表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

第9話「恋の迷路でバンバチポーポー」

「キャサリン。これは一体どういう事か分かるかね?」


パソコンを打ち込んでいた手を休めて差し出された資料に目を通し、目をまんまるに見開いた。


「・・・・・What!?」


パラパラといくつかの資料を急ぐようにめくっては、最初ページの写真に釘付けになっている。


「マッケンジーの報告にあった資料だ。あの娘は、例の彼とは別れたのか??」


「・・・・・・。」


「どうやらここ数日で、君も把握していない急展開があったようだな。まぁいい、引き続き君は君の仕事を頼む。」


「・・・Copy that(了解) ボス。」












パンパラパンパン

パンパラパンパン


遠くでバレルオルガンの旋律が響く。

「いつものように」待ち合わせの時間の30分前、パン子は既にゲートに着いていた。

長い黒髪を洗うように、優しく風が吹いている。

心地よい初夏の陽気。緑の混じった風の匂いというものは、沈みがちな気分の中にも、根拠なく喜びを連れてくるものだ。ふと視線をゆっくり左右に送って、微笑みの後、小さく手を振った。


「アーンビリーバボゥ☆まだ時間じゃないのにもう着いてるなんて・・日本の女性はこれがスタンダードなのかい?」


「あはは♪」


「突然の誘いにもこうして快く来てくれる。参ったね。」


「ただ暇なだけですよ。」


「Okay 暇なお嬢さん、今日は僕とデートをしよう。」


嫌味のないウインクを飛ばすレインに無言で微笑みを返すと、二人はゲートをくぐり抜ける。

広い敷地の中ではうるさ過ぎない雑踏の音に混じって、場内放送の声や遊園地特有のメルヘンチックなBGMがさっきよりも近くなった。まだほんの数歩踏み入れただけなのに、一瞬で普段の暮らしから遠ざかり、夢の世界に変わる。そんな不思議な魔力が溢れる園内には、様々な人々の笑顔や笑い声が自然と満ち溢れて、皆が自ずと優しい気持ちになっている。レインがふと彼女の肩に手を回した。


「あっ、あの・・」  とっさにパン子が小さく身をよじった。


「うん?ああ、ソーリー。日本女性にとってはよくない事だったかい?」


さして気にするでもない口調でそう言うと、おどけた顔をして大袈裟に広げたポケットに手を突っ込み直した。


「ボーイフレンドの事は今日は忘れなよ☆ べつに深い意味はない。楽しむ時は楽しむべきさ。違うかい?」


その時は吹いていなかったはずの風が一瞬強く目に入ったかのように、パン子は黙って微笑んだ。

今日は家を出る前から、何度となく自分に言い聞かせるようにしてきたのだ。もちろん浮気心などパン子の心には微塵もなかったが、曲がりなりにもダンと交際をしていながら、こうして他の男性と二人きりで出掛ける事には当たり前に罪の意識があった。ただでさえ古風な家柄に育った、現代においては珍しいほどの貞操観念を持っているパン子にとって、本来ならあり得るはずのない行動なのだが・・恋というものが彼女に少なからず与えた心境の変化も相俟って、レインの持つ不思議な空気に呑まれるように、急な誘いにも応えてしまったのだろう。それでもあの謎の女との光景を目にしてしまったあの日から、苦しいほど悩み続けているパン子だったが、異性としてレインを頼る意識が全くなかった事が罪悪感を小さなものに留めていた。とにかく、「いい方向へ」と現状を打破したくても、肝心のダンからは何故だか連絡すら来ない。それがより一層と不安を募らせ、居ても立ってもいられない毎日なのだ。泳ぎ方も知らないまま流されるように、恋することに不慣れな少女なりの不器用な抵抗の中では、明らかに自分の事を「女」として見ているレインが何を意図して自分を誘うのかまで察することが出来ないのも、仕方のない事だった。


「レインさん、どんなアトラクションが好き?」


少し自分を正当化するような勢いで、質問を投げかける。


「う〜ん・・ジェットコースターかな。王道だね☆」


「へぇ〜!そうなんだ!・・・・へえ〜・・・・あはは(笑)」


「変かい?」


「ん〜ん、違うの(笑)。ダンくんね、ジェットコースター乗れないんです。どうして?って聞いたら、真っ青な顔して、「怖い」って。それ、思い出しちゃった!(笑)」


「ほー。彼は案外チキンなんだな。」


「そうなの(笑)。オバケ屋敷とかは全然怖くないって言うんだけど、ジェットコースターだけは絶対に嫌なんだって。そういうものなのかなぁ・・・」


パン子に、自然な笑顔が戻りつつあった。図らずもこうしてダンの話題を自然と話せる自分に、安心感のような気持ちがほのかに湧いてきたからだ。それまであった罪悪感をかき消すように、今なら「今日は彼の事を忘れて楽しもう」という不本意な提案も、半分の意味でなら快く受け入れられる・・そんな気がして、むしろ当たり前にダンに対しての想いを隠さずにいられる事が嬉しくなった。


