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食料

「それじゃあ乾杯!」

 エルのその一言で広場に集まった人々は皆グラスを天に向けて掲げる。

「「乾杯っ!」」

 そして広場が「乾杯」の言葉で包み込まれる。

 その後は皆一様にグラスを傾け体の中へと飲み物をそそぎ込む。

「っぱぁー!。こんなおいしい水が飲めるなんてほんと最高だ!」

 宴会の飲み物といえばアルコールなのだが、当然現在の世界ではアルコールなど高価なものなので庶民である人々が持っていることはない。以前までの都長なら少量なら持っていただろうが、今や建物は崩壊してビールはなくなってしまっている。

 だがそれでも皆はおいしそうに水を飲む。

 なぜならこの都市では水ですら貴重品だったのだから。


「ほんと!康生さんには感謝してもしきまれせんよ!」

「そうですよ!ささっ!今日は一杯食べて飲んでくださいね!」

 そう言われ康生の前に様々な食材が並べられる。

「は、はい」

 康生は皆に言われるがまま運ばれてくる食材を口にする。

 しかしその食材のほとんどが芋やパンなどだ。

 だがそれでも人々にとっては貴重な食料。いくら都長の隠し持っていた食料が見つかったからといって、それは皆を養えるだけのものではない。

 それでも人々は康生に食料を運ぶ。

 その意味を理解し、康生は申し訳ない気持ちで食事を喉に通す。

「とってもおいしいです」

 じーと康生の顔色を伺う人々に対して康生は笑顔で答えた。

 そんな康生の感想を聞いた人々は皆喜ぶように表情を緩ませる。

 ――自分達は一切、食べ物に口をつけていないにも関わらずだ。

「皆さんも食べてください」

 だからこそ康生は自分の前に運ばれてきた料理を配る。

「そ、そんなこれは康生さんの……」

 しかし当然のように皆遠慮する。

 それでも康生は料理を手渡す。

「食事は一人でするより、皆で一緒に食べた方が美味しいですから」

 康生はそう言ってにっこりと笑う。

「あ、ありがとうございます!」

 初めは恐る恐るだったが、やがて皆康生が配る食料をおいしそうに食べ始めた。

 そんな光景を見て康生も思わず頬がほころぶ。

「皆康生のおかげなんだよ」

 といつの間にか康生の横に移動してきていたエルが言う。

「そんな。俺は別に大したことしてないよ」

 しかし康生はすぐにエルの言葉を否定する。

 だって、あの時は康生一人の力じゃ何も解決できなかったからだ。

 自分一人の力で解決できなかったのだから、あれは自分のおかげなんかじゃない。あの日、康生が心の中に言い聞かせた言葉だった。

「ううん。康生のおかげだよ」

 それでもエルは言い続ける。康生に言い聞かせるように。

「さ、康生も今日は一杯食べよ?なんたって今日は沢山食べ物があるんだから!」

「た、沢山?」

 確か前に上代の手によって食料が盗まれたんじゃなかったのか?と康生はすぐに疑問に思った。

 するとそんな思いを見透かすようにエルが言う。

「実はね、上代琉生が盗んだ食料は全てこの地下都市に隠されてたんだって。それを先日見つけて今は沢山の食料があるんだよ」

「隠されてた……」

 康生は小さく呟く。

(上代琉生は一体どうして食料を盗んでおきながら持って行かなかったのか?そもそもどうして地下都市に戻ってきたのか……)

 康生はしばらくの間考えたが、何も分かりそうになかったのですぐに諦めてエル達と共に宴会を楽しむことにした。

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