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浮上

「…………」

 クロスに睨まれた康生は、しかしたじろぐこともなく真っ直ぐ見つめ返す。

「この世界に意味のないことなんてないんだよ……。誰しも意味をもって動いている。それは生命以外にも言えることだ」

「そんな綺麗事っ……」

「――ある」

 康生の言葉にクロスはすぐに反論するが、康生はすぐに言葉を返した。

「この世界に意味のないことはないんだよ。それがたとえ良い意味でも悪い意味でも。たとえそれが望まぬことになろうとも」

 今まで自分自身の意味を考えていた康生だからこそ分かる。

 人は生きている以上、必ずなんらかの意義がある。

 どんな些細なことでもこの世界に影響を与ええる存在なのだ。

 しかし康生は自分に意味がないと思い、必死に努力してきた。

 だがその先に、康生は自身の意味を見いだせることが出来なかった。

 でもそんな中でエル達に出会い、共にいる中で康生はようやく気づくことが出来た。

「意味のない存在はいない。エル達の父親だって、こうして娘達に想いを託すことが出来た。その父親がいなかったら、今こうして俺達はここにいない。そしてお前も、あの時父親と共に歩まず生き残ってくれたおかげで俺達は随分と助かったし、ザグを育ててもくれたんだ。だから意味のないことなんてないんだよ」

 どんなことにも意味があり、意義がある。

 だからこそ意味を探すのではなく、自分自身がどうしたいか、誰のために何が出来るのかを考えることが大事なのだ。

 それが分かったからこそ、康生はクロスの言葉を真っ向から否定することが出来た。

「――確かに、康生の言うとおりよ。私達はお父様達にたくさんのことを教えてもらった。それにクロス、あなたの話だってたくさん聞いたわ」

「あいつが……?」

 エルが優しく言葉を紡ぐと、クロスはすがるように視線を動かす。

「えぇ。お父様はあなたことを信用していたわ。自分が死んでもクロスが想いを次いでくれると信じていた。だからこそお父様は私達やあなたに未来を託して死ぬ覚悟を決めたの」

「そんなことがっ……」

 エルの口から出てきた真実を聞いてクロスはその場に泣き崩れた。

 恐らくエル達の父親には恨まれていると思っていたのだろう。

 自分のせいで死んでしまったのだと。

 しかしエルの言葉を聞いてそれが違うと分かった。

「俺はえらく遠回りをしてたんだな……」

「それも意味のあることですよ」

 クロスの呟きに康生は笑って返す。

「確かに……そうかもしれないな……」

 そんな康生の言葉にクロスは僅かに表情をゆるませた。




「――なんだあれはっ!?」




 だが次の瞬間、兵士の声が空中から響く。

「な、なっ……!?」

 康生は慌てて上を見上げると、そこにはおぞましいオーラを放つ、物体が浮上していたのだった。

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