表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨上がりに僕らは駆けていく Part2  作者: 平木明日香
ライバル
111/394

第109話



 「知ってた?


 走るのには、何もいらないんだよ?」



 初めてアイツと出会った時、顔には絆創膏が貼られていた。


 ズボンは土だらけだった。


 街の公園の隅で、人知れず壁に向かってボールを投げ続けていた。


 何度も、…何度も。


 公衆トイレの壁はボールの跡がこびりついていた。


 1日や2日じゃ、絶対につかないような跡だった。



 何しとん?



 そう尋ねると、彼女は、顔色ひとつ変えずに俺の方を見ていた。


 “邪魔すんな”


 そう言わんばかりに。



 先週も、女に連れられて千冬に会いに行った。


 でも、やっぱり目を瞑ったままだった。


 どうしたらアイツにまた、会えるだろう。


 もう無理だと分かっていても、まだ、心の中にあるんだ。


 ——もしかしたら


 そう思う気持ちが…




 ジリリリリリリ…!




 目覚ましを消すと同時に、カーテンが開く音が聞こえた。


 ドタドタドタという足音。


 階段を上り下りする生活音。


 瞼の向こうに揺れる人影のそばで、小気味のいい鼻歌が聞こえてくる。


 〜♪


 朝は二度寝するって言ったろ。


 わざわざ人の部屋のカーテンを開けにくるバカ。


 女は「はよ起きろ!」と無理やりシーツを引っぺがし、目覚まし時計ばりの騒がしさで眠りを妨げてくる。


 ここ最近はずっとだ。


 たまに俺より起きてくるのが遅い時があるが、大抵は先に起きて朝の支度を始めている。


 慣れてきたと言われれば慣れてきた。


 女の騒がしさにも、慌ただしい朝の時間にも。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