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雨上がりに僕らは駆けていく Part2  作者: 平木明日香
ライバル
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第115話


 「ちゃんとマスクつけぇよ?」


 「めんどくせぇ」



 女がサインを口で言って、それを受ける。


 簡単な話だ。


 ただ、キャッチャーをやるのが久しぶりすぎて、最初のうちは苦労した。


 女の投げる球はそれぐらい強烈だった。


 とくにスライダー。


 曲がり方が特殊で、一度曲がってからふけるように落ちてくる。


 事前に投げるって言われてないと捕るのが難しい。


 ストレートはストレートで、伸びが半端ないから、ある程度気を引き締めとかないと…




 バシィィッ!!




 オーバーハンドから投げ下ろされる、しなやかな腕の振り。


 重心は低く、スライドしてくる左足のステップは、地面のいちばん低いところを通過して、出来るだけ前に進んでいこうとする力を正確に伝えている。


 スニーカーの先端がこっちに向いた。


 その最中に、地面の上を走る広いステップ幅が、体全部を動かすようにぶつかってくる。



 「痛ったッ…」



 女の身長は160センチくらいだ。


 でも、それ以上に女がデカく見えるのは、踏み込んできた左足の着地点が、普通のピッチャーよりもだいぶ前に着地しているからだろう。


 通常、ステップ幅は身長の80%から85%くらいと言われてる。


 だけど女は俺が投げる時よりもずっと前に進んで、投球モーションの反動をつけている。


 俺の身長が170センチだということを考えると、そのステップ幅の広さは、ある意味常軌を逸してる。


 ステップ幅が広くなれば、それだけ腕の振りにも勢いがついてボールの威力は増す。


 けど、あんまり幅が広くなりすぎると、着地した際に左ひざが折れて、うまくボールをコントロールできない危険性がある。


 ただ女は地面に吸い付かせるようにギュッと左足を着地させた後、重力に倒れそうになる膝を支えたまま、地面反力を使うように跳ね上がってボールをリリースしてくる。


 一言で言えば“ダイナミック”だ。


 最後の最後まで、指先に伝わるボールの力を逃がさない。


 それが、ストレートの“キレ“と速さを生んでいた。

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