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雨上がりに僕らは駆けていく Part2  作者: 平木明日香
夕暮れと影
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第143話


 ガラッ!



 勢いよく病室を開けた。


 カーテンが、部屋の中央にかかっている。


 いつもと同じ光景だ。


 殺風景な部屋の間取りに、使われていないテレビとリモコン。


 エアコンは24時間付けっぱで、冷たいくらいに空気が涼しい。


 部屋の中に入ろうとする俺の手を、彼女は引っ張った。


 お互いに息切れがして、肩から息を吸っていた。



 「おい!何しにきたんや」


 「ここにおる」


 「は?!誰が??」


 「千冬が…」



 驚いた顔をして、俺を見ていた。


 “病室の中にいる”

 

 それが“誰”かを、できるだけまっすぐ伝えたんだ。


 キミが誰でも、「桐崎千冬」という名前だとしても、ここにアイツがいる。


 世界で、…たった1人の——



 カラカラカラ




 そっと開いたカーテンが、勢いのままに揺れている。


 分厚いドレープと、薄いレースのカーテン。


 ベットに横たわっている人が誰かを、カーテンを開けなくてもわかるはずだった。


 背の低い丸椅子。


 無機質な音を鳴らしている、心電図のモニター。


 壁に掛けられているカレンダーは、写真も何もないモノクロなデザイン。


 いつもそうだった。


 重いカーテンを開けば、確かな質感を持つ「現実」が、そこにはあった。


 どこか湿っぽくて、どうしようもないくらいに静かな日常が、深いぬかるみの上に広がるように。


 


 

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