消滅
「よしっ!この調子で行くぞっ!」
「分かってらぁっ!」
ザグ達が広範囲に散らばって敵を引きつけているおかげで、敵の大きさはどんどんと小さくなっていく。
広範囲に散らばったおかげで、敵の広範囲に対処せざるをえないからだろう。
「この調子だとすぐに消えてなくなるなっ!」
どんどん縮んでいく敵を見て、ザグ達はもはや勝利を確信したようだった。
「油断はするなよっ!皆、何があっても回避出来る体勢だけは整えておけよっ」
康生はすぐさまザグ達に忠告する。
「分かってるよっ!」
流石に敵を目の前にしてそこまで油断するほど、ザグは弱くはない。
だがどう見ても敵は弱っていっている。
魔力が補充されない限りは負けることはないだろうと、康生自身も思っていた。
(奈々枝達は大丈夫だろうか……)
敵の攻撃を回避しながら康生はふと、奈々枝の心配をする。
両親が持っていた設計書の内容は全て奈々枝に手渡し、兵器を止める手段も教えた。
だが、康生が知っている情報が全てとは限らない。
当然何かしらの改良があってもおかしくないのだ。
そのことに一抹の不安を感じながら、康生はチラリと兵器へ視線を向ける。
「くれぐれも慎重にお願いしますよっ!」
だがそんな不安をよそに、奈々枝の指示の元で着実に兵器が分解されていた。
(よかった、向こうも順調そうだな)
あの様子だと兵器が停止するまで時間がかからないようだった。
(このまま順調にいってくれよっ……)
願いを込めながら康生は少しでも早く敵が消滅するようにさらに動きを加速する。
「おい、康生っ!こんな奴に無駄に魔力を消費する必要はないぞっ」
動きが加速した康生を見て、ザグ達もすぐに忠告を飛ばした。
「分かってるっ。これでも魔力は節約してるから大丈夫だよっ」
康生だって、こんな敵にいちいち魔力を使ってはいられない。
攻撃の回避自体はそこまで難しくもなく、敵が消滅するのは本当に時間の問題だった。
『英雄様っ!兵器の解除が終了しましたっ!』
そんな中、無線を通じて兵器の動きが止まったことを知る。
「ふっ!じゃあこっちもそろそろやってやろうじゃねぇかっ!」
無事に兵器が止まったことで、ザグ達の動きもさらに活発になる。
これによって敵の攻撃もさらに複雑になり、さらに魔力が消費されるという寸法だった。
「よしっ!このままっ!」
康生もザグ達に合わせて一気にけりをつけようとする。
敵の大きさもすでに人の頭の一つ分ほどになっていた。
このまま一気に終わらせようと、康生達はさらに攻撃を仕掛ける。
「よしっ!」
一気に攻撃を仕掛けたのが功を成したのか、雷の物体は跡形もなく消滅してしまった。