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一緒に

「康生っ!」

 康生が目覚めると同時にエルが抱きつく。

「エル……」

 初めは戸惑っているようだった康生だが、すぐにエルの力によって助けられたことに気づく。

 それに気づいた康生は瞬時に表情を暗くする。

「ごめんエル……。時雨さん……」

 自身が試合に負けたしまったことで二人も一緒に処刑されることを康生は謝る。

「いや、康生は悪くない。そもそも康生一人で戦うのがおかしかったんだ」

 時雨さんはすぐに隊長のほうに視線をやり康生をフォローする。

「それでも……」

 康生は納得しない表情で俯く。

「大丈夫だよ康生」

 しかしそんな康生をエルはしっかりと抱きしめる。

「康生だって十分に強い。だからそんなに落ち込まないで」

 エルは必死に声をかける。

 しかしその声は康生の胸の中には届くことがなかった。

「俺は負けたんだ……」

 康生は小さく呟く。自身を責めるように。

「康生……」

 康生の様子を見て時雨さんは苦しい表情を浮かべる。

 時雨さんは今、康生が戦いに破れて悔しがっているのだと思っている。しかしそれは違う。

 康生は今まで生きる価値を得るためだけに十年間も頑張ってきた。だが実際は全然人の力になることが出来ない。何も出来ていない。

 あの十年間はなんだったのだと、康生は執拗に自分を責めているのだ。

「――康生は強いよ」

 エルが一言呟く。

 しかし康生がすぐに否定しようと口を開く。


 だがそれよりも先にエルが言葉をつなぐ。

「康生はこんな世界になってると知らずに十年間頑張った。それで今ここまで強いんだから康生は本当にすごいよ」

「でも……負けた……」

「康生はそれで諦めるの?」

 執拗に自分を責める康生にエルは問いかける。

「…………」

 しかし康生は無言のままだ。

「――昔、私のお父様が言ってたの。壁を乗り越えたらすぐに次の壁が待っているんだって。常に壁が見えるのが生きていることなんだって」

「…………」

 康生は無言でエルの話に耳を傾ける。

「だから康生は十年という壁を乗り越えたらもう次の壁を乗り越えるのを諦めるの?」

「…………」

 エルの言葉を聞く康生は未だに無言で俯いている。

「康生」

 そんな康生を見た時雨さんはそっとしゃがみこむ。

「私は君達の夢を応援している。でも応援しているだけではなく力になりたいと思っている。康生一人で頑張らないで私にも少しは手伝わせてくれ」

「…………」

 二人の熱い視線に康生の心はじんわりと暖かみを帯びる。

 しかしそれでも康生は頭をあげることはしなかった。

『恥ずかしがってないで素直に言ったらどうですか?助けてほしいって。いつも私に言ってるみたいに』

 最後にAIが言葉を挟む。

「――っ!」

 そうしてようやく康生は顔をあげる。

 その顔を真っ赤にしながら康生は二人をじっと見つめる。

 そして、

「――俺には、まだ力がないから……。どうか俺に力を貸して下さい!」

 勢いに任せて康生は頭を下げる。

「当たり前だよ」

「うん、当たり前だ」

 そんな康生に向かって二人は暖かい言葉を投げかけるのだった。

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