プロローグ
ミサンガ美沙子の人繋ぎは初投稿の連載小説となります。
あくまで趣味ですので、適当に批評していただけると幸いです。
・プロローグ
今日は、空がきれいな一日だった。
今日は私の誕生日。
腕に巻いたミサンガを激しく上下に振りながら、
一刻も早く家に帰ろうと、足取りはどんどん早くなった。
楽しみに緩む頬は、恐らくはたから見てとてもだらしなく見えたのだろう。
「ママ、あの人なにー?」と言われ、
その母親が蒼白になるという
微笑ましい定番のやり取りが見られるくらいには不審者っぽく見えたようだ。
いやしかし自分で言うのもなんだが、
外見は普通よりちょっと上な自信はある。
そんなにひどい顔をしているだろうか?
それはそれでちょっと傷つくというか…自信無くすというか…
少し足取りが緩んだその時、急に先程の母親の叫び声が、耳に入ってきた。
次の襲って来たのは妙に温かい液体を腹部にかけられているような感覚。
私が『それ』を理解したのは、数秒経って、足の感覚を失い始めた時だった。
私は、刺されたのだ。ナイフで、通り魔に。
なんだ……あの子供は別に私の事を言ってたわけじゃなかったのか。だとか
……子供が刺されなくてよかった。だとか
何故かそんな、どうでもいいこととか、偽善的なことだとかが脳内に浮かぶ。
思い返せば、意外と恵まれた人生だった。
彼氏は2人出来てたし、勉学も中の上。
運動が出来ないわけではなかったし、
友達にも恵まれた。
これが走馬灯というモノなのだろう。楽しかった記憶は全て過ぎ去り、
今この状況からどうにか助かる方法を
身体が、脳が足りない酸素で思い出そうとする。
そうしている間に、ゆらりと身体は揺れ、私は地面に倒れ伏した。
結構酷い音がした。頭も打った。でも痛くはない。
既にナイフは抜き放たれ、通り魔はとんでもない顔でこちらを見ている。
警察へ通報している人もいるし、スマホでこの状況を撮影している人もいる。
ああ、私は死ぬのだ。
偶然にも通り魔の殺人衝動の対象に選ばれ、刺された。
それだけで私は死ぬのだ。
刺されたのは1回だけなのだろうか?
それとも気付かなかっただけで何度も刺されたのだろうか?
自分のあまりの鈍感さに苦笑が漏れる。
……ああ、生きたいなぁ…
そんな思考を最後に、私、綴 美沙子は、
25年間付き添ったその儚い命を手放した。