威力
一斉に放たれた魔法。
それらは例外なく、全ての敵兵へと吸い込まれるように向かっていく。
だが、
「なっ!?」
魔法がぶつかる瞬間。
わずかに魔法の威力が弱まる。
何かにぶつかったわけでもなく、ただ純粋に威力が弱まる。
さらに驚くべきことに、魔法はだんだんと弱くなっていく。
敵の体へとぶつかる時には、すでに消滅してしまうほどに。
「くそっ!一体何をしやがったっ!」
出鼻をくじかれてしまったザグ達はそれでもすぐに体勢を立て直しすぐに次の攻撃に移行しようとする。
「さぁ化け物共よ、かかってこいっ!」
敵もそれに合わせて魔法を使用し、遠距離からの攻撃をしようとする。
「へっ!何度も言うがてめぇらの魔法なんかきかないんだよっ!」
火の玉が飛び交う中、異世界人達はすぐに水の魔法を使用して鎮火しようとする。
だがここでもザグ達の魔法に変化が起こる。
「くそっ!なんでだよっ!」
火の玉に対して水のシールドで防ごうとしていたザグだったが、すぐにザグが放った魔法が消えてなくなる。
「一体なんだってんだよっ!」
魔法が消えたことにより、ザグは再度魔法を使用する。
「こうなったら魔力勝負だぁ!」
今度はより魔力を込めた、出力をあげた魔法を使う。
だがこれも先ほどと同様に魔法が消えていくが、それでも攻撃を防ぐことは出来たようだった。
「はっ!何をしてるか知らねぇがどうやらこの程度のようだなっ!」
魔法が使えないことではないということを知ったザグ達は瞬時に魔力を込め始める。
「ふっ!所詮は無駄だっ!貴様の魔法など何も怖くないっ!」
「言うじゃねぇかっ!それじゃあとっておきのものを食らわせてやろうじゃねぇかっ!」
指揮官の言葉に触発され、ザグ達は精一杯の魔力を込め始める。
「それじゃあこれを食らってみろよっ!」
瞬時にザグは特大の魔法を放とうと手をあげた。
「待てっ、ザグっ!魔法は使うなっ!」
「あぁっ?」
魔法が放たれようとした時、康生が慌てて大声をあげた。
だがいきなり言われてもどうしようもない。
込められた魔法はそのまま勢いよくザグの手のひらから放出される。
どんなものでも切り裂くであろう威力が込められた風の刃が。
「ふっ!もう遅いっ!」
康生がなにやら気づいたようだったが、指揮官は笑みを浮かべてその魔法の前に立つ。
「急にどうしたんだよ康生っ。もしかして敵が死ぬのを怖がってるのかっ?大丈夫だ心配すんなあれは……」
「違うっ!奴ら相手に魔法は使っちゃだめんだよっ!」
「あぁ?どういう……?」
康生の言葉にザグは困惑する。
「ふっ!今更気づいたようだがもう遅いっ!」
すると指揮官は大きく手を広げて刃を受け止める体勢になる。
「貴様らの魔力は我々が全て吸い取ってやるっ!」
すると風の刃は、先ほどど同様にどんどんと威力を失っていくのだった。