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雨上がりに僕らは駆けていく Part2  作者: 平木明日香
夕暮れと影
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第141話




 千冬に会える日を夢見て、どれだけ時間を過ごしてきたかわからない。


 街のどこを歩いても、雲ひとつない空の下にも、千冬の姿は見当たらなかった。


 太陽が沈んでいく間際の空に、微かな、夕焼け。


 船が残照を浴びて光っている。


 海辺に動く波際に、やさしく運ばれてくる夜の気配。


 彼女は俺の前を歩いて、振り返る素振りもなく足を動かしていた。


 淡い空の色はすでに消えて、穏やかな薄い紫に滲み出るような暗闇が、少しずつ膨らんできていた。


 見慣れないその後ろ姿を追いかけながら、何度も尋ねた。


 本当に千冬か?


 って、しつこいくらいに。



 「だからなんやねんそれ!」


 「普通に聞いとるだけやろ」


 「“普通に”ってなんやねん、“普通に”って」


 「そのままの意味や」


 「そのまま…?意味わからん」


 「キミが千冬かどうか…」


 「キミ…?」


 「…え?なんか変なこと言うた?」



 一向に話は噛み合わなかった。


 単純に聞いてるだけなのに、怪訝な顔をされるばかりで…


 それだけじゃない。


 奇妙だったのは、彼女が俺のことを“知っていた”ことだ。


 もし本当に千冬なら、そりゃ当然俺のことは知ってるだろう。


 …でも、どう考えても辻褄が合わなかった。


 こっちからしたら、急に話しかけられてきたようなもんだった。


 いくら千冬に似ているとは言え、お互い初対面に違いはない。


 そもそも彼女が“千冬”なわけがない。


 冷静に考えても考えなくても、そう考えるのが普通だった。


 「夢」の中じゃあるまいし…

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