表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

世界を壊すまでの話

作者: 氷天華

『豆腐の角に頭をぶつけて死にたい』そんな思いを誰しも一度はしたことがあるでしょう。

この話は、そんな『豆腐の角に頭をぶつけて死にたい』一般人が主人公のお話です。

ノリと勢いで書いたので、なんでも許せる方向けです。

 『豆腐の角に頭をぶつけて死にたい』と突然思い立った僕は、この世で一番硬い豆腐を知るために、図書館へ向かっていた。家から五十歩ほど歩いたところにある公園を丁度通り過ぎたくらいのところを絶賛歩いているのだが、少し前の十字路……いや、今十字路に差し掛かった。図書館に向かって歩いている僕は進み続けているわけだから、僕は十字路に今まさに足を踏み入れようとしている。その同時刻同場所で僕から見て左の道から、自転車がおそらく急には止まれないだろうとゆうに予想ができるスピードで、絶対止まる気がないだろという走り方で走ってきたのが見えた。


          ブラックアウト


「僕は豆腐の角で頭をぶつけて死にたいんです」

 

意識が戻ると、僕の傍にいた医者が、


「大丈夫ですか」


と聞いたので、僕はそう答えたが相手にされなかった。医者が何やらカルテみたいなものに文字を書き始めたので、ちらっとのぞくと


"脳に異常あり"


と見えた気がした。失礼な。僕はただ豆腐の角に頭をぶつけて死にたいだけの一般人だ。


 次に目を覚ますと、目の前の景色が変わっていた。僕が覚えていることは、病院を出た後、図書館に行くのを諦め、家に帰って寝たということだ。あと相変わらず『豆腐の角に頭をぶつけて死にたい』。


 今、僕の目の前には、優しそうで美しい人外じみた女性がいる。


「あなたは、自転車にぶつかったことで脳に異変が起きて死んだことになっています。私がそうしました。」

「え、どゆこと?」

「あなたには、今から別の世界で暮らしてもらいます。異世界に転移してもらいます。使命とかは何もないので安心してください。」


 そんな疑問が何も解決しないやりとりの末、僕は異世界へと飛ばされた。今は、転移先のおそらく与えられたのだろう家の中にいる。この世界では人口が極端に少なくなって……とか僕に関係はない。異世界に来てさらに明確に深く、僕の頭の中には『豆腐の角に頭をぶつけて死にたい』という気持ちがある。なので、これからこの世界で一番硬い豆腐を探そうと思う。いや待て、まずはこの世界にちゃんと豆腐はあるのか?大豆は?と疑問が浮かんだ。が、考えても仕方がない。探しに行こう。そう思い、家の扉を開け歩き出す。まずは、食材が売っているところで大豆を探しだ。


 あった。案外簡単に見つかった。ということは、と僕は辺りを見回す。近くに豆腐があった。ちゃんと売っていた。僕は、豆腐の近くにいた人に、


「ここいらで一番硬い豆腐はありますか」


と聞いたが、


「そんなものあるわけない」


と言われた。撃沈。まぁ、予想はしていた。ないなら作ればいい。僕は、さっそく豆腐の作り方を調べようとして……やめた。僕が作り方を知らないなら、豆腐を作っている人を探して、作ってもらえばいいと思ったからだ。僕は豆腐を作りたいのではなく、『豆腐の角に頭をぶつけて死にたい』だけなんだから。


 僕は、さっそく豆腐を売っていた人に作った人のことを尋ね、豆腐職人さんに会いにいった。そして、豆腐職人さんにできるだけ硬い豆腐を作って欲しいと依頼した。が、三日後、できた豆腐を頭にぶつけても死ねなかった。二度目の撃沈。これじゃだめだ。硬さが足りないんだと職人さんに伝えたが、これ以上は無理と言われた。硬い豆腐で何がしたいのか聞かれたので、


「豆腐の角に頭をぶつけて死にたい」


と伝えたら、思いっきり嫌な顔をされて追い出された。


 仕方がないので、もらった豆腐でなんとか死ねないか考えてみた。限りはあるが、なかなかたくさんもらっていたので、なんとか全部なくなる前に死ねるといいなぁ。ということで、まずは硬さを知るために冷奴にして食べてみた。硬すぎて噛めなかった。正しく言うと、数回噛むと顎が疲れて、飲み込めるサイズにするまでにリタイアせずにはいられなかった。こんなに硬い豆腐なら可能性はあるなと、僕は、疲れて閉じなくなった顎を押さえながら喜んだ。


 僕が知っている豆腐の中で、一番硬い豆腐は高野豆腐だ。あれは、たしかカラカラに乾燥させてた覚えがある。というわけで、乾燥させてみた。初めは、失敗するかもと思ったので、小さめに切って豆腐を乾燥させた。乾燥したらさらに硬くなった。頭にぶつけてみると、小石があたったような感じがしたので、これを、小石から岩石にすることが出来れば成功だと思った。ので、早速大きく切って豆腐を乾燥させた。部屋の中で乾燥させるのは難しかったので、ベランダみたいなスペースで乾燥させた。近所の人から、しばらく注目を浴びた。


