規模
「援軍だぁ?」
奈々枝から話を聞いたザグはすぐさま後ろを振り向く。
するとザグ達の背後から大勢の足音が聞こえてくる。
「お前らのところか?」
「いや……俺達の部隊は全員出動しているはずだ。それにあの見た目は異世界人だ」
ザグにつられて康生も背後を振り返る。
兵士達も突然の敵の増援に驚いて動きを止めているようだった。
「異世界人……そうか、そういうことか」
増援の面々を確認したザグは何かに気づいた。
「知り合いか?」
「あぁ、あいつらはリリスの国にいた異世界人達だ」
『そうです。これからは彼らにその戦場を任せます。ですので皆さんは一度こちらまで帰還してくださいっ』
通信が終わると同時に異世界人達は一斉に敵兵に向かって突撃した。
「遅くなってすいません!ここは我々におまかせくださいっ!」
「くそっ!奴らさらに数が増えたぞっ!」
康生達をおいて、再び戦闘が始まる。
「けっ、じゃあここは任せるぞっ。ほら行くぞお前らっ」
戦闘が始まるのを見届けると、ザグはすぐに撤退しようとする。
「おらっ康生っ、お前も行くぞっ」
「……いや待ってくれ。最後に少しだけやらせてくれ」
撤退しようと動き出すザグ達だったが、康生はその場に立ち止まったままだった。
「はぁ?一体何をするつもりだよ」
康生はそのまま懐から何かを取り出し敵前方に向けて投げる。
瞬間、弾ける音と共に敵兵の悲鳴が響く。
「何しやがった……?」
「最後に軽く敵を減らしておいただけだよ。魔力も何も使ってないから大丈夫だろ?」
「あ、あぁそうだけども。お前、色んな意味ですごいな」
「そうか?」
ザグの言葉に康生はキョトンと首を傾げる。
「それより早く撤退するんじゃないのか?」
「あ、あぁ、そうだな。じゃあ行くぞ」
「うん。じゃあ皆さんお願いしますっ」
それだけ言って康生達は奈々枝の元へと戻るのだった。
「奈々枝っ、戻ったぞっ」
「お疲れ皆っ」
奈々枝の元へと戻った康生達はすぐにエルに治療された。
「それで、俺達を下げて一体どうするつもりなんだ?」
傷を癒されながらザグは奈々枝に尋ねる。
「うん。皆には今からやってもらいたいことがあるの」
「やってもらいたいことぉ?」
すると奈々枝の表情が神妙なものになり、手元の地図を指さす。
「皆さんにはこの地点に行ってもらいます」
「ここには何かあるのか?」
康生は地図をのぞき込む。
指された場所は戦場から少し離れたところにあった。
「ここに敵の主力兵器があるの」
「主力兵器?」
「うん。……もしこの兵器が使われたら恐らく異世界の半分は壊滅すると思ってて」
「なっ!?」
あまりにも規模の大きい話に、ザグは声をあげるのだった。