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勇者祭  作者: 牧野三河
第六章 試合準備編

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第38話

放映機材のテストの為、機材を前にマサヒデとアルマダが立ち会う。

本気で撃ち合う彼らを前に、冒険者達の称賛の声。

立ち会い、1本目。


「まだ我々に何か手伝えることがあるのでしたら・・・アルマダさん、構いませんよね」


「ええ。喜んで」


 マツはにこにこ笑いながら、


「それでは、お二方にには、少しここでお手合わせ願いませんか」


「今、ここで?」


「はい」


「なぜ?」


「思い切り動くマサヒデ様を、この機材がしかと追えるか。

 映すことが出来るか、ちゃんと見ておきたいのですが。だめですか?」


「まあ・・・そういうことでしたら・・・」


「ええ。しかし、まだ・・・」


 周りを見渡す。

 訓練場では、まだ色々な荷物を出したり入れたりしている者たちがいる。


「そうですね・・・うーん、3本くらいでいいでしょうか。

 怪我などされましたら、私がすぐ治しますから」


「マツ様、色々と、作業している方々が大勢おりますが」


「きっと、構いませんとも。隅に置いてもらえれば。

 あ! そうだ! せっかくの機会です。お詫びにお二人のお手合わせ、ご覧になって頂いては!」


「・・・」


「どうですか?」


「まあ、私は構いませんが・・・」


 先回、マツモトの選抜3人と立ち会った時のことを思い出す。

 あの立ち会いの噂が広まって、参加者が減ってしまう、と。


「マツ様。どうせ、今やらずとも、後々やらなければいけない作業なんでしょう」


「はい」


「では、マサヒデさん。やりますか。

 どうせ、見られたら参加者が減る、などと心配してるんでしょう」


「まあ、その、その通りです」


「陛下のご観覧がありますから、もう心配いりませんよ。思いっきりやりましょう」


「あ、そういえば、そうでした。オオタ様にそれを伝えにも来たんでしたね・・・

 ふふ、アルマダさんとは、2ヶ月ぶりですか。楽しみになってきました」


「ありがとうございます」


 と、マツは軽くと頭を下げ、また笑顔を上げた。


「この訓練場を、広く使って、思いっきり走り回って下さいますか。

 もちろん、走り回るだけでなく、しっかり打ち合って下さいね。よろしくお願いします」


「では、道着をお借りしてきましょう。着替えて参ります」


「はい。お待ちしております」


 2人が扉の方に向かうと、


「みなさーん! これから、トミヤス流の立ち会いが見られますよー!

 荷物をすみっこに置いてー! こっちに集まってくださーい!」


 後ろでマツが、訓練場に大声を響かせていた。


----------


 準備室は、がたがたと荷物を運んでいる者がいて、忙しそうだ。

 それらの1人に「すみません」と言って道着を借りた。


 2人は着替えながら、


「うーん、これは何とも」


「ええ・・・何か、恥ずかしいですね」


「道場では門弟の皆さんが見てますけど、何かこう、客として、と言いますか・・・

 そういうのは・・・」


「分かります。私もそんな感じで・・・」


「これ、きっとマツ様も分かってますよね。

 何とも、茶目っ気というか、いたずら好きというか」


「まあ、大会が始まってしまえば、たくさんの人もご覧になるでしょうし。

 それに慣れろ、ということもあるんでしょう」


「マサヒデさん、ただの観客だけではありませんよ。国王陛下もご覧になって下さるんですよ」


「そうでした。無様な姿は晒したくありませんね」


「ふふ、あなたにそんな心配はありませんよ。さて・・・」


 2人は木刀を手に取った。

 ぶん、と、軽く振って、準備室を出る。


「行きますか。手加減なしで、お願いしますよ」


「アルマダさんに手加減なんてしたら、大怪我してしまいますよ」


「またまた・・・怪我は治してくれるそうですから、寸止めは・・・」


「必要ありませんね」


「といっても、頭をかち割る、なんてのはご勘弁ですよ」


「またそれですか。昨日、ギルドの方々と立ち会った時も言ってましたね・・・」


「いくらなんでも、死んだ者は生き返らないでしょう。

 マツ様の死霊術で幽霊になって生きていく、なんてのは、許して下さいよ・・・」


----------


 訓練場に入ると、マツの周りに、ずらり、とメイドやメンバー達が緊張した面持ちで、正座して座っていた。


(これは、こっちも緊張するなあ)


