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一つ

「どういうことだ……?」

 康生が物体に直接ダメージを与えるのを見た兵士達はすぐにその異変に気づく。

 あの物体には直接攻撃が出来ないと言われてたのに、康生はあろうことが物体を殴ってみせた。

 グローブをつけての攻撃だったが、それでも確実にダメージがは言ったと思われるその攻撃に、兵士達は違和感を膨らませた。

「どうやら俺はこいつに攻撃出来るみたいだ!殴った瞬間に魔力を吸収すればこいつにダメージを与えられるっ!だからこの中でこいつと直接戦えるのは俺とリリスだけだっ」

「了解したのじゃっ!」

 康生の言葉に真っ先にリリスが反応した。

 魔力の塊であるから、それを奪ってしまえばいい。

 どうやら康生はそういう発想で物体に攻撃したようだった。

 そしてそれが成功した。

 つまり魔力を直接奪うことが出来る康生とリリスが唯一の対抗手段となる。

「上代琉生っ!リリスのことは任せたぞっ!」

「分かってますよっ!」

 だからこそリリスはもしもの時のために守らなければいけない。

「エルっ!指示をお願いする!」

「分かったわっ!」

 そして康生は後の指示を全てエルに任せて、自分は物体の本体の元へと移動した。

「皆聞いてっ!」

 物体へと向かっていく康生を見ながら、エルはすぐに気持ちを切り替えて兵士達に呼びかけた。

「あの物体は今異世界と人間界両方に行こうとしているのっ!あれをもしあれが向こうに行ってしまったらすぐに街は壊滅してしまうわっ!だからお願い!皆協力してっ!」

「っ……」

 エルの必死に叫びに兵士達はそれぞれ僅かにためらうかのように視線をさまよわせた。

 自身の故郷のピンチだということは先ほどからひしひしと伝わってきていた。

 だが、実際に直接お互いが協力するとなるとやはり僅かな躊躇いが生じるようだった。

「躊躇っている場合かっ!?」

 しかしそんな兵士達を見上げ、クロスが一人必死に兵士達に叫んでいた。

「今手を取り合わなければ我々は滅びてしまうぞ!ここでプライドを捨てるのと、故郷を失うのはどちらがいいのか考えろっ!」

「っ……!!」

 クロスが叫び終わるのと同時に、兵士達の表情が僅かに変わりだす。

「どうかお願い!自分自身のためにも、世界のためにもここであの災害を止めるのを協力して下さいっ!」

 そんな兵士達の心情が移り変わっていくのを感じたエルは、最後の一押しに兵士達に呼びかける。

「――そうだ、ここでくい止めねばならぬ」

 すると異世界の国王の一人がゆっくりと呟いた。

「――そうだ。これは人類のため。この世界のためにもあれは排除しなければならないんだ」

 そしてそれに同調するかのように人間の国王もまた物体を見上げて呟いた。

「よしっ!皆の者!直ちにあの災害を止める!今は種族も何も関係ない!この世界のために力を使えっ!」

「おぉぉっ!!!」

 そうしてここに、異世界人達と人間達の心が一つになったのだった。

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