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第2話「ライスかパンか。わたしか。」

いらっしゃいませ。ダニーズへようこそ!




「お二人様ですか?」


『あ、はい。二人だニャー。』


「禁煙と喫煙、どちらになさいますか?」


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・喫煙で。』


「お席にご案内しまーす。」







・・・こんのマニュアル店員がぁ!!!!!!

と、普段なら憤るところだが、今日は違う。今日はそれどころじゃないのだ。

とびきり美人とファミレス。今は千載一遇のこの奇跡に、俺は胸躍っているからだ。


「タバコ、吸われるんですね。」


『あ、ごめん。嫌いだった?席、変えようか?』


「ううん。大丈夫ですよ♪」


『いいよ、席変えてもらおう。すみませーん!』


「あっ、だめ!いいのホントに、大丈夫だからっ。。」


『ほんとに?ごめんね。気がつかなくって。』


「いえいえ♪男の人は、タバコも似合うじゃないですか♪」


『そーゆーもんかな?』


「そーゆーものですって♪はい、メニューどうぞ♪」


『あ、ありがとう。』






俺は初めて味わう「雰囲気」に、今、まさに呑まれそうになっている。

美人は何をやっても美人だ。しかし、きっと、「俺ほど」その魅力を本人は自覚していない。

そりゃあこれほどの美人だから、きっと小さい頃から美人だ美人だ可愛い可愛いと

もう数え切れないほど言われてきただろう。

まがりなりにも自分が「一般平均以上の美人」であることくらいは、当たり前に自覚があるはずだ。

けれど、たとえばこうして何気なく「はい、メニューどうぞ♪」なんて言う時に、

無意識に、ちょっぴり首をかしげて笑った仕草が爆弾的に可愛いことなんて、きっと本人はわかっていない。

そしてどうだ!今時、こんなに綺麗な、クセ一つない黒髪。鼻息ですら風に泳ぎそうなほど

柔らかなサラサラロングヘアーで、且つ美人。ありえん!まるで実写版藤崎詩織だ!

しかも俺は見逃さなかったぞ!さっき席に座る時、膝を揃えて座ったのを!

膝を揃えて座ったよ。首をかしげて笑ったよ。ぎゃふん。


「・・・なにに、します?」


『ひゃい?』


「ひゃい?」


『はい!はい!』


「くすくすくす。。(笑)」


『はい!はい!』


「・・で、何に、します?なんでもいいですよ(笑)」


『じゃ、ミニチョコサンデー!』


「わ、おいしそー♪」


『・・・は、やめてー。』


「やめてー。(笑)」


『やっぱり・・ご飯食べても、いいかな?(笑)』


「どうぞどうぞ♪何でも好きなもの注文して下さいね。これはお礼なんですから♪」


『ありがとう。(笑)じゃ、遠慮なく・・・えっとね〜。。。じゃあ、これにしようかな。』


「どれどれ?」


『なんとか牛のなんたらハンバーグ。』


「・・・・。はい♪じゃあ、呼びますね。(笑)」


『はーい。』


キーーーンコーーーーン。


店員「ご注文はお決まりでしょうか?」


「えっとですね・・この、なんとか牛の、なんたらハンバーグを一つと・・アイスティーを一つお願いします。」


店員「きまぐれビーフの日帰りハンバーグですね。」


「はい(笑)」


店員「こちらライスかパン、どちらになさいますか?」


「あ・・どっちにします?」


『あ〜。じゃあ、パンで!』


店員「きゃっ!」


「・・・?」


『・・・あっ!』





ライスかパンかと聞かれ、パン党の俺は迷わず「パン」を選んだ。

ピッと指を鳴らし、店員さんを指差して、「パン」と言ってしまった。

なるほど・・・・。忘れていた。ついさっき、得てしまった、俺の特殊能力のことを。

まだ自分でもイマイチ掴んでいない能力だが、頭の良い俺は早くも一つの法則に気づいた。

それは「パン」と言う俺の声に反応して、見えない弾丸・・言うなれば「エアーブリット」が発射される仕組みになっているようだ。


何故なら、はからずも俺の能力によって突如ブラジャーのホックが外されてしまった店員の不自然な前かがみ、そしてあからさまに恥じらう態度、ご注文を繰り返す事も忘れてしまうほどの動揺からして、それは明らかだった。ちなみにフロントホックだという事も間違いなかった。


