おにぎり
小説?小噺?
「おにぎりとおむすびって何が違うの?」
これは困った。素朴な疑問ほど難解なものは無い。常識とは広く知れ渡った当然の事であり、疑う余地が無いのである。
手のひらサイズのお米の塊、これの呼び名を知らぬ者はいない。読んで聞かせる絵本には『おむすびコロリン』 皆で歌う歌詞には『おにぎりおにぎりちょいと詰めて』 とある。どちらでも良さそうだが『おにぎりコロリン』では、足元に落ちるだけな気がする。『おむすびおむすびちょいと詰めて』では、それだけでお弁当箱がいっぱいな気がする。
「何が違うの?」
答えを急かされる。これは困った。大きさの問題では無いし… 握るから『おにぎり』うむ! 結ぶから『おむすび』なぬ?何を結ぶのだ?米か?いや違う、あくまでも『結び』なのか?普通は紐とか人の縁。となると…
「同じなの?」
ついに痺れを切らしたか。しかし、質問が始まってから5秒たらずだと言うのに、今にも喚き出しそうなこの表情。これは困った。何か明確な答えを出さねば面目丸潰れだ。ってな事を考えていると。
「つまんなーい!」
怒り出してしまった。出来る事なら、この子の切れた堪忍袋の緒を結びたいがそうもいかない。買って出たのは私だが、親戚の子を預かり留守番とは
《損な役回りを握らされたものだ。》
落語をイメージしてみました。