交流会・事件続きの魔の森編 6
本日から渋谷TSUTAYAさまでチート兄の店頭販売が開始です!私も早速担当編集さんといってきました!
どれも最高に可愛いので、お近くにお住まいの方はぜひ♪
新商品は全て先行販売なので、いずれTOブックスオンラインストアで販売されます(⸝⸝◜~◝⸝⸝)
胸を打たれつつ、ごくりと息を呑んで緊張しながら真っ赤な文字を目で辿っていく。
「ウインナー……?」
そして読み取れたのが、それだった。
滲んでいること、字が震えていることもあって、どの角度から見てもそうとしか読み取れない。
そしてそれは私だけでなく、この場にいる全員が同じようだった。どういう意味だろうと必死に考えても、ウインナーはウインナーでしかない。
「セオドア様、どう思います……?」
「…………」
頭脳明晰な王子でもやはり分からないらしく、軽く首を傾げている。クール系の美しい容姿ながら戦闘能力も非常に高い王子が時折する可愛らしい仕草、殺傷能力が高すぎる。
王子はギャップ萌えの塊だと、常に思う。
「ヴィリーはどう思う?」
「俺のは最後に食べたかった物なんじゃないかなと」
「この状況でそれを書いたなら、よほどの食いしん坊だよ」
「なんか俺も食いたくなってきたな。腹減ってきた」
確かにもう午後一時を過ぎているけれど、昼食はまだだった。腹が減ってはと言うし、この先にいる二人組を倒した後、しっかり食事をすることにする。
「ひとまずウインナーって言葉を頭に入れつつ、行こう」
「俺は腹に入れたいけどな」
「ちょっと上手いこと言うのやめて」
そんなこんなで再び二人組を追っていき、ユリウスとヴィリーが不意を突いて攻撃したことで、あっという間に捕まえることができた。
そして二年生の男子生徒らしい彼らは現在、手足を縛って床に転がされている。
「離せ! ってお前、ユリウス・ウェインライト……!?」
なぜか二人はユリウスを見て、ひどく驚いた顔をした。
「あれ、俺のこと知ってるんだ?」
「…………」
「なんでこんなことをしてるのか教えてくれない?」
けれど唇を真横に引き結び、黙秘を貫いている。
ユリウスが近くで見下ろしながら尋ねても、男子生徒達は目線を逸らし、口を噤んだまま。正直に話す気はないようで、ここは諦めるしかない──と思ったけれど。
「今ここでできるのは水責めかな? ああ、せっかくの森だし虫責めなんかもできるか」
「ひっ」
眩しい笑顔のユリウスに諦める様子はなく、その姿は学生どころか堅気にすら見えない。なんというか、こうして他人を詰めることに慣れている感じがする。
「あの、ユリウスさん、それはちょっと……」
「いやだな、冗談だよ」
つい味方ながら止めに入ってしまったものの、全く冗談には聞こえない。
「わ、分かった! 話す! 話させてくれ!」
「良かった」
それは彼らも同じだったらしく、ユリウスの圧に負けて正直に話してくれるという。
私の側ではヴィリーが「あの人とは絶対に敵になりたくないよな」とこぼしており、王子も無言で頷いている。私も何度も首を縦に振っておいた。
「それで、ハートフル学園の生徒を襲っている目的は?」
「あんただよ」
「……へえ?」
「ユリウス・ウェインライトを潰──っ」
そこまで言いかけた瞬間、視界の端から何かが飛んできたかと思うと、話をしていた男子生徒が真っ赤に染まり、ぐったりとして動かなくなった。
隣で転がっていたもう一人も同様に、意識を失っている。
「えっ? い、一体何が……」
突然のことに驚きを隠せないまま、何かが飛んできた方角へと視線を向けると、森の奥に背を向けて消えていく人影が見えた。最後に一瞬だけ、きらっと眩しい金色が見えた。
「例の薬で強制的に眠らされたみたいだ」
咄嗟に避けたユリウスに被害はなかったものの、彼らは既にすやすやと眠っている。先ほど見えた人物が遠くから彼らに、液体の詰まった銃弾を放ったようだった。
ユリウスは「油断した」と苛立った様子を見せている。
「そんな……捕虜となって口を割りかけた仲間を黙らせるって展開、漫画以外にもあるんだ……」
しかも核心に迫るセリフを言いかけたものすごく良いタイミングで、見計らっていたのかと突っ込みたくなる。続きが気になりすぎて、漫画なら間違いなく課金していただろう。
「でも、あいつらの目的は俺みたいだ」
確かに男子生徒ははっきりと「あんた」「ユリウス・ウェインライト」と言っていた。
しかも「潰」というどう考えても物騒な言葉まで言いかけていたことを鑑みると、相手はユリウスに強い恨みを持っているのかもしれない。
「ユリウス先輩、パーフェクト学園に何かしたんすか?」
「さあ? したのかも」
ヴィリーの問いに対して他人事のように答えたユリウスには、全く心当たりがないようだった。
「…………」
だがしかし、私にはめちゃくちゃ思い当たる節がある。
先ほど見えた金髪、そして開会式でユリウスを睨んでいた美形はどう考えても同一人物で、この件に関わっているとしか思えない。ていうか絶対あの人が黒幕だろう。
漫画など物語ではこれらが伏線として散りばめられ、最後にラスボスとして現れた時に「あの時の……!」となるんだろうけど、これで気付くなというのは無理がある。
「あの、セオドア様」
「…………?」
どうしようかと悩んだ末、私は王子に「お願いがあるんですが」と声をかけた。




