火傷
「や、やった……」
康生はリングに横たわっている隊長を見て呟く。
「康生っ!」
「大丈夫かっ!」
そんな呆然としている康生の元に、エルと時雨さんが駆け寄る。
二人はその勢いのまま康生に抱きつく。
「ふ、二人共苦しい……」
強く抱きしめられた康生は小さく呟く。
「ご、ごめんなさい!」
「す、すまない!」
二人はすぐさま康生から離れる。
だがそれでも康生を心配そうに見つめる。
「あっ、康生手が!」
「ほ、ほんとだ!」
その中でエルが康生の手が火傷をしている事に気づく。
それを見て時雨さんは慌てふためき出すが、エルは冷静に康生の手をとる。
「ちょっと痛いかもしれないかもだけど我慢してね」
エルは康生の手をとったままスッと目を閉じる。
「――『ヒール』」
エルが唱えると康生の火傷の傷はみるみるうちに消えていった。
「あ、ありがとうエル」
「どういたしまして!」
康生にお礼を言われ、エルは上機嫌に答える。
「うぅ羨ましい……」
とそんな二人を見て時雨さんはボソリと呟く。
と、そこまできてようやく三人は周囲のざわめきに気づく。
それもそうだ。隊長が倒され、目の前には異世界人がいる。
人間は異世界人を目の敵にしているからそれは仕方のない事だ。
だからこそ、ここで正せねばならぬ。
「皆の者!話を聞いてくれ!」
そうして真っ先に時雨さんがリングで声をあげる。
「確かにこの子は異世界人だ!だがしかしこの子は我らに危害を与えるつもりはない!」
時雨さんはまずはエルが危害を与える者ではないことを説明する。
しかしそれでも人々はエルに向ける視線を変えることはなかった。
(どうすれば……)
と康生が考える。
だがその時、時雨さんの前にエルが歩き出した。
「皆!私の話を聞いて下さい!」
あろうことか、エルが人々に向かって声をあげたのだった。
「私は皆に対して危害を与えるつもりはありません!むしろ私は皆さんと仲良くしていきたいと思っています!」
エルは言葉を続ける。
しかしそれでも人々の視線は変わることはない。
それもそうだ。今この生活をしているのは異世界人のせいだから。人々の心の中に異世界人の傷は深く残っているのだ。
「お願いです!信じて……信じて下さい!」
それでもエルは必死になって呼びかける。
体を震わせながら、必死に戦うように。
「――私は信じるよ、お姉ちゃん!」
とそんな中、人々の中から声があがる。
一瞬にして人々の視線を集めた声の主は、まさかの一人の女の子だった。
「あなたは……」
エルはその少女を見て、何かを思い出したように呟く。
康生もエルも視線を追い、少女の姿を確認する。
「あっ」
そうして康生も思い当たる節があるように声をあげる。
そしてその少女は注目を集めながらも、怖じ気付くことなくエルに向かって声をかける。
「お姉ちゃんは私におにぎりをくれたもん!だから私はお姉ちゃんを信じる!」
少女はそう言って手に持っていたおにぎりを取り出した。
それから時雨さん、エル、康生の説得に人々はエルと共存することを承認したのだった。




