短編小説 こんな話を聞いた ニヤ〜ン
短編小説 こんな話を聞いた
ニャ〜ン
僕には、誰にも真似出来ない特技がある。
猫の鳴き声だ。しかも超リアル!
喉を絞り、舌を微妙に回しながら唇を震えさせて声を出す。
「ニッニッ、ニヤァ〜ンングウンゥググ」
我ながら、見事な鳴き声だ。
この技をマスターするには、かなりの努力と研究と試行錯誤があった。
そして、その技を披露する時が来た!
憎っくきぶち猫を追い出す作戦だ。
我が家の芝生に散々フンをし、オシッコをする大敵だ。木酢を置いたり、トゲトゲを置いたりしたが、全く効き目が無い。
午後3時20分、ぶち猫が来る時間だ。
やって来た。いつもの様にオシッコをしようとしている。
僕は塀の影から鳴き声を出した。
「ニッニッ、ニヤァ〜ンングウンゥググ」
ぶち猫の動きが止まった。キョロキョロしている。
僕はニヤリと笑い、再び鳴き声を出した。
「ニッニッ、ニヤァ〜ンングウンゥググ」
ぶち猫が辺りを見回す。明らかに動揺している。
「ニッニッ、ニヤァ〜ン、ングウングウンググゥググ〜」
「……ニャ〜ン」ぶち猫が返事をした。
「ニッニッ、ニヤァ〜ン、ングウングウンググゥググ〜」
「ニャ〜ン」ぶち猫が再び返事をした。
作戦フェーズ2開始、
「ニッニッ、ニヤァ〜ン、ングウンガオ、グウンググゥググ、ガオ、ガオ」
ぶち猫がびっくりして縮こまり、戦闘態勢になった。
「ニャーン、ヴヴヴヴゥ」敵意の鳴き声だ。
作戦フェーズ3開始、
「グッ、グッニヤァーン、ングウンガオ、グウンググゥググガオ、ガオ、ガオオ、ガガガガオー、ゴゴゴー、ガオーーーーン」
「ブッニャ〜ン」慌てて逃げていくぶち猫。
勝った!完璧なる勝利。これで我が家の平和は保たれた。
……隣のおばさんが、複雑な表情で僕を見ていた。