「お化け屋敷といえば・・こんな話、聞いたことある?」


「・・・??」


「とある殺人鬼が、殺した人間をバラバラにして、お化け屋敷の中に隠した・・っていう話さ。」


「・・・・・え。。」


「ほら、中にはゾンビだの屍体だの転がっているから、一見したら分からないだろう?隠し場所にはもってこいって事さ。」


目をまんまるにして、こんな使い古された「よくある話」にも素直に身をすくめている。


「・・・ここのお化け屋敷はどうかな・・・?後で入ってみるかい?」


「・・・・・・!」


「その噂が本当かどうか、確かめに、ね☆ ははは、顔が真っ青だよ?」


「そ、そんなこと、ないです。」


「ははは、無理しなくっていいけど。君は実にキュートだな。(笑)」


「・・・す、好きな食べ物は、な、なんですか!」


「What!?・・・はは、そうね。好きな食べ物か・・・」


「うん!うん!」


「・・・・ポップコーン。」


「ふむふむ♪」


「日本でも普通にある?」


「ありますよ、普通のお塩の奴もだけど・・ 色んな味のがありますね♪じゃあ、後で食べましょ♪今日のテーマはポップコーンを食べるに決定♪」


「ほー。そりゃあいい。・・・・っと、ちょっと失礼。」


レインの携帯が鳴った。内ポケットから取り出し、パン子から少し離れた噴水の前に立つと、流暢な英語で話し出した。


「レイン!貴方一体どういうつもり!?」


「What?」


「あの娘に接触しろとは言ってなかったはずよ!」


「・・・・計画の変更さ。」


「・・・お願いだから勝手に動かないで!」


「まどろっこしい方法で、なんとかするつもりみたいだね。」


「・・・・。あの娘は、ボスにとっても大切な存在なのよ・・。勝手に動かれては本当に困るの。お願いだから言うことを聞いてちょうだい!」


「Okay それじゃあもう一度計画の変更だ。」


「そうよ、それでいいわ。レイン・・・」


「もう少し例の男の戸惑う姿を見て楽しもうと思ってたけど、さっさとあの娘を始末する事にするよ。」


「・・・!? レイン!?貴方n・・


「心配ないよ。俺もプロだ。殺すことに躊躇いは持たない。」


「レイン!!何を言っているの!?あの娘を殺す必要はないでしょう!?貴方は黙ってエアーガンマンの・・・お願いよレイン、約束してちょうだい!」


「・・・・・・・・・・"約束"?」


片方の眉毛がピクリと動いた。


「あの娘には一切何もしないと約束してちょうだい!」


「・・・・・・悪いけど今デート中なんだ。それじゃ。」


「レイッ・・・」


一方的に通話を終えると、そのまま電源を切った。呆れたように目を閉じて「フン」と小さな溜息と共にニヤリと笑みを浮かべると、背にしていたパン子の方へと振り返る時には、また爽やかな表情に戻っている。


「ソーリー、仕事の電話だったよ。」


「大丈夫ですか・・・?」


「うん。問題ない。 さ、どこを周ろうか?」


しばらく考えた後、意を決したパン子がちょっと強気な表情で答えた。


「・・お化け屋敷!」


「・・・・GOOD☆覚悟が決まったみたいだね。」


「・・・ふふ♪ さ、いきましょ!」


パン子は小さく含み笑いをして、無意識にレインの手を引いて歩き出した。すぐに気付いて離したが、なんだか強気な笑顔は変えずに歩いた。













ダンの部屋のカーテンが、吹き込む風を包んで揺れている。

心地よい風が淀んだ部屋の空気を入れ替えても、どよんと暗いダン。ベッドから片足だけ落として寝転びながら、ダンもまた、答えの出ない深い悩みの真っ只中にいた。


自負する頭の回転の速さも、行く先々の道が全て袋小路に辿り着く。まるで巨大な迷路に迷い込んでいるようだった。ただ、一つだけ分かっている事は、こんな時に「なんとなし」に歩いては行けない事だ。言い換えれば「流れに身を任せる」、そんな行動は間違いなく事態を悪化させる・・・少なからずダンの経験則は、そんな答えを導き出してはいた。


