口を聞くなよ。だいたいユルー先輩は、指揮官なんてしょうもない仕事をやるようなお方じゃない」

「だったらなおのこと、僕に投票すべきだ。僕なら、カイセド派の中で内部分裂が起こせる。ユルー派が僕に事前投票してくれたら、他の派閥はもちろん、カイセド派の中でも僕を指揮官にしようとする勢力が出てくるはずだ」

「…………」


 四軍カイセド派の団員からすれば、カイセドに対する不満はあれど、自分たちの派閥が指揮権を放棄することは避けたい。かと言ってカイセドを裏切り立候補する勇気も支持率もなく、他に候補者もいないので、結果カイセドに投票する。


 他の派閥はどれだけ協力関係を結んだところで、四軍の過半数は現状カイセド派に取られているのでどうしようもないし、そもそも他の三派閥の長が指揮官になればカイセドよりも他派閥に辛く当たるのは間違い無いので、票を集めるべき対象もいない。


 この状況は、サイックスが立候補すれば一変する。


 サイックスはカイセド派であり、五軍の指揮官を半年やって死者を出していないサイックスなら、カイセド以外のカイセド派からすれば同じ派閥、他の派閥からしたらカイセドよりもマシだ。


 今、過去に見ないくらいにカイセドに対するヘイトが高まっているこの瞬間こそが、サイックスが四軍指揮官になる最高の機会、というわけだ。


 グリーフはそうやってサイックスを唆し、更には今回の選考隊で五位に入れられたことからもわかるように、カイセドはサイックス隊を干そうとしているのだから、今回を逃せば一生五軍のままだと脅しつけた。そして、そうやってサイックス隊を干そうとしていることこそが、カイセドにとってサイックスが厄介な存在になっているからだと重ねて唆した。


 今の今までは、カイセドが票操作で従順な団員を優先して昇格させていたのだが、こういう状況ならばサイックスの昇格を止めることはできない。昇格クエストは運営も関わっている正式なもので、カイセド程度が後からどのような文句をつけようがどうしようもないのだ。


「ユルー先輩にとっても、裏切り者のカイセドがこのまま四軍の指揮権を持ち続けるより、僕が指揮官の方がよほどマシなはずだ。トム隊を落とすのは、あくまで反逆の狼煙だ。カイセドに対する明確な裏切りなんだから、もう後戻りはできない……どうだ、分かってくれたか?」


 ユルー派の反応は、思いの外好感触だった。やはりそれだけカイセドに対してのヘイトが溜まっているのだろう。サイックスも実感があるのか、顔を紅潮させピクピクと鼻の穴を膨らませた。


「おい、静かにしろ」


 しかし、ブライトの一言で、ユルー派は静まり返る。結局のところ、実質的な五軍ユルー派のリーダーであるブライトがどう判断するかで、今回の策略の結末が変わることになるのだろう。


 ブライトはボリボリとめんどくさそうに頭を掻くと、フッとバカにしたように笑った。


「そこのクソの入れ知恵に乗っかってベラベラご苦労様。だが、あいにく、オレたちは話し合いなんて無駄なもんで方針を決めねぇもんでな」


 そして、腰に台頭した魔道具を引き抜いた。


「武力こそが、全ての決定権を持つ。雑魚のゴブリンなんかには何の決定権もなく、この国の王様が偉ぶってんのは武力を抱え込んでるからこそだ。武力こそが正義……そうだろ?」


 ブライトが振り返りそう問いかけると、ユルー派の面々は慌てて頷いた。これがユルー派の理念らしいが、それならば一部例外こそいるものの、武力によって五軍に振り分けられた自分たちのことをどう思っているのだろうか?


 ともかく、ブライトの一声で、明らかに流れが変わったのは間違いない。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 結局その戦いでただただ時間を浪費し死人が出たら、話し合いの意味が無くなる!」

「……ふん、それじゃあ代表の隊を出せばいい。そうすりゃ最悪死ぬのは六人。もちろんユルー派からはオレ達が出る。オレ達が死ねばお前の好きにすればいいが、オレ達が勝てば、それが戦争開始の火蓋を切る。そっちの代表者はお前らか?」

「そ、それは……」

 

 顔を引き攣らせるサイックス。カナンの透明化は魔力感知こそ鈍いものの、鼻が利く獣人隊には効果が薄い。さらに、あちらはこちらを殺すつもりで、こちらにはそのつもりはないということも加味したら、ブライト隊の勝利は硬いだろう。


「なんだ、立候補者はいねぇのか? だったら、オレの方から指名してやるよ」


 そして、ブライトは、まずはサイックスをじっと眺めた。そして、がくがく震えるサイックスをフッとあざ笑ってから、視線をやったのはグリーフだった。


「トム隊だ。トム隊と勝負させろ」


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