 マツの所に行って、確認する。

 マツの手のひらには、何か小さな石のような物が乗っていて、その上には小さな放映画面が写っている。


「マツさん。訓練場を広く使って、ですね」


「はい」


「怪我などはすぐに治していただける、と。では、寸止めは必要ありませんね」


「はい。あ、でも、さすがに死んでしまったら、私でも生き返らせることは出来ませんよ?」


「おや。マツさんにも出来ないことがあったとは」


「うふふ。申し訳ありません、マサヒデ様。無理なものは無理でございます。あ、そうだ」


「なにか」


「死霊術も少しは使えますので、おばけになってもよろしければ」


「ははは! それはご勘弁ですよ」


 そんな会話をしている3人を、正座している面々が、緊張した顔でじっと見つめている。


「ふふ、ではマサヒデさん。参りましょう」


「はい」


 2人は、訓練場の真ん中辺りに歩いて行った。


「広く使え、と仰られましたし、少し間を取りますか」


「そうですね」


 普段より3歩分ほど距離を取って、向かいあう。

 アルマダは離れたマツの方を向き、大きな声を出した。


「ここらでいいですかー!」


「いいでーす!」


「じゃあー、始めますよー!」


「お願いしまーす!」


 マツの声が返ってくる。

 再び、向かい合う。


「では、お願いします」


「お願いします」


 2人は互いに礼をして、剣を構えた。

 ぴりっ、とした空気が、訓練場を包む。


 ぱっ、とアルマダが距離をとって、さーと後ろを向いて走り始めた。

 同時に、マサヒデも後ろに走り始める。


(壁か)


 どん! と、2人は壁を蹴った。

 マサヒデは水平に近く、アルマダの方は、ほんの少しだけ、放物線を描く。

 そのまま飛んで、着地。勢いを乗せて走る。

 アルマダが少し遅れて着地する。


(あ!)


 アルマダは勢いに乗せて、また地を蹴って飛んだ。

 今度は水平に近く、だが、ほんの少しだけマサヒデより高い。


(しまった! 上!)


 この勢いで止まるのは無理だ。

 アルマダが相手では、下を走り抜けるのも無理だ。

 飛んでも、マサヒデの方が下から向かうことになる。

 受けたら、ふっとばされる。横に避けるか。


(流せるか!?)


 アルマダの剣が上からのび、マサヒデの左肩にすごい勢いで迫ってくる。

 マサヒデはその剣に、左上に剣を振り上げた。


 があん、とすごい音がして、アルマダがゆっくり回転しながら後ろに着地。

 マサヒデも走り抜けながら、後ろを振り向いて、ざざー、と止まった。


(あ!? これはまずい!)


 流すことは敵わず、何とか弾いたが、アルマダの剣の勢いが強すぎた。

 木刀にがっつりヒビが入っている。


 次の一撃で決めなければ。


 もう弾くことも、受けることも無理。

 当然、弾かれたり、受けられたりしても、いけない。

 何とか流すことは出来るかもしれないが、もしそれで折れてしまったら終わりだ。


 攻めるしかない。

 それも、受けられず、流されない。そんな一撃を入れるしかない。

 つー、とマサヒデの頬を汗が落ちた。


 アルマダは上段。

 マサヒデは下段に構えた。


 ざっ! と地を蹴って、マサヒデは走り始めた。

 下段から剣を残し、下段後ろにして、アルマダに向かう。

 アルマダの上段からの振り下ろし。


 マサヒデはそれを横に躱しながら、アルマダの斜め後ろ、向きを変えながら、下段から横薙ぎに剣を振ったが・・・

 アルマダの剣は振り下ろされておらず、途中で止まっている。目だけがこちらを向いている。


(いかん!)


 もう剣は止まらない。

 アルマダの剣が、その前に立てられた。


 ばしーん! と、音が訓練場に響き渡り、マサヒデの木刀が半分ほどで折れ、すっ飛んで行った。


 すごい勢いで折れた木刀が壁にぶつかり、があん、と音が響いて、少ししてから折れた木刀は地に落ちた。


「・・・参りました・・・」


 マサヒデは立ち上がり、アルマダに礼をした。

 アルマダも、


「ありがとうございました」


 と、礼を返した。


 少ししてから、おお、と声が上がり、拍手が響いた。



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