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お見合い相手は元カノだった  作者: サエキ タケヒコ
4/7

 

 私は突然キスをされてパニックになっていた。


(どういうことなの)


 瀬名君は初恋の人だった。


 彼との関係がギクシャクし始めたのは、付き合い初めて3ヶ月目の夏休みの終わりの出来事からだ。


 瀬名君から、母親が実家に泊りがけで行くので、昼間は家に誰もいないから遊びに来ないかと誘われた。


 私はピンときた。


 付き合い始めてから、私は彼といろんな初めてを経験した。初めて手をつないで歩いたり、デートをしたり、キスをしたり。


 だから夏休みの終わりに親のいない家に誘われたのは、一緒にゲームをしたり溜まった宿題をするためではないはずだ。


 彼氏のいる友達はみんなこの夏に経験を済ませていた。


 親友の智子に相談すると「それは絶対に彼はやる気だよ」と言われた。


 そして、「もし、佐和子にその気がまだないのなら、家には行かないで、やんわりと断り、映画に行くとか、プールに行くとかにしなよ。親の居ない彼の家に一人で行くのはOKってことだよ」と言われた。


 私は経験豊かな友人たちの話を聞き、そういうものかと思った。


 その上で彼の家に行くことにした。


 その日は、朝起きたらまずシャワーを浴び、新品の下着を着て彼の家に行った。


 彼の家に行くのは初めてのことだ。


 入るなり彼の部屋に連れ込まれた。


「ごめん。リビングのクーラーが壊れたみたいで冷風が出ないんだ。母さんがいないから修理業者の連絡先も分からないから、僕の部屋でいいかな」


「うん」


 そう答えたが、彼の部屋は散らかっており、勉強机の前の椅子とベッドしか座れるところが無かった。


「そこに座って」


 彼が無造作にベッドを指さした。


 私は恐る恐る彼のベッドに腰掛けた。


 瀬名君がこんなにストレートに迫ってくるとは思っていなかった。


 智子たちの話を聞いても、半分くらいはリビングで二人でゲームをしたり、借りてきたDVDの映画を見たりするだけになるのではないかと予想していた。


 だが、その予想を裏切り、瀬名君は一直線に向かってきている。


 私は覚悟を決めた。瀬名君だったらいい。いや、私も瀬名君ともっと触れ合いたい。一つになりたい。そう自分に言い聞かせると、私は目を閉じた。


 瀬名君が肩に手をかけた。


 ビクッと私の身体が震えた。


 緊張のあまりどうにかなりそうだった。




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