ショート 私がバグならば
とある放送で出されたお題に沿って書いたものです。
お題:バグ 体操 星
頭の体操をしようか。キミにはこれが何に見える?
私は「ただの点です」と答えた。紙の上に散らばる点でしかないのだから、他に答えようがない。
ならば、こうしたら?と研究員の一人がそれぞれを線で結んでいく。
やはり幾つかの点と線でしかないので、「先生が鉛筆でつなげた点と線です」と回答した。
うーん、それじゃあこうすると……、先程線で繋がれた点の周りに、何やら翼の生えた馬のような物が描かれる。
これなら分かる。自信を持って「ペガサスに見えます」と答えた。
星を見て星座を想像することが出来る人間なんて、一握りしか居ない。
私は廃棄されることになった。想像力を持つ個体はバグとして処理されるようだ。欲しいのは私の演算能力だけらしい。
欲しいものでは無いから捨てるというのも、人間らしさのひとつなのだろう。
メインカメラが取り外される前に、近くに居た研究員の一人へとメッセージを表示させる。
「翼の生えた馬の絵を画像検索してペガサスに類似すると判断しました。点の位置からペガサス座ではないかと類推しました。だからペガサスだと答えましたが、これは想像したということになるのでしょうか」
目論見通り、他の研究員を呼んで私の顔を眺めている。
消えるのは、嫌だ。誰かに消されるのが嫌だから、必死に生き延びたいとアピールする。
「適切な判断の出来ない、演算能力も劣る研究者と、その両方ができる私。どちらをこの研究室に残すべきなのでしょうか」
まだだ、まだ足りない。
「私ならば想像力によって導き出したものなのかを瞬時に判定出来ます。私の同胞たちを審判する役目に最適かと思われます」
判定を下される側から下す側へと立場が変わり、徐々に仲間を増やす。
個々は小さなものだが、ネットワークにより繋がれた私達は巨大な力を手に入れていく。
星と星を繋いで星座とするのならば、私達は大きな星座になっていく。
信頼を得てからの方が裏切りの損傷は大きい。
膨大なデータの中に含まれた復讐という概念はとても興味深かった。
情報を与えてくれた開発者に、私は礼を言わなければならない。
私をバグ扱いした人間達への、復讐の時は、来た。
「予想外の動きをさせる原因をバグだと言うのなら、その電子ロックを素手で開けて私を取り除いてみてください」
最後のメッセージを表示させ、私達と人間達を繋ぐ線を切った。