「・・・どうしたのかな?あの人。。」


『さ、さぁ〜?急に宿題忘れてたの思い出したんじゃないかな?』


「学生なの?」


『うん。きっとね。』


「だよね。宿題忘れたら、明日廊下に立たされちゃうものね・・ってオイ。」


『ぶ。ノリ突っ込みした!(笑)』


「あは♪・・・・・・・・そうだ。。あの・・・」


『ん?』


「お名前・・・まだでした。」


『あ〜。そういやそうだったね。(笑)』


「伺っても・・・?」


『愛野です。愛野弾丸あいのたままる。みんなにはダンって呼ばれてる。』


「愛野弾丸さんかぁ。。素敵なお名前ですね♪」


『そう?ありがとう。(笑)』


「うん、とっても♪・・・・じゃあ、愛野さん。改めて先ほどは、本当にどうも、ありがとうございました。」


『いやいや、こちらこそ御馳走様です!ありがとね!』


「いえいえ♪」


『あ、ねぇねぇ?俺も聞いてもいい?』


「あ・・はい。。って、ごめんなさい。私、名乗ってませんでしたね。。」


『別に言いたくないなら聞かないよ。』


「パン村です。パン村パン子っていいます。」


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだって??(笑)』


「パン村、パン子、です♪」


『・・・・へ?それどういうボケ?(笑)』


「ボケとかじゃなくって〜・・パン村、パン子です!(笑)」


『・・・・本気で?』


「はい♪」


『・・・・・・そ、そう。』


「気軽に、パンって呼んでくださいね♪」


『う、うん。。』









・・・パン村パン子って。。。。まじか。と。

勘の良い読者ならもうお気づきだろう。

いや、多少勘が悪くても、ここで気づかなかったらバカだ。ばーか!

何のやらせか運命かは解らないが、ついさっき謎の能力を得た矢先に判明する驚愕の事実。

初対面でテーブルの上に銃弾飛び散らかしたらどうなるのかくらいは簡単に分かるだろう。

俺は、彼女の呼び方を瞬時に何パターンか考えた。しかし、どれも呼べるものではなかった。

「村さん」「子ちゃん」・・・・ダメだ。おかしすぎる。ンを抜いて「パコちゃん」もなんだか卑猥だ。どうやっても、「パン」を省いては呼べない。

どうする、どうするダン!考えろ・・・考えるんだ!!!