パン子に連絡をせずにいたのは、彼なりのそんな意味があっての行動なのだが・・同時に、「連絡をしない」という行動が長引けば長引くほど、状況が悪化していく事ももちろん分かっていた。普段なら良くも悪くも当たって砕けろの精神で、こんな風にグダグダと悩む性格ではないのだが・・ダン自身にも自覚がないほど、彼はこの恋に真剣だった。過去の恋愛とは、そのどれとも比較にならない程に心からパン子を愛していた。ダンからしたら、それが故に「慎重に物事を考えている」と思える今だったが、もしも本来の彼が今の自分の姿を見たら、きっと明るく言い放っただろう。「臆病なだけじゃん。」と。


ふと、携帯に視線をやった。もう朝から何度も確認して、届いていない事は分かっていても、メールが気になる。何度メールボックスを更新しても新しいメールは届かない。電話会社の通信障害を疑ったりもした。仕方なく開いた過去のメールのやり取りも読み返したりして、幸せな気分に浸った最後にふりだしに戻る。昨夜は珍しくパン子からのメールもなかった。柄にもなく不安になったり、そんな自分を笑い飛ばしてみたり、なんだかんだと眠れない夜が明けた。


半分眠っているようなぼんやりとした思考回路で、目を閉じながら考えていた。かれこれ、もうどれくらいの時間こうしてベッドの上で考え込んでいただろう?ふと、そんな自分に気がついて身体を起こした。そのまま窓辺にもたれて、意味もなく景色を眺める。


クマの横顔みたいな雲が、青空をゆっくりと泳いで、更に大きく口を開けた。

「ほんとう?今度貸して~」「うん、いいよ~」と、女子学生たちの無邪気な笑い声が通り過ぎてゆく。なんとなく赤い屋根だけを数えて、頭の中で結んだ線で星座を作った。


たとえば、ずっと横になっていた身体を起こした。こんな些細な事でさえ前向きな努力に思えて、何かが勝手に変わってくれるような気がしてくる。けれど、すぐにオトナな自分が顔を出し「そうはうまくいかないぞ」と言うので、青空すらも切なくなった。


そんな作業もひとしきりやったので、壁にかかったテンガロンハットをなんとなく睨んで洗面所に駆け込む。かと思えば、今度は乱暴に顔を洗い、鏡越し、冴えない顔をして自分を見つめる男を笑い飛ばした。


「彼女に逢いたい。・・・・そんだけだな!」


靴ひもを結んだダンの中からは、迷いも悩みも消え失せていた。

テンガロンハットのつばを指先でクイっと上げると、はみ出た前髪をフっと一吹きしてドアノブを回した。










(はわわわわ・・・・・)



必要以上に凝った作りのお化け屋敷の中をゆく男女が一組。

今は閉鎖され、廃墟となった病院という設定のアトラクションだ。

10人程度を1グループとして分け、更にそこから身内のグループずつに分けられ、時間差をつけてスタートしてゆく。巨大な廃病院の中を、結局は自分達だけで歩いていかなければならない。


時折、先行したカップルの悲鳴が遠くの方から響いてくる。そのお陰でこの先に起こる「何か」に少しは心構えは出来るものの、次々と遅い来る「恐怖」は、実に容赦がない。


さっきまでの強気な表情から一変、やはり青ざめた表情のパン子がそこにいた。

思わず横を歩くレインにしがみつきたいところだったが、なんとか必死に一人で恐怖を楽しんでいる。その横を至って冷静に顔色一つ変えないレイン。彼にとっては初めて入る日本のお化け屋敷の趣向にしか興味がないようだ。


「うがああああああああああ」


「きゃあああああああ(笑)」


ゾンビ姿のスタッフが物陰から飛び出して脅かすと、パン子は悲鳴をあげて通路を逃げていく。右に左にと複雑に入り組んだ順路のあちこちには、廃病院らしいセットが散乱している。

矢印に促されて飛び込んだ手術室のような部屋から振り返ると、一切リアクションをしないレインに対して、ゾンビも困った様子で配置に戻っていくのが見える。パン子には、それがまた可笑しくて楽しいのだ。


両手を広げ、「さぁ?」といった風に首をすくめる。外国人特有の仕草も、レインがやると実に自然に見える。一切怖がる様子のないレインが傍に居ると思うと、妙に安心感があった。その安心感を感じる相手がダンでなかったのは残念な気もするが、今はただ、目の前のリアリティ溢れる通路を進む。


