脱出への道 4【告知あり】
あとがき、情報過多ですが書籍6巻とコミックス4巻とドラマCDとオーディオブックとポストカードが3/15に発売されます!そして神すぎるキャスト陣も発表です!
「……分かった、やろう」
「えっ!? 吉田……いいの……!?」
「俺だってこんな場所から一日でも早く出たいんだ。何より、これ以上良い案を提示できなかった俺の負けだ」
「ありがとうね。勝負に負けても、試合には勝とう!」
「うるさい、バカ」
何はともあれ、吉田も心底苦しみながら同意してくれたことで、女装作戦を行うこととなった。
こうなった以上は絶対に上手くやらなければと、気合を入れる。
──そして翌日は様々な準備に徹し、迎えた翌々日の脱出作戦決行日。
私たちは朝食を終えたあと、僅かしかない休憩時間の中で急ぎ変身作業を進めていた。
見つかっては困るため、こそこそと人気のない物陰での作業はなかなかに難しい。
「セ、セオドア様……!」
「…………」
「うわあ、すごいね」
「完璧すぎて反応に困るな」
そんな中、女性用の桃色の作業着を身に纏い、布を被って金色の長い髪の毛を付け、頬や唇にほんのりと赤みが差した王子は想像以上の超絶美女となっていた。
更衣室を漁った結果、ここに連れ去られた際の誰かの所持品なのか複数の化粧品もあり、女性らしさを出すためにほんのり色をつけてみたのだ。
もはや王子というより、女王様という感じだ。
「本当に本当にお美しいです! こう、なんていうか踏まれたくなるような」
「…………」
「おい、不敬だぞ」
吉田にぺしんと頭を叩かれながら、あまりの美の暴力に女として完全敗北した気持ちになる。
つい見惚れてしまったものの、時間がない。次に着替え終わっていたルカの支度を始める。
流石にルカと同じ桜色の髪の毛なんて都合良くあるはずはなく、深く布をかぶって前髪を隠し、茶色の髪の毛を付けることにした。
「……わ、私じゃん」
そうして化粧も済ませたルカの姿は、ほぼ私だった。
本当に私にそっくりで驚いてしまう。
「すごい、やっぱり姉弟だって実感するね」
「確かに双子みたいだな」
「うん」
吉田や王子も同じ感想を抱いたらしく、私とルカを見比べては感心した声を出す。
ルカの方がキリッとした美少女という感じで、それもまた趣がある。
「姉さんと双子か、嬉しいな。ここを出たらしっかりやってみようかな」
「金なら出す」
つい全力で前のめりになってしまいつつ、次に吉田の準備を進めることにした。やはり青髪はなく、暗い焦茶色の髪の毛を代用するつもりだ。
そうしてこれまで通りの手順で、吉田を美女へと女装させた──はずだった、けれど。
「あっ…………」
なんというか筆舌に尽くし難いほど、吉田は女装が似合わなかった。
王子は中性的な美しさがあるし、ルカは幼さが残る美少年だからこそ似合ったのだろう。
我が親友・吉田もめちゃくちゃ美形だしいける……と思ったものの、やはり男性らしさが強すぎて、とてつもなく苦しい。全然いけなかった。
THE女装した男性という仕上がりに、私たちの間には地下に来てから一番の緊張感が走る。
「頼むから何か言ってくれ、それか殺せ」
「ごめん……私、吉田には嘘がつけなくて……でも傷付けたくない……」
「気遣いありがとうな、今ので全て伝わった」
この場に鏡はないため、吉田自身は確認できない。
けれど私たちの反応を見て、吉田は全てを察したようだった。本当に申し訳ないと思っている。
「……あー、でもこういう人いますよ」
「見たことある」
「もう何も言ってくれなくて結構です」
王子とルカも、必死に言葉を選んでいるのが伝わってくる。その結果、余計に吉田を傷つける結果となってしまった。
とはいえ、今は女装コンテストをやっているわけではない。この場所からの脱出さえできれば良いのだし、俯いて背中を丸めて高身長と顔を隠せば、女性たちの集団に紛れられるはず。
「外に出た瞬間、全部取るからな」
「うん……手伝うよ……」
「その同情したトーンやめろ」
最後に私も頭に布を巻き、四人で女性労働者の集合場所へと向かうことにした。
集合場所には数十人の女性がいて、これなら問題ないだろうと内心ガッツポーズをした、のに。
