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【アニメ化企画進行中】バッドエンド目前のヒロインに転生した私、 今世では恋愛するつもりがチートな兄が離してくれません!?  作者: 琴子
第十六章 二度目の学園祭編

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二度目の学園祭 6



 挨拶も終わったところで、早速アレクシアさんの指導が開始することとなった。


「最初に全員の演技を見たいわ。台本を持ったままで大丈夫だから、通しでやってみて」

「分かりました!」


 アレクシアさんの指示に従い、ステージの上で通し練習の準備をしていく。


 誰もが一生懸命に取り組んでいることで、なんと既に全員セリフは頭に入っていた。


「──ロミオ、愛しているわ」

「ああ、俺もだ。もう二度と離しはしない」


 やがて最後のシーン──無事にロミオとジュリエットが目を覚まし、自分達の愚かさに気付いた両親達のもとへ戻って関係を認めてもらい、幸せになる場面までを演じきった。


「…………」


 今回のメンバー以外の誰かに見てもらうのは初めてで、ラストの体勢、吉田の腕の中でドキドキしながらアレクシアさんの反応を待つ。


 すると静かな体育館内には拍手の音と、ずずっと鼻をすする音が響いた。


「ぐすっ……とても素敵だったわ……」


 どうやら感動してくれたらしく、ハンカチを目元にあてて泣きながら手を叩いている。


 ほっと安堵しながら舞台から降りると、アレクシアさんは胸の前で手を組んだ。


「素敵な演劇を見せてくれてありがとう。まずストーリーだけれど、見た人すべてが幸せで温かな気持ちなれるような、素晴らしいものだったわ」

「あ、ありがとうございます……!」


 アレクシアさんに褒めてもらえると、より自信になって嬉しくなる。それからは一人一人を褒めつつ「もっとこうすると良くなる」というコメントをしてくれた。


 私からすれば完璧だと思えていた私と吉田以外にも「なるほど」となるような的確で分かりやすいアドバイスをしていて、流石だと感動してしまう。


「ユリウス・ウェインライトも素晴らしかったわ。本当に何でもできてしまう嫌味な男ね」

「ありがとうございます」

「特に求婚を断られるシーンのショックな表情は見もの……こほん、名演技だったわ」

「あはは、そこはかなり感情移入してますからね」


 アレクシアさんの言葉に対し、ユリウスは楽しげに笑う。


 私もあのシーンのユリウスの演技は迫真すぎて、毎回寝込みそうなくらい心が痛んでいる。


「……でも、あんな表情ができるようになったのね」


 そう言ったアレクシアさんの表情は、どこか優しさが感じられるものだった。ユリウスも「お蔭様で」と眉尻を下げ、穏やかな笑みを浮かべている。


「みんなそれぞれの練習に戻って大丈夫よ」


 アレクシアさんからのアドバイスをもらったみんなは口々にお礼を言い、練習に戻っていく。


 そんな中、その場には私と吉田だけが立ち尽くしていた。


「…………」

「…………」


 そう、私と吉田だけがまだ呼ばれていないのだ。


 これは長くなるからだと察し冷や汗をかきながら、アレクシアさんを見つめた。


「二人ともたくさんのセリフを覚えて、とても努力しているのは伝わってきました。短期間でここまで形にしたのは素晴らしいわ」

「あ、ありがとうございます……」

「でも、あなた方が目指しているのはもっと上でしょう?」

「はい! もっと上手くなりたいです」


 大きな声で返事をする私の隣で、吉田も深く頷いている。


 アレクシアさんは柔らかく目を細め「分かったわ」と微笑んでくれた。


「二人に共通しているのは硬さね。お芝居感も強いし余裕のなさが透けていて、見ているこちらが緊張したり、身構えてしまったりするのは良くないわ」

「た、確かに……!」


 上手くやろう、失敗しないようにしようという意識が強すぎるのだろう。


 私達に足りないのは「自然さ」なのかもしれない。


「それとマックスは恋愛への解像度の低さ、照れがまだあるのが原因でしょうね」

「その自覚はある。どうすればいい?」


 異性の名前を呼んだこともないと言っていた吉田が、甘い愛の言葉のセリフを言ったり、演技でも私を抱きしめたりしているだけでも、とてつもなく頑張ってくれている。


 これ以上を求めるのは申し訳ないものの、吉田も頑張りたいと思ってくれていることに私は内心いたく胸を打たれていた。


「まずは恋愛についてもっと学ぶべきね。今から学園祭までに恋愛をするなんていうのは無理だし、ロマンス小説や演劇を見て学ぶしかないわ」

「……分かった」


 吉田とロマンス小説なんて対照的な存在すぎて、読んでいる姿が想像つかない。


 けれど勉強のためなのだし、私も精一杯応援したい。


「家にたくさんあるから貸すよ! おすすめもあるんだ」

「すまない、頼む」


