交流会・事件続きの魔の森編 11
本日書籍7巻とコミックス5巻が発売です!
「…………っ」
「この先も、レーネの側で変わっていけたらと思ってる」
ユリウスが愛おしくて仕方なくて、胸の中に飛び込んできつくきつく抱きしめた。
誰からも羨まれて、誰よりも完璧に見えるユリウスも、たくさんのものを抱えている。
出会った頃から時折、寂しげな顔や傷付いたような顔をすることにも気付いていた。私にできることなんて限られているけれど、その全てを取り払いたいと強く思う。
「だ、だいすき……」
「ごめんね、泣かせちゃった」
「ほんとうに、好きだから」
「……うん、ありがとう」
嬉しさとか愛しさとか切なさでぐちゃぐちゃになって、涙が止まらなくなる。
良い言葉なんて何も思いつかないけれど、さっき我慢した分まで「大好き」を伝えていく。
「好きだよ、本当に」
薄く笑ったユリウスは指先で私の涙を拭い、綺麗な弧を描いた唇が近付いてくる。
ドキドキしてしまいながらきつく目を閉じたところで、ユリウスの「あ」という声が聞こえた。
「危ない、キスするところだった」
「……へ?」
「俺からはしないって言ったのに」
そう言われてようやく、先日の「私からキスしてほしい」という件だと理解した。
完全に今の流れはするだろうと心の準備もしていたため、もどかしい気持ちになってしまう。
そんな私の心のうちを見透かしたらしく、ユリウスは満足げに微笑む。
「したかった?」
「……今のは流石にそういう空気だったから」
「そうだね。いいよ、しよっか」
「えっ──ん、う」
いきなり視界がユリウスでいっぱいになったと思うと、唇が塞がれていた。
今度はされるとは思っていなかったせいで、戸惑いで身を捩らせたものの、両腕をしっかりと掴まれていて逃げることなんてできそうにない。
いつもよりもずっと長いキスに翻弄され、ようやく解放された私は自身の唇を両手で覆った。
「な、なんで……」
「十分レーネの愛情は伝わってきて嬉しかったから、やっぱり駆け引きなんていらなかったなって。ごめんね」
「も、もう知らない!」
「そう? でも俺はレーネが好きだから、しばらく我慢してた分もう一回したいな」
結局、ユリウスに振り回されっぱなしだと思いつつ、本当は私も嬉しかったなんて、言えるはずがない。
それからはユリウスにしっかりと抱きしめられたまま、他愛のない話をした。
「でも、なんか色々とあいつのお蔭みたいで嫌だな」
「ふふ」
自身の変化について顧みるきっかけがウィンさんというのは解せないらしく、ユリウスは少し拗ねた顔をしている。
ウィンさんが知ったら喜びそうだと思いつつ、睡魔が襲ってくるのを感じた。
「レーネのベッドまで運ぶから、このまま眠っていいよ」
「ありがとう」
どうしようもなく瞼が重たくなり、お言葉に甘えて目を閉じる。大好きなユリウスの甘い香りは落ち着く上に、体温は温かくて心地良くて、気を緩めれば一瞬で眠れそうだった。
魔法に関しては成長できたけれど、まだまだ体力がないことを実感する。交流会が終わったら、日課にランニングを入れるのも良いかもしれない。
そんなことを考えているうちに、だんだんと頭がぼんやりしていく。きっと明日もなかなか起きられず、ユリウスに起こしてもらうことになるに違いない。
「……かわいい」
小さく笑ったユリウスによって髪に手を差し入れられ、親指で頬を撫でられているのが分かる。
その手つきがあまりにも優しくて、口元が緩んだ。
「レーネにはずっと笑顔で、幸せでいてほしいな」
もう私が眠っていると思っているらしく、ユリウスはぽつりと呟く。
「──俺も一生隠し通すから、何も思い出さないでいてね」
そしてひどく切実な声で紡がれた言葉の意味を理解できないまま、私は夢の中に落ちていった。
紙・電子ともに書籍7巻とコミックス5巻が発売です!
キスシーンやユリウスが口で手袋を外す挿絵(趣味)など、くまのみ先生による神挿絵が最高すぎて心臓大爆発なのでぜひ!!!!本当に!!!!!挿絵すごいので……
私は1000000回気絶しました
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コミックスの書き下ろし小説は「レーネと吉田と王子とヴィリーが酒屋で初めてのバイトをする話」と書き下ろし漫画は「吉田画伯のイラストに関するめちゃくちゃ面白い話(七星先生オリジナル)(神)」です!
どちらも胸を張って最高だと言えるくらい面白くてドキドキたくさんなので、ご購入&応援よろしくお願いします!♡




