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恋しい温もり 1

YouTubeにてチート兄ドラマCDの視聴動画が無料公開されています!(TOブックスの公式チャンネル)

レーネと吉田が出られない部屋に監禁されている、とっても楽しいシーンが見られるのでぜひ!



「あっ……ええと……いつから見てました……?」


 困惑しつつ口をついて出たのは、そんな問いだった。


 どう考えても最初の一言は他にあったと自覚しつつ、ユリウスの答えを待つ。


「これは吉田の分の一回目から」

「…………」


 考えうる限り、最も良くないタイミングだった。


 無理やり誘拐され、助けに来てくれた数週間ぶりの家族であり恋人との再会など、本来は涙不可避の感動的な場面だろう。


 しかし今の私は謎の太った変なおじさんの上に馬乗りになり、訳の分からないことを叫びながら何度も何度も殴っていたのだ。


 もはやどっちが加害者で被害者なのか、分からない状況に違いない。


「…………」

「あ、あの……これはですね……」


 ユリウスは無言のまま、こちらへ歩いてくる。


 そして慌てて立ち上がった私の腕を優しく掴むと、そっと抱き寄せた。


「……本当に、無事で良かった」


 ユリウスらしくない少し震えた声や縋るように背中に回された腕から、どれほど心配してくれたのかが伝わってくる。


 何よりずっと恋しく思っていた温もりに包まれ、目の奥が熱くなった。遠慮がちにユリウスの服を掴むと、応えるようにさらにきつく抱きしめられる。


「……っ」


 なんだかんだずっと明るく努めていたけれど、私も色々と限界だったのかもしれない。


 ユリウスの腕の中はどうしようもなく安心して、ずっと張り詰めていた糸が切れ、視界が滲む。


「レーネが心配で、頭がどうにかなりそうだった」

「……ごめ、ん……」

「よく頑張ったね」


 やがて子どものように泣き出してしまった私の背中をあやすように撫でながら、ユリウスは優しく抱きしめ続けてくれた。



 ◇◇◇



 その後、トゥーマ王国とバストル帝国の騎士団も駆けつけ、犯人たちはすぐさま拘束された。


 この場所を見つけたユリウスが、向かう途中に知らせたんだとか。


「──つまり、港で船に乗るよう誘導されたのですね」

「はい」


 少し休んでからでいいと言われたものの、ルカも吉田も王子もトゥーマ王国のホテルへ送ってもらう道中に事情聴取を受けるそうで、私も同席した。


 とはいえ、疲れて大半はユリウスの肩で気絶するように眠ってしまっていたのだけれど。


 ゲートをいくつか使ったことであっという間にホテルに到着し、後日改めて話をする約束をして騎士団の人々と別れた。


「レーネ!」


 ユリウスに手を引かれ五人でホテルの中へ入ると、ロビーで待機していたらしいテレーゼやラインハルト、ヴィリーが駆け寄ってきてくれる。


 涙を浮かべたテレーゼに、きつく抱きしめられた。


「本当に、本当に無事で良かったわ……!」

「レーネちゃん、すごく心配したよ」

「お前らに何かあったらと思うと、いつもの半分しか飯食えなかったんだぞ」

「みんな……ごめんね、ありがとう」


 心から心配してくれているのが伝わってきて、再び涙ぐんでしまう。


 二年生のみんなは私たちが攫われてからというもの、あちこちを探し回ってくれていたという。


「こうして戻ってきてくれて良かったわ。見つけるのが遅くなってごめんなさい」

「うんうん。本当に心配してたんだよ」


 ユリウスのお願いで、ミレーヌ様やアーノルドさんも私たちの捜索にずっと協力してくれていたそうだ。


 みんなでお礼を言うとよしよしと頭を撫でてくれて、また泣きそうになった。


「心配をかけてすまなかった」

「吉田、なんか痩せたか?」

「一生分の苦労とストレスを摂取してきたからな」


 吉田や王子、ルカもみんなとの再会に笑顔をこぼしている。私たちが攫われたことで、みんなも旅行どころではなかっただろう。


 あと何日ここにいられるかは分からないけれど、できるなら改めて全員で全力で楽しい思い出を作りたい。


 そして犯人たちが罪を償い、攫われた人々が一日でも早く元の生活に戻ることを祈るばかりだ。


 友人たちとの感動の再会を噛み締める中、ユリウスは私の後ろでずっと黙っていたけれど、不意に腕をきつく掴まれた。


「ごめんね、もう限界」

「えっ?」


 私の腕を引き、ユリウスはどこかへと向かっていく。


 みんなも何かを察したのか笑顔で手を振ってくれて、私は「ま、また後でね!」と言うと、早足でユリウスの後を慌ててついていった。


 そうして着いたのは、ユリウスとアーノルドさんが泊まっている部屋で。どうやらホテルはそのまま延泊し続けていたようだった。


 そのお値段を想像してしまい震えながら、促されるままソファに腰を下ろす。同時にユリウスの両手がこちらへ伸びてきて、抱きしめられた。


「……本当、いい加減にしてほしいな」


 私を抱きしめたまま、ユリウスは消え入りそうな声で呟く。苦しいくらいきつく身体に回された腕は、ユリウスの切実な気持ちを表しているようだった。


「なんでこんなに目が離せないわけ」

「……ごめんなさい」

「別に謝ってほしいわけじゃない」


 ユリウスは私の背中を軽くぽんぽんと叩くと、深く息を吐く。苛立ちをどこにぶつければいいのか分からない、という感じがする。



視聴動画、ほんっとうにレーネも吉田もそのもので生きているので騙されたと思って聞いてみてください。そしてぜひ最高の本編もご予約よろしくお願いします〜!!!!!


ドラマCDとサイン本のセットは残り1/5くらいなので、お急ぎください(通常版は制限ありません)

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【公爵様、悪妻の私はもう放っておいてください】

新連載もよろしくお願いします!

― 新着の感想 ―
[良い点] 清楚なヒロイン「これは吉田の分!(ボゴっ)」 清楚なヒロイン「そしてこれは吉田の分!(ドゴっ)」 清楚なヒロイン「そしてこれがッ!吉田の分だッ!(メキョっ)」
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