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夜道

「ふぅ〜……」

 深夜。街の中を康生が一人歩く。

 あれから、隊長達を交えてさらに盛り上がった。

 しまいには皆広場で騒ぎまくってしまい、まるでお酒でも入っているかのように皆顔を真っ赤にして騒いでいた。

 だが康生はそういう場所が苦手であるため、少し席をはずし一人街の中を歩いていた。

「エルも時雨さんもすごかったな……」

 一人歩きながら康生は二人の顔を思い出す。

 エルは一人で隊長達を説得してみせ、時雨さんはこの地下都市を頑張って維持し、隊長達と話しをつけた。

(それに比べて俺は……)

 康生は自分の事を見つめる。

 康生がやったことといったら、敵を倒しただけ。それも前回はエルと時雨さんの力を借りてだ。

「結局俺には生きる価値なんてないのかな」

 自分の無力さを嘆くように呟く。

 あれだけ努力してきたのに結局何も力になれていないことを康生は悔やむ。


「随分たそがれているようだな?英雄さん」


 ふと康生の耳に声が届く。

「だ、誰だっ!」

 咄嗟に構えて辺りを見渡す。

 すると建物の陰から一人の男が現れる。

「上代琉生……!」

「英雄に名前を覚えてもらえて光栄だよ」

 陰から現れたのは上代琉生であった。

「俺は別に英雄なんかじゃ……!」

 上代琉生の皮肉に対して康生は顔を歪める。

 そんな康生の反応を楽しむように上代琉生は頬をあげる。

「いや〜、まさかお前があんなにも強いだなんて思ってもなかったよ。あの数相手にやりあうなんて本当とんでもないよ」

 どうやら上代琉生は地上での戦闘を見ていたようだ。

「それを言うためだけに現れたのか?」

 康生は睨むように言う。

「落ち着けって。そう怒ってばかりだと人生損するぜ?」

「誰のせいだと……!」

 康生は会話をするだけでどんどん怒りのゲージがあがっていくのを感じる。

 そして必然的に声の音量も大きくなる。

「だから落ち着けって?俺は英雄様にお礼言いにきたんだぜ?」

「お礼?」

 上代琉生にお礼をされることなんて全く覚えがない康生は首を傾げる。

「そうお礼。お前のおかげで俺の目的が簡単に達成できた。だからそのお礼だ」

「目的?」


「あぁ、目的」

 目的とは一体どのようなものなのか?しかしそれを康生が聞くより前に上代琉生は背後に振り返る。

「それじゃあな」

「ちょ、ちょっと待て!」

 康生はすぐさま呼び止める。

 すると上代琉生は本当に立ち止まり康生の方を振り返る。

「そうそう、さっき生きる価値がないとか言ってたよな?」

 独り言を聞かれたと思った康生はすぐに身構える。

「――そもそも人ってのは価値があるから生きてるわけじゃないぜ?元都長なんかがいい例じゃないか」

「…………」

 康生は何も言い返すことはなくただじっと上代琉生を見つめる。

「まぁ、言いたかったのはそれだけだ」

 その言葉を最後に上代琉生は闇の中に消えていった。

「…………価値があるから生きてるわけじゃない、か」

 ふと康生は先ほどの言葉を反復する。

 しかし、

「いや、人は価値があるから生きているんだ。価値がなくなったら、誰からも必要にされなかったら人は生きていけない」

 上代琉生に聞こえるように康生は呟いたのだった。

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