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雨上がりに僕らは駆けていく Part2  作者: 平木明日香
夕暮れと影
146/394

第144話



 ………


 ……………………


 ……………………い


 …………………………おいって!


 



 後ろで何か言っている。


 声は届いていた。


 それが、俺に対して向けられている言葉であることも。


 肩を叩かれていることも。



 だけど、「時間」は停止していた。


 全てが凝固したかのように止まっていた。


 「流れ」そのものが失われていた。


 そう形容するより、他になかった。


 カーテンを開いて、その先に広がる確かな景色を、——見て。




 そこにいたのは、“千冬”じゃなかった。



 ——千冬 



 …じゃない?


 …いや、きっとそうだ。


 目の前にいるのは千冬じゃない。



 でも、…なんで?




 ベットの上に横たわっていたのは、知らない人だった。


 千冬と同じように鼻に栄養チューブを付けられていて、寝たきりになっている。


 一目でわかった。


 “千冬じゃない”と。


 それぐらい年老いていて、見た目は80歳から90歳くらいのおばあちゃんだった。


 部屋を間違えたのかと思い、外に出た。


 「番号」は合っている。


 フロアの階層も、病院だってそうだ。


 廊下を歩いている看護婦に尋ねた。


 この部屋にいた女の子は?


 どこにいったんですか?


 前のめりになり過ぎていたせいか、看護婦さんはかなり困った感じだったけど、ステーションで問い合わせてくれて、色々調べてくれた。


 だけどあの部屋には、ずっとあの人がいるみたいだった。


 「千冬」っていう入院患者も、その履歴も、どこにも残っていなかった。


 よくお世話してくれていたチーフナースの渡辺さんを見かけて、いてもたってもいられずに駆け寄った。


 千冬はどこに行ったんですか?!


 たまらずにそう聞くと、首を横に振られた。


 それどころか、俺のことを知らないみたいだった。


 目を合わせるなり、「誰?」って、冷たく言われて…

 

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