「あんな綺麗な子、いた?」
「また新しく攫われて来たのかしら」
王子やルカを見て、みんなひそひそ囁き合っている。
「しまった、美しすぎて目立って……!?」
女性になりきることに重きを置いてしまっていたけれど、メインは「馴染むこと」なのだ。
とんだ罠だったと、背中を冷や汗が伝う。
「美しさって罪ですね、先輩」
「…………」
とにかく三人には俯いてもらい、心臓がうるさいくらい早鐘を打つのを感じながら、時が来るのを待つ。このまま外にさえ出られれば、全てが上手くいくはず。
「よし、集まったな。ったく、今日もしっかり働けよ」
やがて今日も憎たらしいことこの上ない人類の敵、DBが現れた。すぐに移動が開始され、できる限り目立たないように息を殺し、なるべく人の多い集団の中心を歩くよう心がける。
今のところ誰も男性が三人も混ざっているとは気付いていないらしく、ほっとする。
あとは十分ほどの距離を指示に従いながら、地上へ続く道を歩いていくだけ。
「ほら、さっさと歩け! チンタラしてんじゃねえ!」
今日も面倒になったのか、私達の前方でDBは足を止めて誘導を放棄し、文句を垂れている。
他の見張りは先頭と最後尾にいるため、あのポイントを抜けさえすれば私たちの勝ちだ。
「あと少し……あと少し……」
「あはは、すごいドキドキするね」
私の腕に自身の腕を絡めたルカはやけに楽しそうで、私よりもメンタルが強い人も珍しい。
やがてDBの視界に入るゾーンに入り、心拍数はMAXになる。どうかこのまま何も起きずに通り過ぎることができますようにと、お腹の前で両手を組む。
けれどそんな私も願いも虚しく、私たちが目の前を通ると同時にDBは「ん?」と声を上げた。
3月15日にチート兄書籍6巻とコミックス4巻、そして豪華キャストによるドラマCDが発売されます!
夏休みらしい爽やかな神イラストです(王子と吉田がメインなのもまた良い……;;)
また、ドラマCDのカバーやキャストも公開!
レーネ役 鈴代紗弓 さん
ユリウス役 内田雄馬 さん
吉田役 石川界人 さん
王子役 梅原裕一郎 さん
アーノルド役 天崎滉平 さん
ヴィリー役 畠中祐 さん
ラインハルト役 白井悠介 さん
テレーゼ役 長谷川育美 さん
いやあの……こんな豪華なことある!?!ってくらい神キャスト様方で、収録にも参加させていただいたのですがみんなが生きていて絶対絶対聞かないと損です。
石川界人さんの吉田、マジ吉田です。
ドラマCDは2本立てで書籍の番外編「抱き合って好きと言わないと出られない部屋」と今回の書き下ろし「乙女ゲームを作る話」となっております。
「乙女ゲームを作る話」は全キャラ(豪華なキャスト様たち)にレーネが乙女ゲーの激甘セリフをひたすら言わせるというドラマCDを最高に生かした内容で、ときめきと笑いがたくさんの素晴らしい作品になっています。
間違いなくチート兄やみんなをさらに好きになっていただけると思いますし、解像度が爆上がりします!(断言)
そして今回は書籍とドラマCDのセットの【サイン本】を書かせていただきます……!( ෆ ̫ ෆ )
悔しくはXでお伝えしているのですが、
今回のみ【サイン本は数量限定】です>< お求めくださる方はお早めにご予約いただけると嬉しいです……!
すべて【TOブックスオンラインストア】でご予約できます!書き下ろしSSペーパーなどもついてきます。
サイン本はこんな感じです(こちらは書籍3巻)
もちろん定価なのでぜひ!
また、七星郁斗先生によるコミックス4巻(今回もカバーめちゃくちゃ素敵;;)や
書籍1巻をまるごと声優さん(ドラマCDのキャスト様とは別です)が読み上げてくださるオーディオブック、ポストカードセットも同日発売です!
たくさんのお知らせになりましたが、チート兄がこうして広がっていくのは書籍が売れたからこそでして、本当に本当に応援してくださる皆さまのおかげです。
いつもありがとうございます……!
今後ともたくさん良いお知らせができるよう頑張ってまいりますので、チート兄をよろしくお願いします!
ご予約もよろしくお願いします( ^人^ )♡




