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叫ぶ

「皆の者ー!!話を聞いてくれ!!!」

 時雨さんが思い切り叫ぶ。

 そしてその思いが通じたかのように辺りの暴動は静まりかえりじっと視線が時雨さんに集まる。

「あれって……時雨隊長じゃあ……」

「ほんとだ……時雨隊長だ……」

 しかし静かになったのは一瞬で、たちまち時雨さんの姿を確認した人々はざわざわと声をたて始めた。

 この光景を見て康生はゴクリと唾を飲み込む。

 元々康生は人の前に立つのが苦手な性格だった。だからこそ暗くて根暗だったのでいじめられていたわけだが、その性格はやはり十年経った今でも完全に改善される事はなかった。何故ならこの十年間康生は人と関わってこなかったのだから。

「皆に話がある!」

 そんな中でも時雨さんは怖じ気付くことなく声をあげる。

 これも時雨さんが俺を信じての行動だと思うとさらに康生にプレッシャーがのしかかる。

「さぁ、康生」

 そして遂に康生の出番となり、時雨さんに促される。

 だが康生は体が震えて何も言葉を発することは出来なかった。

 ――これで失敗したらどうしよう。俺のせいでさらに状況が悪化したらどうしよう。

 康生の頭の中で様々な負の考えが渦巻く。

「康生……」

 時雨さんは心配するようにそっと呟く。

 だがその声は康生の耳に届かなかった。

 しかしその時ポケットのスマホがブルブルと強く震える。

 一体どうしたと思うと、耳にしていたイヤホンから音声が流れる。

『ご主人様は生きる価値を自ら捨てるのですか?』

 はっきりと聞こえるその声は、まるで康生の心に剣を刺すかのように強く鋭いものだった。

『ここまで来て怖じ気付くなんてみっともないですよ』

 さらに言葉は続く。

 そしてそれは康生の背中を押すには十分な効果だった。

「ふぅ〜」

 康生はその場で大きく深呼吸をする。一度頭を冷やして冷静になるために。

「はぁ〜」

 そして大きく息を吐き康生はじっと人々を目に入れる。

「皆さん聞いて下さい!今皆さんは食料がなくてこんな暴動を起こしているんですよね?」

 腹に力を入れて普段出さない大声をあげる。

 時雨さんのおかげもあってか、皆康生の話をしっかりと聞いている。

「じゃあ僕が皆さんに食料を作る手段を授けます!」

 その言葉を言った瞬間、静寂な空気が崩れて一気にどよめきが埋め尽くす。

 そのほとんどが康生の見た目から全く信用していないようだった。

 その状況を見て時雨さんが再度静かにさせようとするがすぐに康生がそれを遮る。

「大丈夫です時雨さん」

「……分かった」

 時雨さんは何も言わずに口を閉じる。

 その間にその場はどよめきから康生を攻撃するような言葉を投げかけ始めていた。

 しかし康生はもう怖じ気付かない。

 再度深呼吸をして心の中で父さんの言葉を思い出す。

 ――誰かを納得させるには納得させるだけのものを見せろ。

 だから康生は今皆を納得させるために鞄からある物を取り出す。

「これが見えないか!!」

 康生は目一杯に叫んだ。

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