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交流会・事件続きの魔の森編 4



「……え」


 間違いなくこれらの矢は、私達に向かって飛んできた。


 鏃はかなり鋭利で、こんなものが刺されば無事では済まないだろう。その上、その先端は紫色に変色している。呆然としている中、王子は矢を手に取ると、エメラルドの目を細めた。


「……毒矢、触れたら半日は指も動かせない」

「ええっ」


 これが身体に刺さった時のことを想像するだけで、ぞわりと鳥肌が立つ。


「へー、セオドア、よく分かったな」

「…………」

「そっか、王族って毒について学んだりするのか。すげえ」


 最初に突っ込むべきはそこではないと、心から思う。


「だ、誰がこんなこと……」


 参加者である生徒が生徒を襲うなんて、どう考えても普通ではない。


 動揺してしまう中、ユリウスはひょいと私の身体を抱き上げ、お姫様抱っこの状態になる。


「わっ!? な、なんでいきなり──」

「舌を噛むから黙っててね。二人もついてきて」


 そして次の瞬間、ユリウスは思い切り地面を蹴った。


 足に風魔法を纏って走ることにより、新幹線かと思うほどの速さで森の中を駆けていく。ユリウスの後を王子とヴィリーもついてきており、流石という言葉しか出てこない。


 けれどいきなりどうしたのだろうと思っていると、背後から何かが飛んでくるのが見えた。


「!??!???!??」


 それらが巨大で鋭利な氷の塊や火を纏った矢だと気付いた瞬間、叫び出しそうになった。


 その上、私達を追いかけながら攻撃魔法を放っているのはなんとパーフェクト学園の生徒達で、ぱっと見で分かるだけでも六人ほどいる。


 訳の分からない状況に、私はただ全力でユリウスにしがみつくことしかできない。


「レーネに抱きつかれるの、嬉しいな」


「そんなことを言ってる場合ではないのでは……!?」

「あはは。でも少し片手を使うから、しっかり捕まってて」


 ユリウスは軽い調子でそう言うと、私を左腕だけで抱き上げたまま振り向いた。


 そして自由になった右手を追っ手に向けると、氷でたくさんの剣を空中に作り出し、一斉にそれらを放った。まるでゲームや漫画のような技に感動したのも束の間、我に返る。


 それらは見事に全ての追っ手に命中し、バッタバタと倒れていったからだ。


「いやあれこそ死なない? 殺してない? 大丈夫?」

「レーネが怪我をするかもしれない、あれだけの攻撃をしてきたんだから死刑だよ」


 ユリウスはさも当然という顔で綺麗に口角を上げると、再び私を両手で抱きしめ、魔の森の中を猛スピードで駆け抜けていった。



 ◇◇◇



 それから三十分後の今、私達は森の南側を歩いていた。


 あの後も二人組の別の追っ手が現れたけれど、王子とヴィリーが倒してくれて今に至る。やはり相手もSランクやAランクの生徒ばかりで、私なんて秒でやられてしまいそうだ。


「……つまりパーフェクト学園は魔蝶の捕獲じゃなくて、私達を倒そうとしてるってこと?」

「そうだね。目的は分からないけど、ハートフル学園の生徒を狙っているのは間違いない」


 実はここに来るまでにも、先程のように赤い液体まみれで意識を失ったハートフル学園の生徒を何人も見かけた。


 魔法で倒した後、あの赤い液体をかけて眠らせているようだった。強い催眠効果だけでなく、魔物が寄ってこないようにする効果もあるみたいだとか。とても大切な気遣いだ。


「先生方が止めたりとかは?」

「ルール違反ではないからね。過去には他チームを倒して蝶を奪った末、優勝したチームもあるくらいだし。学園側も対人戦の良い練習、くらいに思ってるんじゃないかな」


 ユリウスはなんてことないように言ったけれど、どうかしていると思う。


 開会式で掲げられていた「正々堂々と切磋琢磨する」的なスローガン、大嘘にも程がある。


「とにかくパーフェクト学園側は全員、敵だと思った方がいいだろうね」

「そ、そんな……」


 本当に待ってほしい。もはや競技自体が別物になっている気がしてならない。


「楽しい蝶々狩りがバトルロイヤルになることとかある?」


 しかもまだ競技終了まで、あと五時間以上も残っている。


 その間ずっとドンドンバンバン魔法を使って襲われ続けると思うと、気が気ではない。


「なんかワクワクしてきたな! 相手がその気ならこっちもやってやろうぜ」


 一方、ヴィリーは楽しげで、かなりやる気に満ち溢れているようだった。とはいえ、向こうの様子を見る限り、話せば分かるという空気ではなかったように思う。


「まあ、さっさとパーフェクト学園の十六人全員を戦闘不能にしようか。そうしたらさっきまでみたいに魔蝶を捕まえられるから、何の問題もないよ」

「…………」


 ユリウスの言葉に対し、王子も静かに同意している。けれど私もこの状況では、相手を倒すしかないと理解していた。やらなければやられてしまうに違いない。


 それにこの三人が相手から逃げる道を選ぶはずがないし、彼らほどの実力者なら相手を倒す方が手っ取り早いはず。これまでに倒されたハートフル学園の生徒達の敵討ちにもなるだろう。


「つーか相手が全滅したら蝶を捕まえなくても勝ちだけどな、ははっ」

「本当にもう競技変わってない?」


 そしてどちらかが全滅するまで終わらない、恐ろしい戦いが幕を開けようとしていた。



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どうぞよろしくお願いします!

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【公爵様、悪妻の私はもう放っておいてください】

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