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冗談

「康生は嘘なんて一言も言っていない!」

 エルが叫ぶ。

 しかしそれと同時に男は腰に差してあった刀を抜き、エルに向ける。

「邪魔だ」

 ただ一言、冷たく言い放つ。

 しかしエルはその場から動こうとはしなかった。

 じっと両手を左右に広げて康生を守るように立ちはだかる。

「エルっ!」

 だからこそ康生はエルに近づく。

 元々康生はエルを守ると誓ったのだ。なのにどうしてエルに守られるなんて事が許されようか。

 その一心で康生はエルの横へとたどり着く。

「エル下がって」

 そしてすぐにエルに退くように言う。

 だがエルは決して首を縦に振ることなくじっと立っているだけだった。

「私だって少しでも康生の役に立ちたいの」

「エル……」

 エルの強い意志に康生は何もする事が出来なかった。

 しかしそんな事はお構いなしに目の前の男はそっと刀を持っている手に力を入れる。

「そこを退けと言っている」

 カチャリ。

 刀をエルに向けて構える。だがエルは動こうとしない。

 それどころかエルはじっと男をにらみつけるように見上げている。

「えぇい!なんなんだその女は!いいからそこを退け!貴様は罪人を庇うと言うのか!」

 とうとう痺れを切らしたのか都長が怒鳴り散らす。

 するとエルはそっと微笑み、都長を見つめる。

「そもそも康生は罪人ではありません。何故なら康生は一つも嘘をついていない!」

「何を言うかと思えば……!その子供は明らかに嘘を付いている!食料を渡すと言って現に何一つ渡してないであろうが!」

 顔を真っ赤にして都長は怒鳴り散らす。

 しかしエルはそれを冷静に対応する。

「そもそも康生は食料を渡すなど一言も言ってません。康生は食料を得るための手段を教えると言っただけです」

 エルは都長に向かって堂々と発言する。

 それを横で見ていて康生は素直に尊敬の思いを抱く。

 やはりエルは強いのだと。だからこそこの世界を変えようとしているのだと。

 そして正論を言われた都長はというとさらに顔を真っ赤にしてエルを睨みつけている。

「…………」

「…………っ!」

 そしてしばらくお互い無言でにらみ合っている中、やがて都長は何かを思いついたような顔をして、いきなり康生を指さす。

「いや!そのガキは確かに嘘をついた!何故ならそのガキはあろう事かドラゴンを倒したと言った。そんなひ弱なガキにドラゴンなどが倒せるわけがない!よってそのガキは嘘を付いたのだ!」

 ドヤ顔と言わんばかりの表情で都長は言い放った。

 しかしそれでもエルは冷静な顔なまま言い返す。

「いいえ、それも本当です。康生は確かにドラゴンを倒しました!」

 それについて都長がさらに言い返そうとした時、

「はっはっはっはっ!」

 どこからか笑い声が聞こえてきた。

「い、いやすまない。君があまりにも面白い冗談を言うものだから」

 そう言って刀をエルに向けていた男が笑いを我慢するように謝った。

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