交流会・事件続きの魔の森編 2
なんと本日8月17日のみ!!!!
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1日限りなのでぜひぜひ読んでみてくださいね(そして続きも今後ともよろしくお願いします)
「ねえ、俺以外の男のことあんまり褒めないでくれない?」
「ぷはっ……褒めたつもりはなく、事実を並べただけで」
「そっちの方がタチ悪いんだけど」
拗ねた顔をするユリウスはじとっとした目で私を見つめると、頬をむにっと摘んだ。
「とにかくそんな奴は知らないし、もう二度とそいつのことは視界に入れなくていいよ」
「ええ……」
「俺の顔と身体じゃ不満?」
「そんなことは一言も言っていないんですが」
思わぬ方向へ話が吹っ飛んでしまったものの、とにかく身の回りには気を付けるよう伝えると、ユリウスは「分かった」と言ってくれて安心した。
◇◇◇
開始から一時間ほど経った頃には、森の不気味さにも慣れ始めていた。と言うより、他の三人があまりにも心強くて、どんなものが現れても何とかなると思えていた。
「セオドア、右は頼む! 俺は左の魔物を倒すわ」
「ああ」
「それなら俺は少し先にいる群れを倒してこようかな」
想像していたより魔物の数は多いけれど、三人が一瞬で倒してくれるため、怖がる暇すらない。
今もヴィリーが殴り飛ばした魔物が、漫画のように綺麗な放物線を描いて飛んでいった。
「レーネ、あの魔物を倒してみようか。右胸を狙って」
「はい!」
けれどその一方で魔物との戦闘経験を積めるよう、ユリウスは今の私が対処できるレベルの魔物を選び、練習させてくれていた。
自分でも驚くほど精度と威力は上がっていて、今のところTKGで矢を放って失敗することはほとんどない。ユリウスにも魔力探知さえ完璧にすれば怖いものはない、とまで言われたほどだ。
「もう魔蝶も五匹も捕まえられたし、このままいけば優勝もできるかな」
「余裕だと思うよ。不安ならもっと捕まえてくるし」
そして一番の目的である魔蝶の捕獲もしっかり続けており、とても順調だった。過去の優勝チームが五匹だそうで、まだ午後の時間も残っていると思うといける気がしてくる。
それに森の中が怖くなくなると、大好きな三人とお喋りをしながら森の中を歩き、綺麗な蝶を捕まえるというのはとても楽しいイベントだ。
「でもほんと、レーネも成長したよな! なんつーか、悪いところがない感じ?」
「…………」
ヴィリーの言葉に王子も深く頷いていて、胸が熱くなる。
「そうだね。レーネは基礎がしっかりしているから、すごく安定してるよ。これまで積み重ねてきたものが一気に実を結んだんじゃないかな」
「み、みんな……ありがとう! 私、もっと頑張るね!」
やっぱり頑張ってきて良かった、これからも努力を重ねようと気合を入れる。みんなはこうして褒めてくれるけど、周りと比べればまだまだだということも分かっていた。
ひとまず今日のような機会を無駄にしないようにしようと決意すると同時に、ぞわっとするような嫌な気配を感じ、振り返る。魔蝶は難しくとも、中型以上の魔物なら探知できるようになっていた。
「よーし、張り切っちゃうぞ!」
浮かれながらTKGを構え、さらに位置を探っていく。結構離れた場所にいるらしく、目視はできなかったものの、狙いを定めて矢を放つ。
するとかなりの勢いで、目標に当たったのが分かった。
「やった! さて、何を倒せたのかな」
うきうきで草木をかき分けて突き進んでいくと、地面には割と大きな何かが転がっている。
結構大きな魔物を倒せたのかも、と期待に胸を膨らませながらさらに近づいていき、笑顔で視線を落とした私は声にならない悲鳴を上げた。
「う、うわああああああ!」
「おいおい、どうした!?」
震えてその場に立ち尽くす私のもとへ、ヴィリー達も駆け寄ってくる。
隣へやってきたヴィリーは私の視線の先を辿った後、ハッと口元を覆った。
「し、死んでる……!?」
そう、そこにはハートフル学園二年の女子生徒が倒れていたからだ。
身体は真っ赤な液体で染まっていて、目は固く閉じられている。ぴくりとも動く様子はなく、全身の血が冷え切っていくような感覚がした。
「ど、どうしよう……わ、私……人を…………」
先程までの浮かれた気分は一瞬にして消え、頭が真っ白になってしまう。




