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雨上がりに僕らは駆けていく Part2  作者: 平木明日香
夕暮れと影
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第142話


 ひょっとして、夢でも見てる…?


 思わず、そう考えてしまう。


 だから手をつねってみた。


 できるだけ強く。


 もし「夢」なら、彼女が千冬だっていうこともありえなくはないだろう。


 それに、急に話しかけられてきたことだって



 「私が千冬じゃなかったら、他の誰やって言うねん」


 「こっちが聞きたいわ」


 「この学生証を見てみぃ!名前書いとるやろ!」


 「…ほんまや」


 「ここにも、ほら!」


 「…でも、アイツは今病院に…」


 「病院!?」



 俺の言葉がまるで信じられないと言ったように、彼女はたじろぐ。


 千冬の名前が書かれた学生証と、教科書類。


 でもそんなものはあり得ないんだ。


 ここがもし、夢の世界じゃないのだとしたら。



 バッティングセンターに向かう彼女の手を取って、病院に向かった。


 走ればすぐに行ける。


 今すぐにでも確かめたいと思った。


 千冬はいつだってあの場所にいるんだ。


 619号室のあの部屋に。


 三ノ宮の街並みを一望できる、あの窓際に。



 タンッタンッタンッ



 彼女の手を引っ張って階段を登った。


 エレベーターなんて待ってられなかった。


 急いで駆け上がり、途中、息を切らした。


 喉の奥が痛かった。


 水分が足りなくなって、呼吸がしづらくて…



 どこに行くんだと尋ねられたが、思うように答えられなかった。


 千冬に会いにいこうとしてる。


 それ以外に説明できるものがなかったからだ。


 それをどう伝えればいいのかもわからなかった。


 だって、「私が千冬だ」って、自信気に言うから。

 

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