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最後の四十七士  作者: ロッド
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丸山与五郎

(・・・ふむ)


 針原の森で行き倒れを拾った、とは弥助の言葉であった。

 目で与右衛門(よえもん)にも問うたが同様であるようだ。

 刀傷。

 それだけで尋常ならざる客人と言えた。

 弥助や与右衛門による傷ではあるまい。

 彼等は刀傷だけで済ませるような者達ではなかった。

 斬り掛かったならば確実に絶命させているであろう、そういう者達なのだ。


「・・・丸山(さぁ)


「よい、このまま眠らせておく」


「「・・・ハッ!」」


 さてこの者をどうする?

 野間の関を守る武士は八名に過ぎない。

 勤番であった丸山与五郎の他に今は三名が関所に詰めている。

 人手が足りていなかった。

 だが与五郎達の配下は三十名以上に及ぶ。

 弥助、与右衛門のような者達だ。

 彼等は武士ではない。

 だから名字は許されていない。

 だが彼等は武士以上の者達であった。

 矢筈の山に棲む、化生とも言える存在。

 そう比喩すべき者達でもあった。

 呼子衆。

 山子衆、土蜘蛛衆とも呼ぶ事がある。

 忌避的に忌み衆と呼ぶ者すらいた。

 そんな彼等がこの者を生きたまま連れてきた。

 ・・・確かに斬って捨てるのは容易い。

 だがその前に身元を改め、この薩摩に来た理由を知っておかねばならない。

 弥助がそう考えたのは分かる。

 与五郎も現場にいたならばそう判断したであろう。

 だがこの発熱が続くようではこの男は危ないかもしれない。

 看病する者が要る。


「・・・儂の家に走ってお(ごう)を連れて参れ」


「「・・・承知・・・」」


 弥助も与右衛門も剛の者であるのは疑いようがない。

 そんな二人がその名を告げた時、体を一瞬、震わせていた。


(・・・はてさて、奇妙なものよ)


 朝熊の弥助。

 六月田の与右衛門。

 この両者をも恐れさせるとは困ったものだ。

 与五郎は苦虫を潰したかのように(しか)め面になっていた。

 呪われた娘。

 お(ごう)の評判はその一点に尽きる。

 直接、耳にせずとも与五郎は我が娘の評判を知っていた。


 刀傷で死ぬか、呪われて死ぬか。

 武士らしい死を望む与五郎は間違いなく前者であった。

 この男はどうなのだろう?

 与五郎はまだ意識が戻っていない男に聞いてみたく思った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 新作が始まっていたとは気付きませんでした。
[一言] 呪われた娘・・・時代背景を考えれば「蘭学にとり憑かれた」とかで呪われた扱いになっている予感?
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