表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨上がりに僕らは駆けていく Part2  作者: 平木明日香
ここは…?
138/394

第136話


 「名前…?」



 聞こえてくるはずがないその“音”を、耳の片隅に追いかけた。


 それはほとんど無意識に近いものだった。


 少なくとも、それが感情の外側に無いことだけは明らかだった。



 「桐崎…」



 身近すぎる苗字。


 切っても切り離せない音。


 唇が動くその弾力に跳び上がりそうなほど、跳躍力の高い語感。


 俺は耳を澄ませた。


 次に聞こえてくる言葉を、取りこぼさないように



 「桐崎千冬」




 …そんな、…バカな



 絶句した。


 絶句する以外になかった。


 だって、そんなことはあり得ない…


 アイツが、…“千冬”が、目の前にいるなんて…



 「…千冬?」



 声が掠れる。


 酸素が、肺にまで到達しない。


 視点が揺れ、瞬きさえできなかった。


 何が何だかわからないまま。



 「なんや?」



 この耳に確かに、「千冬」って聞こえた。


 アイツの名前が、見知らぬ女子高生の口から聞こえてきた。


 その音の行方を追いかけようとしても、思うように頭が働かなかった。


 どれだけ冷静に考えようとしても、ダメだった。



 「千冬って…、あの?」



 自分でも何を言ってるのかよくわからない。


 どうしてそんなことを聞くのか。


 どうして、立ち止まってしまう自分がいるのか。



 「“あの”って、どういう意味??」



 確かな言葉が続いてこない。


 尋ねるべき言葉が見つからない。


 だけど、頭の中があり得ない速度で回転した。


 体全体が硬直するほどの、慌ただしさで。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