迷路のように入り組んだ順路をしばらく進むと、今度はやけに距離のある一直線の廊下が現れた。見渡す限りは特に何もないただの通路だ。

だからこそ、「何かが起こるのだ」と誰もが予測する。

さっきまでの暗く狭い通路に「いかにも」な置物などが散乱している通路よりも、ずっと怖い。

そんなあまりにも見え透いた「恐怖の予告」に、パン子は無意識にレインの服の袖を掴んだ。


しばらく通路の奥を眺め・・出来る限りの心の準備を整えると、ゆっくりと歩き出す。パン子のそんな一挙一動に合わせていたレインが、ふと反対側の袖口から滑り落ちるように出てきたナイフを静かに握った。


プロがその気になれば、悲鳴を上げる間も無く絶命させる事が出来る。

この長い通路の中盤あたりには、無造作に置かれたロッカー。ただでさえ何もない通路にポツンと置かれたロッカーは、妙に存在感がある。

何かしらの仕掛けはありそうだが、もしもそこからスタッフが飛び出て来ないのなら、「そこでいい」とレインは思った。ものの5秒もあれば、静かに息の根を止め、そこに押し込むのは容易い。


カツンカツンと、やけに静かな通路にパン子のヒールの音が響く。

一歩一歩、無言で通路を行く二人。

もう、間も無く通路の中盤に差し掛かる。今の所、何も起きない。こんなに用心して歩いているのに、これはむしろ何も起きないパターンか?と、そんな風に思った矢先、少し通り過ぎた背後の天井から消化器のような煙が突如吹き出し、背の高いレインの顔のあたりに直撃した。


「Damn ・・・!(くそっ)」

「きゃあああああああ(笑)」


「この先に何が起こる?」という意識ばかり集中した頃に、背後から驚かせる。

実に古典的だが、王道とも言える演出にパン子は悲鳴を上げて通路を駆け出した。

恐怖も最高潮だったせいか、レインの事を気にかける様子もなく、突き当たりにあった暖簾状のゲートをそのままくぐり抜けていった。


少し遅れてレインも、今度は足早にその通路を抜けて、暖簾状のゲートをくぐる・・・と、そこは今までの恐怖がまるで嘘だったかの様に、今度は一気にメルヘンな雰囲気溢れる広場に辿り着く。


急に明るくなったせいか、少し目が眩んだ様子で顔の前で手を泳がせながら周囲を見渡すもパン子の姿は見えない。広場の中央にある噴水の前に立っていたピエロがバレルオルガンのハンドルをくるくると回し始めると「ふいご」の要領で送り込まれた空気で、なんともメランコリックな旋律が流れ出した。

傍でアイスクリームを舐めていた親子連れが、その口を休めないままピエロを指差す。吹き抜けになった広場の2階3階部分の手すりからも、人々が見下ろすようにして身を乗り出し、綺麗なメロディーに耳を傾けている。




「アーモンドココアクリスピースペシャール♪」


背後から突然顔の前に現れたポップコーンのカップに、レインは視界を奪われた。


「・・!?」


カップの向こう側で、はにかみながらペロっと舌を出すパン子。


その光景に、さすがに冷静なレインもほんの一瞬我を失った様子で、まだ事態を掴めずにいる。


「はい♪ これ、すっごく美味しいんですよ!」


「・・・・」


「ん・・?どうしたの?(笑)」


「・・・・いや。」


「はい♪ これはレインさんの分♪ た〜んと召し上がれ?って、すっごい量だね・・これ。。。食べきれるかな。。」


「はは・・・ 」


完全に拍子抜けした空気に思わず苦笑いするレインを見ても、特に気にもせずパン子が続ける。


「でも、すっごい怖かったね〜・・・。わたし、まだ心臓がドキドキしてる。。(笑)」


「ああ、そうだね。」


「うそ!レインさん、全然怖がってなかったじゃない。ゾンビだって困ってたよ?(笑)」


おどけた顔で首をかしげるレイン。


「でも、頑張ってよかった・・ 実は、わたし知ってたの。」


「・・・・知ってた? 何を?」


ニコっと笑って、レインの手に持たれたカップを指差す。


「お化け屋敷のゴールの先の広場に、確かポップコーン屋さんが居たはず!ってね♪」


「じゃあ、その為にあえてお化け屋敷に?」


「うんうん♪ だって、さっき約束したじゃない?」


「・・・・・・・・・・・"約束"?」


「え〜〜!?覚えてなかったんだ。。。せっかく頑張ったのに、がっくり。。」


「・・・・約束なんて、したかな?」


「ふふ♪ そんな大真面目に受け取らないで? ほら、さっきお仕事の電話が来る前に話してたの覚えてます? ポップコーンが好き・・っていう話をしてて・・じゃあ、今日のテーマは〜って。」


