【漫才】異世界漫才
コンテスト用に書いた漫才の台本です。
(ボ、ツ)「はい、どうもー」
(ボ)「うわあ、客少な!」
(ツ)「こら! せっかく来てくれてはんねんから、そんなん言うたらあかん」
(ボ)「ごめんごめん。そやな。ごめんなみんな」
(ツ)「なんか偉そうやな。まあええか。よろしくお願いしまーす」
(ボ)「客少ないけど、しっかり暖めてや」
(ツ)「なんでこっちが言うねん! 客暖めるのが漫才師の仕事やろが」
(ボ)「いくらおもろい漫才師でも出来ることと出来んことが……」
(ツ)「そこをやるのがプロやろが!」
(ボ)「そんなん出来るくらいやったらこんなとこ来てへんし」
(ツ)「こんなとこ、て言うな! すいませんね、代りに謝っときます」
(ボ)「こいつ控室で『なんでこんな仕事受けてん!』言うてたんですよ」
(ツ)「ばらすなや!」
(ツ)「最近、異世界転生が流行ってるの知ってる?」
(ボ)「異世界転生?」
(ツ)「そう、異世界転生。日本人がな、突然、異世界に連れていかれるねん」
(ボ)「じゃあ、あれ? おれがハリーポッターになるようなもん?」
(ツ)「まあ、そんな感じ。日本ではうだつが上がらん奴でも、異世界行ったらスーパーマンみたいになるから凄い人気やねん。今、漫画やアニメは異世界物だらけやで」
(ボ)「俺、ハーマイオニーあんまり好みやないねんけど」
(ツ)「お前が言うな! それは向こうのセリフや! とにかく、これだけ異世界が流行ってたら、お笑いの世界にも異世界が来ると思うんよ」
(ボ)「つまり、異世界を先取りして人気漫才師になろういう作戦やな」
(ツ)「そや、まだ異世界漫才なんてやってるやつおらんやろ」
(ボ)「そしたら、こんなうだつの上がらん仕事やらんでもええもんな」
(ツ)「お前、喧嘩売りに来てんのか」
異世界
(ボ)「ようやくここまで来たね」
(ツ)「この世界に召喚されて3年、長かったわ」
(ボ)「異世界で漫才なんて誰も知らんと思たら、意外にもみんな知ってたからね」
(ツ)「過去に召喚された芸人がおったとはなあ」
(ボ)「小さい子供までゲッツって言うてたよ」
(ツ)「あのひとも召喚されとったんや! どうりで最近見いひんと思ったら」
(ボ)「でも、緊張するわ。こんな大きな舞台でやるの、この世界に来てから初めてやから」
(ツ)「そら王様が住んでるお城やからな。そこで開かれてるパーティーで漫才できるなんて異世界人冥利につきるわ」
(ボ)「異世界人冥利て……ここで受けたら人気漫才師になれるかな」
(ツ)「なれるなれる。上手いこといったら、貴族になれるかもしれんで!」
(ボ)「貴族漫才ってなんかおったような」
(ツ)「いや、こっちはほんまもんの貴族やからね。あっちは服着てルネッサンス言うてるだけやから」
(ボ)「異世界来てるからって、めちゃくちゃ言いよんな」
(ツ)「とにかく、俺らの人生が掛かってる大舞台や。がんばろな」
(ボ)「万が一、うけへんかったら、どうなんの?」
(ツ)「前にお城でやった漫才師は、首撥ねられたらしいけど」
(ボ)「なんでやねん!なんでうけへんだけで首撥ねられなあかんねん!」
(ツ)「そこは王様の気分次第やから。異世界やし」
(ボ)「たかが漫才で首撥ねられたないわ! もう嫌や帰る!」
(ツ)「あかんあかん、ここで帰っても約束破った言うて首撥ねられるで」
(ボ)「どっちにしても撥ねられるやん!」
(ツ)「うけたらええねん、うけたら!」
(ボ)「それが一番難しいねん!」
(ツ)「大丈夫。首撥ねられた漫才師は、M1の決勝ファイナリストらしいから」
(ボ)「どこが大丈夫やねん! よけ無理やん!! 俺ら絶対無理やん! ていうか誰やねんそれ!」
(ツ)「なんかM1で審査員にケチつけたとか何とか……あの審査員、異世界人やから」
(ボ)「異世界人やったんや、あのおばちゃん!どうりで白いと思た!」
(ツ)「そのファイナリストが首撥ねられる前に言うてたらしい」
(ボ)「なんて?」
(ツ)「こんな貴族が踊ってるとこで漫才なんかやっても、うけるわけがあらへんがな!って」
(ボ)「絶望的やん」
首を撥ねられる2人
(ツ)「うけへんかったな……」
(ボ)「そらそやろ! 誰も聞いてなかったやん!」
(ツ)「まさか途中で王子が婚約破棄を言い出すとはな」
(ボ)「みんな王子に注目やもん」
(ツ)「しかも悪役令嬢にまで『あんたら、おもんない!』って言われたもんな」
(ボ)「しかも顔白かったし!」
(ツ)「と、異世界漫才どうやった?」
(ボ)「どうって、めっちゃ怖かったわ。うけへんかったら首撥ねられるとか、そんな漫才嫌やわ!」
(ツ)「そしたらもう一度聞くけど、今日のお客さん見てどう思う?」
(ボ)「最高のお客さんですわ」
(ツ)「ウソつけ!」
お読みいただきありがとうございました