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雨上がりに僕らは駆けていく Part2  作者: 平木明日香
ライバル
108/394

第106話





…………………………………………


 

……………………


…………




 「それじゃ、ストレートはグー。パーがカーブってことで」


 「バレないかな?」


 「そこはちゃんとあんたが隠しなさいよ」


 「もうワンパターンくらい作った方が良くない?」


 「ようは打たれなきゃいいんでしょ」


 「そうやけど」


 「まあ任せなって。私にかかれば、全球ストレートでもなんとかなる」




 ここ数日、同じ夢を見ている。


 子供の頃の夢だ。


 初めて千冬とバッテリーを組んだ頃、アイツは、ぼろぼろのキャッチャーミットを俺にくれた。


 “1人じゃ練習できない”


 そう言って、無理やりキャッチボールに付き合わされ、わけもわからずにアイツの投げるボールを受けた。


 痛かった。


 軽く投げるからと言うわりには、やけに速くてさ。


 びっくりしたんだ。


 初めてアイツを目にした時、めちゃくちゃ速い球を投げる女子が身近にいるなんて、思いもしなかったから。




 本当は、野球なんてやるつもりはなかった。


 野球を始めたきっかけはアイツであって、別に好きだからとかじゃない。


 あの頃夢中になってボールを追いかけていたのは、心のどこかで、期待してからだとも思う。


 迷いもせずに振りかぶるアイツのフォームが、夏の日差しの中に煌めいてた。


 埃っぽいグラウンドの土の匂いを払いながら、ど真ん中に構えたミット。


 いつもそうだった。


 アイツは、明日世界がどうなるかなんて考えずに、ストレートを投げることだけを夢見てた。


 俺は構えるだけで精一杯だった。


 野球を始めたばかりの頃は、あんまり外に出ることもなかったし。

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