 数日後、この世界の、というか僕が暮らす国の、なんか偉いっぽい人が、僕を尋ねに来た。要件を聞くと、自殺の手伝いをさせられたと訴えられたらしい。この国では、自殺を手伝うことは重罪なんだそう。まぁ訴えたのはあの豆腐職人だろう。訪ねてきた偉いっぽい人は、凶器がわからないから家を捜索させてくれと言ってきた。まぁ、転移したてで、最低限のもの以外何もないわけだが。捜索して、しばらくすると、偉いっぽい人が、特に何もなかったと言って、玄関から出た。出た所で乾燥させている豆腐が目に入ったらしく、


「あれはなんですか」


と聞いてきた。自殺に繋がる言葉をここで言うのはまずいと思った僕の口から出た言葉は、


「……大きい高野豆腐です」


だった。


 大きい豆腐は乾燥に時間がかかった。一週間ほど乾燥に時間を使ったが、まだ乾燥したりなかった。乾燥させてから八日目くらいに、この世界で戦争が起こった。僕のいる国と、隣の国が戦争をし始めたらしい。なんでいきなり戦争してるんだよ。こっちは豆腐が乾かないんだよ。とぼやいていると、

「一か月飛ばしでこの世界では戦争が起きるのさ。一か月戦争をして、資源が少なくなったら休戦。次の一か月で補給をして、また戦争をするのさ」

と隣に住んでいる人が教えてくれた。あー、独り言聞いていたんデスネ。とまぁそんなことはどうでもいい。なんで今戦争なんだよ。せめて僕が豆腐の角に頭をぶつけて死んでからにして欲しかった。と、今度は心の中で思った。


 戦争が始まって、十日目くらいに僕の豆腐は出来上がった。幸い、ここまで戦争の火はこなかった。できあがった豆腐の表面を叩くと、コンコンと言う音が鳴り、軽く叩いたはずなのに手が痛くなった。硬さは申し分ない。

 そして、ついに、僕が死ねる時がやってきた。家の中の家具を外に出し、代わりに巨大高野豆腐をセットした。後は角めがけて頭突きをすれば―。


ピーンポーン


 ここで来客は聞いてない!


 扉を開けると、そこにいたのは、以前ここに訪ねてきた偉いっぽい人だった。偉いっぽい人は、僕が住んでいる街に用事があったので、ついでに豆腐を見ようとして来たらしい。ところが豆腐がなかったので、インターホンを押したらしい。いや、知らないし、じゃまをするでない。偉いっぽいひとは、扉を開けるとすぐそこにある豆腐に気づき、勝手に触った。おい、やめろって。豆腐に触った後、僕に向かってすごい勢いで歩いてきてこう言った。


「こんな硬い高野豆腐は初めて見た。まるで岩石のようじゃないか。頼む、これを少しいただけないだろうか」


嫌ですけど⁉


 こんなに時間をかけて一生懸命作ったものを、なんであげないといけないんだ。もう少しで目的が達成できるというのに。僕はとても嫌だったが、偉いっぽい人がすごくすごくうっとおしかったので、好きなだけ持って行かせることにした。もう二度と来ないでくれよ~。偉いっぽい人が帰った後は、乾燥した豆腐はひと切れも残っていなかった。そういえば、なにか試行錯誤して、少しを持って帰ろうとしていたような気もするが、そこらへんにある刃物では豆腐に刃がたたなかったようだ。それにしたって全部持っていくとかあんまりだよ。あいつ何者だよ。


 仕方がないので、僕はまた乾燥から始めた。幸い、後一回分くらいは乾燥してない豆腐が残っていた。乾燥が終わったくらいに、僕の耳に入ってきた情報は『豆腐兵器』の話だった。まさかあの豆腐が軍事利用されるだなんて。でもようやく、乾燥し終わった豆腐がここにある。目的は果たせそうだ。乾燥させている間、ここの町まで戦火がきて冷や冷やしていた。無事に乾燥してくれてよかった。

 僕は今度こそと豆腐をセットし、角めがけて頭突きをした。


           ブラックアウト


 彼の作った『豆腐兵器』は、角の破壊能力に加え、直線部分に切れ味をもたせたことにより、凶悪化した。兵器として利用していく中で、その製法のしやすさにより、この国だけでなく、この世界のあらゆる国に製法が漏れ、あらゆる国が使用する兵器となった。こうして世界は豆腐でつぶれて破壊されたのだった。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

今回、久しぶりに小説を書いたので、リハビリがてら思いついた言葉から書いてみました。

とんでも展開って面白いですよね。楽しく書いたので、少しでも楽しさを感じていただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