と、必死に思考をフル回転させている矢先に、またしても衝撃的な事が起こった。



「愛野さん?」


『ひゃい?』


「ひゃい(笑)」


『はい!はい!!』


「くすくすくす。。(笑)」


『はい!は、い!』


「あのぉ・・・・・」


『な、なになに?(笑)』


「えっと。。。その・・・」


『ん?』


「あの・・・・ですね。。。」


『ん?うん。』


「その・・ 愛野さん・・って」


『・・・・・?』


「・・・お付き合いしてる方とか・・いらっしゃるんですか・・・?」


『・・・・・お付き合い?』


「えっと・・だから、えっと・・彼女さん・・・とか、いらっしゃるのかな?・・って。。」


『・・・・・へ????』


「・・って、ごめんなさい。なんでもないです!」


『・・・どゆこと???』


「ううん、今の忘れて下さい!ごめんなさい!」


『・・・要するに、彼女いるのか?ってこと?』


「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


『・・・いない・・・よ?』


「・・・・・・・そ、そうですか。。」


『うん。・・・・ん?』


「・・・・・・・・・・・・。」


『・・・・・・・・・・・・。』


「・・・・・・・・・・・・。」


『・・・・・・・・・・・・。』


「・・・・・・・・・・・・。」


『…あの・・』

「…あのっ・・ あっ・・は、はい・・?」


『あ、ごめん、かぶった(笑)』


「いえ。。・・・お先にどうぞ・・・?」


『あ、うん。っと・・・ん〜。。』


「・・・・・・?」


『あの・・・・さ。』


「・・・・はい。」


『良かったら俺と・・・・』


「・・・・・・・・・・・」


『・・・・・つ


店員「きまぐれビーフの日帰りハンバーグのお客様〜」


『きあって、はーい!』


店員「アイスティーのお客様。」


「・・・はーい。」


店員「ご注文は以上でお揃いでしょうか?ごゆっくりお過ごしくださいませ〜。」


『・・・・・・・・・。』


「・・・・・・・・・。」


『・・・た、食べようか(笑)』


「・・・・・・・はい。」


『いただきまーす(笑)』


「・・・・・・・・だめ。」


『旨そうだなぁ・・・え??』


「・・・ちゃんと、言ってください。」


『・・・ちゃ、ちゃんと?(笑)』


「そ。。さっき、言いかけたこと・・・・」


『・・・・・・・・・・・・・・・。』


「・・・・・・・・・・・・・。。。。。」


『・・・・・・・わかった。』




鉄板に焼かれたきまぐれビーフが、目の前でモウモウと湯気を立てていた。牛だけにね。

俺は、今にも口から飛び出てしまいそうな心臓と、鳴り響くバッコン音の中、手にしたフォークを握りしめた。

すると何故だかユリゲラーよろしくフォークがグニャリと勝手に曲がったが、今はそれどころではない。

幸い彼女はそれに気づいていないから無視だ。正直べっくらこいて鼻水出そうになったけど、今は無視だ。

きっと、彼女は俺からの告白を待ってる。こういう事には案外鈍い俺にだってわかる。

これは・・・まさしく一目惚れ同士という奇跡。今まで神様なんてこれっぽっちも信じていなかったけれど

神様は本当にいたのだ。ありがとう神様!はじめましてこんにちは!

だから、もうこうなったら、今この鉄板から立ち上る湯気が冷める前に、告白だ。


カーン!カーン!はぁ・・ふぅ・・カーン!カーン!ジュウ。

サルタヒコとクズラヌヒコが交互に鉄を打つ。

男たちの額には汗が滲み、手には血が滲む。

それでも戦う男達は一心不乱に鉄を打つ。カーン・・カーン・・カーン・・・


鉄は熱いうちにうて。古の先人達の言葉の重みを、今更ながらに実感した。


「真剣」を創る男は、まさに真剣だ。



このイマイチ筆の乗りきらない妄想をするほど、要するに俺の思考回路は混乱しているわけだ。

そりゃそうだろって!目の前に、こんだけの美人が、今まさに俺の告白を待ってるんだから!

そりゃフォークも曲がるっつの!!!!!

じゃわす!!!!

しかし、息を整え、それは案外さらりと言えた。









『俺と・・・付き合ってください。』









「・・・・・はい。。」
















つづく!!!!!






■次回予告■

ひゃーーーっほぅ!!!とびきり美人の彼女ができたぞーー!

なんか奇跡が起きちゃった!これって夢かな??よし、こめかみに指先を当てて・・

パーーーーン!!いってーーーー!!!夢じゃない!夢じゃないぞ!!!

とりあえず死ななくて良かったぜ!

そんなこんなで交際が始まった俺達ではあったんだけど・・

次回、エアーガンマン!


【アンマン、食マン、カレーマン。(仮)】


うなれ俺のリボルバー!吼えろ愛の弾丸!お楽しみに!

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