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勇者祭  作者: 牧野三河
第十八章 カオルの特訓
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第195話


 昼餉を終え、マサヒデとシズクとクレールと3人で、稽古で疲れた身体を休めるため、居間で寝転がっている。

 涼しい風が入り、ちん、ちりん、と小さく風鈴が鳴る。


「マサちゃん、ほんとに私が強くなれる方法があるの?」


「ええ」


「なーんだ、こんな事かって言ってたよね。簡単な事なの?」


「そうですよ」


「わかんないなあ」


「こういう事って、意外と考えてる時じゃなくて、あ! って閃くものです」


「じゃあ、寝てれば分かるかなあ」


「かも」


「マサヒデ様ー」


 クレールの気の抜けた声。

 もう完全に寝る一歩手前。


「はい」


「私もですかあ?」


「そうですよ」


「こうやって、ごろごろしてたら分かりますかねえー」


「分かるかもしれませんよ」


「じゃあ、何も考えずに寝ましょうかねえー」


「ふふふ」


「ねえ、マサちゃーん」


「なんですか?」


「私も、いたずら心、いる?」


「シズクさんのいたずらって、なんですか?」


「あの木を引っこ抜くとか?」


「枯れちゃうじゃないですか」


「石を裏返しちゃう」


「元に戻せるなら良いですよ」


「マサちゃんはよくいたずらしてるよね」


「そうですか?」


「マツさんとか、カオルからかったりして」


「そんな事はありませんよ」


「さっきのカオルと立ち会いもそうだったよね」


「真面目にやってたじゃないですか」


「竹刀の先っぽで手裏剣受けてさ。『真剣じゃ出来ないから、カオルの一本』なんて言っちゃって」


「その通りじゃないですか」


「みんなビビっちゃったじゃん。私もカオルもクレール様もビビっちゃったよ」


「そうですよー。『じゃ次は一本取りに行きます』なんて」


「取られてばかりじゃ負けちゃうじゃないですか」


「クレール様、あれは怖かったよね」


「怖かったですー」


「そのくらい気合入れないと、カオルさんからは一本取れないってだけです」


「またまたー」


「またまたですよねー」


「私の時だって怖かったよー」


「どこがですか?」


「思いっ切り振ったのにすかって。『足もらいました』なんて」


「ははは。すみません。あれはちょっといたずらでした」


「ほーら、マサちゃんいたずら」


「いたずらですねー」


「で、あれのどこがいたずらだったの?」


「え? 分かってないんですか?」


「怖かっただけだよ」


「あんな斬り方じゃ、真剣でもシズクさんの足なんてもらえませんよ」


「あー。ずるい。やっぱいたずらじゃん」


「マサヒデ様、やっぱりいたずらー」


「稽古なんですから。もし大太刀とか大剣だったら、ほんとに一本でしたよ」


「むーん」


 ごろごろ。


「刀だって、あれで筋を切られたら一本じゃないですか」


「むーん!」


 ごろごろ。


「マサヒデ様ー」


「なんですか?」


「言い訳は良くないと思いますよー」


「言い訳じゃないですよ。本当の事です」


「むーん!」


 ごろごろごろ!


「ほらー、シズクさんがごろごろしてるじゃないですかー」


「ははは。猫みたいで、かわいいから良いじゃないですか」


「あはは。シズクさん、猫ー」


「ふーん!」


 ごろん。


「ところでえー、マサヒデ様ー」


「なんですか?」


「初夜の儀ってえー、いつなんですかあー」


 びく! と、マサヒデとシズクの目が開かれる。

 2人の目が、きりきりきり・・・と音を立てそうな動きで、クレールを見る。

 クレールはとろん、とした目で、もう寝そうだ。


「・・・まだです」


「ええー」


「子が出来ちゃったらどうするんですか?」


「子・・・えへ、うぇへへへ、にぇへへへ」


「クレールさん、身重な身体で旅に出るんですか?」


「ああ・・・そうでした・・・」


 2人がしばらくクレールを見ていると、目を瞑って、すーっと寝入ってしまった。

 そーっと、シズクが近付いてくる。


(マサちゃん)


(はい)


(クレール様、いたずら心は、ばっちりだね)


(ですね)


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