「・・・・ああ。」


「ね?約束してたでしょう♪」






















「・・・どうしてだよ姉さん!!約束したじゃないか!!」


「ごめんなさいレイン・・。でもお仕事なのよ、分かってちょうだい。」


「今、街に移動映画の一団が来てるんだよ!?明後日にはまた移動しちゃうんだ!」


「・・わかってるわ。すごく楽しみにしてたものね。でも、姉さんだって本当に楽しみにしてたのよ。貴方と一緒に街に行くことを・・。」


「だったら・・・」


「でもね、レイン。お願いだから分かって欲しいの。・・・あの人・・ボスは本当に私の事を必要としてくれているの。だから、どうしても・・・」


「・・・・日本に行くの・・・!?」


「・・・・・ええ。」


「・・・・!!ひどいよ!約束を破るなんて姉さんは最低だ!!」


「ごめんなさいレイン。。」


「アーモンドココアクリスピースペシャルは!?姉さん、大好きじゃないか!移動映画の出店でしか食べられない特別なやつだよ・・ それに今度はいつ来るか分からないのに!」


「・・・・レイン。。お願いだから・・」


「・・・・ごめん。言い過ぎたよ、姉さん。」


「・・・いいのよ。私が悪いんだから。」


「・・そうだ!じゃあ僕が買ってきてあげるよ!トニーに自転車を借りるから、そんなに時間はかからないはずだ!」


「・・・・・・・・。」


「一緒にポップコーン食べようよ!あれは本当に最高だよ!」


「・・・・そうね。あれは最高だわ。」


「待ってて!すぐに戻るよ!」


「レイン・・・・・」


「トニーの自転車は最新式なんだよ!」














「ただいま姉さん!」


「買って来たよ姉さん!」


「バスルーム?」


「まだ少し温かいよ!はやく食べよう!」


「姉さん!買って来たよ!」




























「温かいうちの方が、美味しいよ?」


「・・・・・・ああ。」


「どぉ?美味しいです?」


「・・・・・・・ああ、悪くない。」


「よかった♪」





日の落ちて間もない駅の改札。一度改札を通りかけたパン子が、思い付いたように足を止めて、無言で見送るレインに歩み寄った。


「あの・・・今日は、誘って頂いて、本当にありがとうございました。」


「・・・・。」


「お陰で、ダンくんとの事も前向きに考えられる気持ちになれたし・・。逃げてちゃダメですよね。ちゃんと、話し合わないと・・。」


「・・・・。」


「・・・ちゃんと、連絡してみます。」


「・・・ああ、それがいい。」


「すっごい気持ちが軽いです、今♪ あはは 本当に感謝感謝です。・・・今日のお礼は、また今度改めてしますね♪」


「・・・Promise(約束)?」


「・・・え?・・・ いえす。プロミス♪」





『・・・・・・・・え・・・・・。』


「・・・・!?・・・えっ・・・・・ダンくん・・・!?」


『なんで・・二人・・』 言葉を失うダン。



レインがニヤリと不敵な笑みを浮かべながらダンにゆっくりと近付き、小声で囁く。


「・・・また計画の変更だ。」


『・・・計画・・・だと!?』ダンも小声で返す。


「・・・フン」


『・・何を企んでる・・』


「昨夜は彼女からメールが無くて残念だったな。心配だろうが、ちゃんと寝ないとダメだぜ?」


『・・・どういう意味だ。』


「・・・・・そういう意味さ。・・・・ごちそうさん。」


『!!』


直後にパン子の悲鳴が響いた。

怒りに任せたダンの握り拳が、レインの頬を激しく打った。


『・・・絶対に許さん。。お前だけは絶対に許さんぞ・・・!!!!!!』


「違うの・・ダンくん。。違うの。。。」



ボロボロと涙を零すパン子の背後で、レインがまたニヤリと笑った。


















つづく!






▪️次回予告▪️


疑心暗鬼がダンを襲う。行くなダン!その道の行く末は・・・

次回エアーガンマン!


【俺と俺と俺が仲間だ!出撃!温泉巡り!(仮)】


お楽しみに!!









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