表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お見合い相手は元カノだった  作者: サエキ タケヒコ
3/7


「二人でお庭を散歩して来たら」


 仲人が言った。


 都心の一等地にあるこのホテルには広い庭園があった。庭園を囲むようにホテルの建物が建っていて、庭園の中は静かで人も少なかった。


 僕らは、両家の両親と仲人がホテル内のコーヒーショップに場所を変えてお茶をしている間、二人で庭園を散歩することになった。


「久しぶりだね」


 両親たちの姿が見えなくなったところで僕は佐和子に言った。


「どうしてなの」


 佐和子がキッとした目で僕を見て言った。


「どうしてって……」


「なんで私とお見合いするのよ」


「それは……」


 相手が佐和子とは知らなかったとは言いかねて、言葉を濁した。


 そんなことを言えば、もっと激怒しそうな気がしたからだ。


「あの頃と同じね。いつもごまかしてばかりで、ちゃんと言ってくれないのね。私のことなんかどうでもいいのね」


「そんなことないよ」


 僕は佐和子を見た。


 佐和子は白いワンピースを着ていて、赤銅色の髪が陽光に輝き、その白と茜色のコントラストが綺麗だった。


「何黙っているのよ。何か言いなさいよ」


 10年ぶりに会った佐和子に見とれていたなんて言えなかった。


 佐和子は僕に背を向けた。


 そして庭園にある小さい人工の滝に向かって行った。


 僕は後を追いかけた。


「ちょっと、待って」


 その時、佐和子が石畳の端にヒールを引っ掛けてよろめいた。


 すぐ目の前は池だった。


 そのまま倒れると池に落ちるおそれがあった。


 僕はとっさに佐和子を抱きかかえるようにして支えた。


 佐和子が僕の方を向いた。


 目には涙が貯まっていた。


 思わず、僕はそのまま佐和子を抱きよせてキスしてしまった。


(えっ)


 佐和子は目を見開いて驚いた顔をしたが、僕も自分の行動に驚いていた。


 10年前に初めてキスをかわしてから、僕らは何度もキスをした。


 今思えば下手くそなキスだったが二人きりになると夢中になってしていた。


 そんな過去に刷り込まれた行為の条件反射だったのだろうか。


「もう馬鹿」


 佐和子の平手が飛んできて左の頬を打たれた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