交流会・事件続きの魔の森編 7
そして、それから五分後。
私達四人は例の金髪美形──開会式でユリウスを睨んでいた男子生徒と対峙していた。
「え? ……え?」
本来ならば残るパーフェクト学園の十一人を倒して回り、ハートフル学園側の味方と再会し、ラスボスバトルに臨むというのが世の常だろう。
もはやこれは打ち切りが決まり、最速で畳んだ杜撰なストーリー展開レベルだ。けれどこちらとしてはさっさと謎のバトルロイヤルを終わらせ、平和に魔蝶の捕獲をしたい。
「え……?」
そのため、王子に金髪美形の魔力を探ってもらってみんなで後を追い、今に至る。
先ほど去って行った方向には人の気配が一人分しかなく、すぐに特定することができた。
「えっ? え???」
そしてずっと「え?」を繰り返している金髪美形もまた、この展開は予想外だったらしい。
自分の出番はもっと後だと思っていたに違いない。きっとこの舞台を整えるためにかなりの準備をしてきたんだろうけど、許してほしい。
そんな中、ユリウスは迷いなく前へ出て、金髪美形へと近付いていく。
「俺に用があるって?」
「……あ、ああ」
Sランクの美形同士が対峙する姿は、独特な迫力がある。
邪魔はしない方がいいだろうと、ヴィリーと王子と共に少し離れた場所から見守ることにした。
「久しぶりだな、ウェインライト。まあ、お前は僕ごときを覚えてくれてはいないだろうがな」
金髪美形はまるで自嘲するように、ふっと形の良い唇の端を釣り上げた。
めちゃくちゃ偉そうな態度なのに、言っていることはものすごく低姿勢だ。どうやら本当にユリウスの方は彼を知らないらしく、他人のようだった。
「僕はウィン・ナースモア。パーフェクト学園の三年だ」
どんなに当人が格好良くても非常にシリアスな展開でも、ダサい学園名を名乗るだけで決まらないのが切ない。
同時にふと、彼の名前に引っ掛かりを覚えた。
「ウィン・ナースモア……ウィン……あっ、ウインナー!?」
そして五人の生徒が倒れていた現場にあった、ダイイングメッセージを思い出す。
「うわ、そういうことだったのか」
「…………」
ヴィリーと王子も納得した、すっきりした表情を浮かべている。きっとあの男子生徒はウィンさんの顔や名前を知っており、何らかの形で黒幕だということにも気付き、私達に伝えようとしてくれていたのだ。
名前も知らない彼、実は誰よりも有能な働きをしていた。
「それなのに私達は頑張った彼のことを食いしん坊だなんて言って……すごく酷いことを……」
「でもさ、あれはしゃーないって。どっからどう見てもウインナーだったもんな」
「うん」
王子もヴィリーも仕方ないという顔をしており、私もやっぱりあれは仕方なかったと思った。
「僕はずっとお前を倒す機会を待っていたんだ」
「なんで?」
「今の腑抜けたお前は見ていられないからだ! 僕が唯一ライバルと認めたお前がこんな……」
しょうもない謎が解けてすっきりする中、ウィンさんとユリウスのシリアス展開は続いていた。
「腑抜け?」
「ああ。孤高の存在だった──友人も選ばれた数少ないSランクの良家の者ばかりで、誰も寄せ付けない冷酷なオーラを放っていたユリウス・ウェインライトが、シスコンなどと呼ばれて周りと馴れ合って……!」
ここまで聞いて彼は過去のユリウスに対し、幻想を抱いているのだと悟った。相当な怒りを抱えているらしく、ふるふると両手を握りしめた後、何故かびしっと私を指差す。
「しかも美人で優秀な方じゃなく、頭の悪そうなちんちくりんの方じゃないか!」
「ちょっと」
無関係の私は見守っていようと思ったけれど、失礼すぎて黙っていられなくなる。
側にいる友人達も同じらしく「おい、待てよ!」と声を上げてくれるヴィリーに胸を打たれた。
「お前……いくらレーネがバカであんぽんたんで寸胴だからってそれはないだろ!」
「ねえ、相手もそこまで言ってないよ」
とにかくウィンさんはユリウスが周りと馴れ合わず、冷淡なままでいてほしかったらしい。そんなこと、周りが決めることでも押し付けることでもないというのに。
あまりにも勝手な物言いに、腹が立ってくる。それでも当人のユリウスは表情を変えず、ウィンさんを見つめていた。
どうやらユリウス本人は、あまり怒ってはいないらしい。
「俺が目的なのに、なんで他の生徒まで巻き込んだわけ?」
「ここまでの騒ぎにしなければ、お前はまともに僕の相手などしようとしないだろう?」
とにかくウィンさんは、ユリウスと二人で戦う場を設けたかったらしい。ユリウスも周りもみんな迷惑な話だけれど、ルール違反はしていないというのがいまいち責めにくい。
「まあ、結果としては正しかったと思うよ」
「……どういう意味だ?」
「今の俺、かなり怒ってるから。さっさとやろうよ」
前言撤回、ものすごく怒っていた。
笑顔でそう言ってのけたユリウスは、見ているだけの私ですらぞくっとするほどの圧がある。
それを一身に受けたウィンさんも一瞬たじろぐ様子を見せたものの、すぐにまた強気な笑みを浮かべた。
「お前に仲間を想う気持ちなんてあるのか?」
「まさか」
そしてユリウスが手のひらをウィンさんに向けた次の瞬間、耳をつんざくような爆発音と共に、轟々と燃える炎と巨大な氷の塊がぶつかり合っていた。
「俺の一番大切なかわいいレーネを悪く言ったからだよ」
こんなの、ときめくなという方が無理がある。




