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雨上がりに僕らは駆けていく Part2  作者: 平木明日香
ここは…?
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第125話


 「いい?想像するんやで?」



 …想像?


 って何を?



 「無数にある世界線の一つ一つは、常に不安定な流域の中にある。今、この瞬間にも新しい世界が生まれて、時間とその波の境界にすれ違うあらゆる「可能性」が、新しい時間に触れ、明日への扉を開こうとしてる」



 明日…?



 「私たちは常にその真ん中にいる。今という限りない瞬間に選択できる“権利”を持ち、たった一度しかないそのタイミングを、手を伸ばした指先にかけようとしてる」



 …ふむ?



 「だから、想像するんや。もう“間に合わない“、”できない”と思う感情を一切捨てて、自分なら、どこにでも行けると」





 指先に触れる微かな感触を感じた。


 それは“イメージ”なんかじゃなかった。


 手に触れる確かな肌触りと、温もり。


 動き出した電車のそばで、女が俺の手を握っていた。


 時間が止まりかけてしまいそうなほど、電車の車輪はゆっくりと加速し始めた。


 しんと静まり返った一瞬のいとまを解くように、地面が揺れる。



 間に合わないかもしれないと思うこと。



 そんな感情の矛先を、今すぐにどうにかしたいとは思えなかった。


 今までたくさんあったんだ。


 諦めそうになったこと、諦めたこと。


 でもそれがなんだ、って、その度に思った。


 いちいち自分の感情に振り回されてたらキリがないと、いつも思えたからだ。


 それは今も同じだ。


 辿り着けないと思うことがある。


 …もう、触れることができないと思うことさえ。



 

 進んでいく電車の機体に揺らされ、足元がグラつく。


 手すりに掴まってないとコケそうになるくらい。


 目を瞑ってると、電車がどっちに進んでるのかもわからなくなった。


 行き先は三ノ宮みたいだが、“切符”に意味はないそうだ。


 問題は“気持ち”だそうだった。


 …なんだよ、「気持ち」って。


 思わず突っ込みそうになったが、やめにした。


 いつまで目を瞑っていればいいのかもわからないまま、女は強く握りしめてきた。

 

 「一緒にジャンプするぞ!」


 と、それだけを口にして。


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