 コソコソと集めていたロマンス小説達が、吉田の糧となる日が来るとは思わなかった。できればこれを機に、ぜひハマってほしい。


「あとは照れね。もうこれは慣れです。残りの期間を考えると、もうショック療法しかないわ」

「不穏すぎるんだが」


 アレクシアさんはさらっと恐ろしいことを言っており、吉田の顔には「嫌な予感がする」と分かりやすく書いてある。


「女性とたくさん触れ合って、多少のことに対して照れないようになればいいのよ」

「両親の前でもう一度言ってみろ」


 吉田のツッコミが冴え渡る中、アレクシアさんは真剣な顔をしていて、どうやら本気らしい。


 吉田が家に女子(私)を招いたことに対して、ショックを受けていたアレクシアさんはどこへ行ってしまったのだろうか。


「こいつは演技のこととなると、見境がなくなるんだ」

「な、なるほど……」


 困惑していると、こそっと吉田に耳打ちをされた。


 方法としてはぶっ飛んでいるものの、耐性をつけるというのは一応、理にかなっている。


「でも一体、誰と触れ合うんですか……?」

「週末、そういうお店に行きましょう。あてがあります」

「ええっ」

「正気か?」


 まさかのまさかで、玄人のお店に行くつもりらしい。


 この世界にキャバクラはないようだったけれど、若い女性達が接客してくれる酒場は結構あると聞いたことがあった。


「とはいえ、結婚前のマックスが若い女性と触れ合うなんて不純です。なので、女装をした老いた男性のお店に行こうと思います」

「お前は自分が何を言っているか本当に分かっているのか?」


 配慮をしすぎた結果、もはや目的から遠ざかるどころか掠ってすらいない。


 これではただ吉田が癖の強い店に連れて行かれるだけだ。


 ショック療法といえども、違うショックを受けることになりそうだ。そもそも、何故そんな特殊すぎる店にあてがあるのか不思議で仕方ない。


 このままでは演技の幅が広がることはないと思った私は、げんなりしている吉田とアレクシアさんの間に庇うように立った。


「待ってください! ピュアすぎる吉田は言わば真っ白なキャンバス……何色にも染められてしまう存在なんです。いきなりそんな場所に行って、性癖が歪んでしまったらどうするんですか……!?」

「お前は何の心配をしているんだ」

「た、確かにそうね……さすがレーネ、そこまでは思い至らなかったわ」

「そこは納得するのか」


 なんとかショック療法は中止になり、吉田の性癖は守られた。


「レーネに関しては、しっかり演じなきゃっていう焦りが余裕のなさを生んでいると思うの」

「た、確かに……!」

「自然に演技をするには、普段の自分だと思うくらいがいいの」

「それって、どうすればいいんでしょう……?」

「私は師匠から演じる役と同じ行動をしてみるのも効果的だと言われたわ」


 ジュリエットの行動を真似してみたり、劇中の行動を実際に体験したりするのも良いという。


「大聖堂に行って、結婚式のシーンを再現してみるのもいいんじゃないかしら。」

「なるほど……! ありがとうございます!」


 今の私は「上手くジュリエットを演じる」ことばかり考えていて「ジュリエットになりきる」という点については、さっぱりだったように思う。


 そして全ては「焦り」から来ていたし、今後はジュリエットの行動、生き方、思いをもっと深掘りして汲み取っていきたい。


「マックスもロミオの行動をとってみるべきね」

「まあ、そうだな。」

「レーネの家に忍び込んで密会なさい。ついでにロマンス小説を借りれば一石二鳥よ」

「……俺がおかしいのかと思えてきた」


 次々と斬新な練習方法を提案され、本当にこれで演技が上手くなるのかと気になるところだけれど、今は藁にも縋る思いでやれることは全てやってみた方がいいと、なんとか吉田を説得することができた。


 普段なら「それでも際限はあるだろう」と言いそうなものなのに、アレクシアさんのペースに飲まれすぎた吉田、確実に判断力が落ちてきている。


 そして今夜、吉田が我が家に忍び込み、ロマンス小説を読むこととなった。文章にすると本当に意味が分からないけれど、私もできる限りのことはしようと思う。



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【公爵様、悪妻の私はもう放っておいてください】

新連載もよろしくお願いします!

― 新着の感想 ―
昼休み、笑いを堪えながら読んでいたのに アレクシアさんの 「なので、女装をした老いた男性のお店に行こうと思います」 でもうだめでした。 職場で読んではいけない。
年老いた男性が女装している店。 ………むしろ私が行ってみたいです。
今回人生初のコメント記入です アレクシアさん相変わらず面白過ぎる。 吉田のツッコミスキルで面白さ倍増!! あまりに面白過ぎて、感想を書いてしまいました。
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